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区政・区議会報告

区議会第2回定例会の一般質問の内容と答弁です

区議会第2回定例会で行った一般質問の質問と答弁(大要)です。

○岩崎

 私は日本共産党目黒区議団の一員として一般質問を行います。
 1問目は、実施計画改定に向け、区民の切実な要求にどうこたえるのかという問題です。

 実施計画の改定は、地方自治体としての基本的な役割、すなわち、いのちとくらしを守ることに全力を挙げる立場から検討されなければなりません。日本共産党区議団は、そのためにも多額の税金を使うことになるとともに、住民の合意も得られない大型開発中心の計画ではなく、区民の税金を福祉・子育て、大地震対策にこそ充てることができる実施計画が必要だと考えます。

 現在の経済状況を見ても、企業の景況感は半年ぶりに悪化し、5月の企業倒産も3か月ぶりに増加しています。消費関連の指数も低下し、なかなか改善の兆しは見られません。4月の完全失業率も3か月ぶりに悪化するなど、雇用状況も改善していません。高齢者にとって年金収入は毎年減り続け、こういった状況が依然、区民にも深い影を落としています。

 今回の実施計画の改定は、依然続く区民生活悪化のもとで改定され、とりわけ、区民の切実な要求にどうこたえるのかが問われます。
まず、介護の状況です。目黒区では特別養護老人ホームへの入居を望んでも、施設数が足りずに1000人を超える区民が待機している状態が続き、高齢者の介護をめぐる実態はいっそう深刻になっています。

 そのため、一人暮らしのお年寄りや、家族が勤務に出て不在になり、日中は一人で過ごさなければならない要介護者は、在宅ヘルパーやデイサービスを利用しても十分な介護が受けられません。日中に家族がいても、80歳代、90歳代の高齢者を、60歳代、70歳代のお年寄りが介護し、心身ともに疲れ果ててしまうといった状況が広がっています。限られた年金収入の中で受けられる介護メニューも制限を受け、十分な介護が受けられない状況も広がっています。働いている現役世代が仕事をやめて、生活費のために貯金を取り崩しながら親の介護をしている実態もあります。「もっと介護施設さえあれば…」といった声があがっています。

 また、国の介護保険制度の改悪、医療報酬や介護報酬の改定で、要介護度の低い人がいっそう介護施設に入れない状況が広がり、老人保健施設では、介護報酬との関係で入居者の回転率をあげるために、施設から退去させられるといった実態もあります。こうした国の政治が、いっそう介護が必要なお年寄りをはじめ家族を追い詰めています。
そこで1点目は、高齢者の介護において、いまだ特養ホームに入れない待機者の実態を区としても把握すべきだという点です。

 区は在宅介護を充実させるといっていますが、それだけでは介護が必要な高齢者にとっても介護を支える家族にとっても負担は解消されません。かえって、老老介護など、家庭崩壊につながりかねません。特養ホームに入れない待機者の家庭がどういう状況に陥っているのか、区は実態を把握するために、実施計画改定前に改めて実態を調査すべきだと思いますが、いかがでしょうか。

 2点目は、いまこそ区立第4特養ホームの建設とともに、特養ホーム増設の中長期的な計画を策定すべきだという点です。

 介護実態を深刻にしている特養ホームの不足などは、まさに実施計画改定で重点化すべき課題です。現行の実施計画で延期された区立第4特養ホームの建設のみならず、中長期的な特養ホームの建設計画を明らかにすべきだと考えますが、見解をおこたえください。

 次に子育て世代です。子育て世代の収入は伸びず、子ども手当の減額や年少扶養控除や特定扶養控除の廃止・縮小などの影響を受ける一方、教育費の負担が増えるなど、家計への負担が大きくなっています。仕事を辞めずに働き続けたいと望む女性の増加とともに、家計を支えるために共働きを望む家庭も増えています。

 しかし、区内でも安心して子どもを保育所に預けて働くことのできる環境はまだまだ整っていません。根本的に認可保育所が足りないために、今年4月には、認可保育園に入園できなかった子どもは650人に上り、認証保育所や家庭福祉員などを含めてまったく保育所に入園できなかった子どもは143人と、昨年度の2.4倍にもなりました。保育所を探し回る親の姿は、いまや恒常的になっています。

 保育所に子どもを預けられないために職場を辞めざるをえない、あるいは育児休暇を延長せざるを得ないという状況もあります。そういった保育所入所をあきらめた世帯を含めれば、事実上の待機児は143人を大きく上回ります。

 現在、民主党政権は「子ども・子育て新システム」という新たな制度を計画していますが、これは児童福祉法を改悪し、保育を国と自治体の責任による保障から、保護者の「自己責任」に変えてしまうことであり、入園の申し込みも保育料の支払いも直接施設になるため、手のかかる子や低所得家庭が、別の理由で断わられる恐れもあるなど、根本的に待機児の解消を正面から追求しようという制度ではありません。

 保育所が足りない深刻な状況を改善していくためにも、3点目は、待機児ゼロには認可保育園増設が欠かせないという問題です。

 子ども総合計画で、区は2015年度までに待機児をゼロにするという目標を掲げています。ここ数年、民間による認可保育園の設置などもありますが、まだまだ区民の保育要求を満たすものにはなっていません。本当に待機児ゼロを実現しようというのであれば、その最大の保障は、区立であろうが民間であろうが区が責任を持って認可保育園を増設することです。どう具体化しようとしているのかをお尋ねします。

 次は大地震対策です。
首都直下型地震に対する不安も高まっています。

 東京都防災会議が今年4月に発表した被害想定によると、最も被害が予想されている東京湾北部地震で、目黒区ではほとんどの地域で震度6強の揺れになり、建物の全壊・半壊合わせた棟数は8664棟に及び、焼失棟数は区全体の20・8%、1万1232棟にもなると予想されています。人的被害は死者数332人、負傷者数3195人と予想され、発災から1日経過後の避難所での生活者数は6万1318人と想定されています。

 建物の耐震性は大丈夫なのか、火災が起きた時の消火活動は迅速に行えるのか、避難所への避難はきちんとできるのかなど、区民の中にはさまざまな不安があります。
区民の切実な要求にどうこたえるのか、区民の不安の解消をめざしてどう取り組んでいくのかが区に問われています。

 東京都は震災対策の基本として、ことさら「自助」「共助」を強調しています。しかし、近い将来に起こるといわれている首都直下型地震対策の基本は、区民一人ひとりのいのちを守る立場に行政が立って、そのための施策を強めていくことに置かなければなりません。

 したがって、4点目は、首都直下型地震対策の強化に本腰を入れるべきだという点です。そのためにも、先送りになっている東山小学校の改築をはじめ民間も含めた建物の耐震化、足りない避難場所の整備、被災者支援システムづくりなど、改定される実施計画でどう位置づけるのか。お尋ねします。

 ○青木区長

 まず第1点目、実施計画改定の考え方に関する第1問、特別養護老人ホーム待機者の実態把握についてでございますが、6月1日現在の特養入所待機者は1,040名いらっしゃいます。このように入所希望者が入所可能な定員を大きく上回っていることから、優先度の高い方から入所していただくため、区は入所調整を実施しているところでございます。

 入所申し込みに当たっては、家族から本人の介護度などの心身の状況、介護者や家族の状況及び住環境状況等を聞き取っており、これらの情報と介護認定の情報も参考にし、入所判定会議において優先度を総合的に判断しております。

 また、入所判定会議は、年2回、開催しており、その都度、実態を把握しておりますので、実施計画改定前に改めて待機者の実態把握を行う予定はございません。

 次に第2問、特別養護老人ホームの中長期的な建設計画の策定についてでございますが、現行の基本計画では高齢者が認知症や介護が必要になっても、住みなれた地域や自宅で暮らし続けることができるよう、在宅サービスの充実及び施設の整備など、介護サービス提供体制の充実を掲げ、特養入所待機者については500人とすることを目指しているところでございます。

 しかしながら、特別養護老人ホームの整備につきましては、地価の高い本区にあっては、用地の確保をはじめとして多額の経費を要することから、早期の実現が困難な状況でございます。そのため、国や東京都の補助制度等を活用するとともに、区有地の活用や区の独自整備費助成など、さまざまな手法を用いて民間事業者の整備を支援する方策を検討する必要があると考えております。

 また、あわせて介護者の負担を軽減し、在宅での生活継続が可能になるよう、在宅サービスの充実や地域密着型サービスの整備に努める必要がございます。例えば地域密着型サービスの認知症高齢者グループホームにつきましては、現在6か所で10ユニットが開設しており、定員は90人となっている状況がございますが、さらに今年度中に3か所、7ユニットの開設を予定しており、定員は合わせて153人となります。

 なお、今年度の介護サービス基盤整備においては、デイサービスとショートステイを組み合わせた小規模多機能型居宅介護の整備や、新たに24時間訪問介護や訪問看護が利用可能な定期巡回・随時対応サービス事業の整備、誘導を図ってまいります。

 このように特養待機者の解消に向けては、介護サービス提供体制を総合的に充実していくことが重要だと考え、特別養護老人ホームの整備とともに実施計画改定の中で方向性を示してまいりたいと存じます。

 次に第3問、待機児ゼロのための認可保育園の増設についてでございますが、現在の本区の基本計画において、子育て不安ゼロを目指す方向の一つとして、10年後の目標値に保育所待機児ゼロを掲げるとともに、待機児解消は特に緊急性が高いことから、補助計画である子ども総合計画では、その達成年度を5年前倒しして平成26年度としているところでございます。

 私は保育所の待機児童を解消していくことは、子育ての支援の重要な課題の一つとして認識いたしているところでございまして、本年の第1回区議会定例会における所信表明でも述べさせていただいたとおり、引き続き待機児ゼロを目指して努力する決意でございます。

 本区では、これまでも子ども総合計画の着実な実施に努めてまいりました。計画目標に沿って施設整備を行うほか、既存園の改築、改修等による定員の拡大を行うなど、待機児童の解消に積極的に取り組んでまいりましたが、このような取り組みにもかかわらず、本年4月1日現在の待機児童数は前年同期の59人から143名と急増したという状況でございます。

 一方、財政健全化に向けた取り組みもまた本区にとって重要な施策であり、緊急財政対策に取り組んでいる状況のもとでは、直ちに大幅に施設をふやすことは困難であると考えております。

 こうした状況を踏まえまして、財政状況を注視しつつ、計画的な施設整備の実現を目指しながら、今年度新たに開始したグループ型小規模保育事業の拡大や既存園の定員増など施設整備以外のさまざまな手法を検討し、今後の待機児童の解消に向けた取り組みを進めてまいります。

 次に第4問、首都直下型地震対策の強化と改定予定の実施計画についてでございますが、目黒区地域防災計画における計画事項のうち、今年度修正することとしている事項については、内容を十分に精査の上、目黒区実施計画の改定に当たって盛り込んでいくべきものは適切に反映していくこととしております。

 一方、地域防災計画は、災害対策基本法第42条の規定に基づき、目黒区防災会議が策定するもので、目黒区行政のみで決定されるものでなく、また、今後公表される東京都の地域防災計画の修正に合わせ、都の計画と整合を図りながら修正を進めていく必要があります。

 このことから、建物の耐震化、避難場所の整備、被災地支援システムづくりなどの具体的な対応を地域防災計画においてどのように取り組み、どのように盛り込んでいくか、またそのことを実施計画でどのように位置づけるかにつきましては、現段階では明確にお答えする状況にはございません。

 いずれにいたしましても、区の防災対策の進め方に当たっては、現在の厳しい財政状況を踏まえ、優先性を明確にしながら事業を推進する必要がありますが、区民の安全を確保するために必要な防災対策は着実に推進していく所存です。

○岩崎

 2問目は、西小山駅周辺の街づくりは住民合意を第一に進めるべきだという問題です。

 西小山駅周辺整備事業について、目黒区は、街づくり協議会から提出された「街づくり構想案」を参考にして、8月ごろまでに区としての街づくり構想素案をまとめ、来年3月ごろに整備方針素案をとりまとめるとしています。一方、都は木造住宅密集地域の震災対策を強化すると称して、「木密地域不燃化10年プロジェクト」を立ち上げ、当面、都内で3事業を先行してすすめようとしています。それと並行して、西小山街づくり協議会は「街区別検討会」を開き、街づくりの在り方を話し合っています。

 そこで、1点目は、都の不燃化プロジェクトにたいする区の立場について伺います。
「不燃化プロジェクト」は2020年度までに不燃領域率を70%へと引き上げることや、都市計画道路の整備を2020年度までに100%達成するというものです。そのために都は不燃化特区を創設し、3地区の先行実施地区を設け、6月下旬に提案書の提出受付、8月下旬ごろに先行実施地区の選定といったペースで進めます。

 目黒区は3月15日の街づくり協議会の場で「不燃化プロジェクト」について言及していますが、そのなかで、「街づくり構想案が直接的に10年プロジェクトの一つの要素になるわけではなく、この街づくり構想案を土台に様々な検討をしていくなかで、例えば一つの事業が10年プロジェクトに位置付けられていくかもしれないということである」と述べています。

 そのようななか、先日の都市環境委員会で、「原町1丁目全域及び洗足1丁目の一部の区域を先行実施地区として応募する」との報告がありました。西小山街づくり協議会で協議されている7.4ヘクタールの区域以上の約20ヘクタールを対象に不燃化特区を設けようという提案です。しかし、現在進んでいる西小山駅前の街づくり構想案も整備方針案も区から示されておらず、街づくり協議会の中でも、どういった街づくりが必要なのか、どういった事業が必要なのかは、まだ検討の途上です。

 そこで改めてお聞きします。都の不燃化プロジェクトについて申請が近づいているもと、目黒区は事業申請するのでしょうか。また、「コア事業」について、区はなにを想定しているのか、お尋ねします。

 2点目は、西小山駅前の街づくりについて、住民の要望や不安の声を踏まえた計画にすべきだという点です。

 現在開かれている「街区別検討会」では、整備計画づくりに対する不安の声や、居住者の声に耳を傾けてほしいといった要望が出されています。UR、都市再生機構が取得している土地の活用についても、住民の間では、「高い建物は必要ない。5、6階からせいぜい10階建てを限度にすべきだ」といった意見や、「共同化、不燃化の推進といっても、この地域は以前と比べて建て替えが進み、随分と改善されている。共同化は本当に必要なところに限るべきだ」との意見、また、計画地域西側の地区防災道路についても、「すでに6メートルの幅があり、これ以上の拡幅は必要ない。地域の生活道路は4メートルから6メートル程度にとどめるべきだ」との意見も上がっていると聞きました。

 また、「街区別検討会」の出席状況も街区によって温度差があり、いすに座りきれないほどの参加者がいる街区もあれば、数人ほどしかいない街区もあり、地域全体の合意形成は容易には進まない状態です。

 こういった意見を十分に踏まえるべきだと思うが、行政計画にどう反映していくのか。考えを示してください。

 ○青木区長

 次に第2点目、西小山駅周辺街づくりは住民合意を第一にの第1問、不燃化プロジェクトに対する区の立場についてでございますが、お尋ねの不燃化10年プロジェクトは、昨年12月に東京都で策定した22年の東京を支える12のプロジェクトの一つであり、防災都市づくり推進計画で位置づけられた整備地域のうち、地域危険度が高い地区を都が不燃化推進特定整備地区、いわゆる不燃化特区に指定し、この10年の間に不燃化を推進するものです。

 この不燃化特区の実施に先駆けて、23区の整備地区の中から3地区程度を選定し、本年度から先行実施することとしており、6月下旬に応募を受け付ける予定です。

 また、整備地域内の延焼遮断帯を形成する主要な都市計画道路を対象に特定整備路線を指定し、都施行の都市計画道路の整備を推進していくとしています。
本区では、不燃化特区の先行実施地区として木造住宅密集地域整備事業を実施している目黒本町地区及び目黒本町六丁目、原町地区が要件に該当すると考えております。

 このうち、目黒本町地区は、既に街路事業や不燃化促進事業等が導入され、市街地の整備改善が進んでおりますが、目黒本町六丁目、原町地区は木密事業による建物促進が進んでいない状況でございます。特に原町一丁目は、総合危険度が区内でも最も高いランク5とされており、整備改善は急務であると考えております。

 区といたしましては、指定要件を踏まえ、コア事業として延焼防止に寄与する共同化事業や生活道路沿道のミニ延焼遮断帯の整備等を想定し、原町一丁目全域及び洗足一丁目の一部の区域を先行実施地区として応募していく予定でございます。

 また、先ごろ、東京都から区に対して特定整備路線として整備が必要と考える路線、区間について意見照会がございました。本区では補助46号が整備地区内にあり、該当しております。補助46号の未着手区間につきましては、平成19年に沿道の町会等から整備促進の要望もあり、東京都の選定に当たっての考え方も踏まえ、整備地域内の補助30号から洗足バス通りまでの区間を特定整備路線として整備が必要である旨、回答したところでございます。

 次に第2問、住民の要望や不安の声を踏まえた計画についてでございますが、現在、西小山駅周辺地区におきましては、西小山街づくり協議会の呼びかけにより、対象地区内に土地・建物をお持ちの方やお住まいの方による街区別検討会が発足し、土地利用の方針や道路のあり方など、街区の将来像やまちづくりのルール等について街区ごとに検討を始めたところでございます。

 街区別検討会は、これまで2回開催されており、ワークショップ方式により街区ごとの課題や身近な道路、建物についての意見、要望について活発な意見交換を行っております。今後も月に1回程度開催され、検討内容は協議会で調整し、本年度中に取りまとめる予定と聞いております。

 区といたしましては、区の整備構想策定後、街づくり協議会や街区別検討会等の御意見を踏まえて、整備方針や整備計画を策定してまいります。

 いずれにいたしましても、西小山駅周辺地区のまちづくりにつきましては、地区の皆様の御意見をお聞きしながら進めてまいりたいと存じます。

○岩崎

 3問目は、みどりハイム、氷川荘の母子生活支援施設は、その役割を発揮できているかという問題です。

 母子家庭は子育てをめぐる状況や経済的情勢・雇用情勢、DV被害や児童虐待など、厳しさを増す環境の中での生活を強いられ、こうした状況は社会全体で解決に取り組んでいかなければならない課題でもあります。厳しい状況であっても、母と子が離ればなれになるのではなく、一緒に生活しながら危機を乗り越え、再び社会に出ていくことを支援するのが母子生活支援施設の役割です。

 みどりハイム、氷川荘の入居者も、さまざまな事情を抱え、心身ともに疲弊して入居してきます。実際、入居者のなかには精神疾患や発達障害などを抱える母子もいます。こうした母子のフォローは特に慎重な対応が必要です。

 ところが、職員の入居者への接し方が不信感を増長させていることや、一人一人の入居者の状態をよく見ない退去の勧告など、施設の役割が十分に発揮されていない現状が見受けられます。職員の何気ない言葉や、頭から決めつけるような言葉づかいなどが入居者を傷つけ、かえって自立に向けての歩みを止めてしまうようなこともあります。

 また、母子ともに生活上や子どもの教育上の不安が払しょくされていないにもかかわらず、退去の勧告や公営住宅への応募を促すことで、入居者はかなりのプレッシャーを感じ、いっそうの不安感に襲われ、精神科に通院せざるを得なくなる入居者もいます。
職員からみると、施設のマニュアル通りに対応しているということになるでしょうが、児童福祉施設という高度な専門性を要する施設ではマニュアルだけではなく、母子の状態をよく見て、柔軟な接し方を身に着けることも必要です。

 こうした施設状況を改善する必要性があると考え、以下、質問します。

 1点目は、職員研修の充実など専門性の高い職員の確保の必要性についてです。
母子生活支援施設は、母子が置かれている極めて重い課題に対処し、母子ともに保護しながら自立に導かなければならず、高い専門性を持ったソーシャルワーカーによる24時間対応の支援が必要です。しかし、職員の入れ替えが頻繁で、職員がかわるたびに入居者は戸惑い、信頼関係を一からつくっていかなければならず、入居者にとっても職員にとってもたいへんな負担です。

 児童福祉法に基づく社会的養護を担う施設にふさわしく、職員研修の充実や研修派遣代替職員の確保、ならびに職員の処遇改善など、早急にすすめるべきだと考えるが、いかがでしょうか。

 2点目は、入居者の意向に合わない退去勧告は改善すべきだという点です。
母子が施設での生活を通じて自立をめざすことは当然の目的です。しかし、精神的に不安定で通院が必要な母子や、発達障害などを抱える子どもがいる世帯を含め、公営住宅や民間住宅に転居するよう退所を求めることは、入居者の不安感を増幅させることにつながり、母子の自立にかえって逆行する事態にもなりかねません。母子の生活支援という目的を優先させ、入居者の意向に沿わない退去を促すやり方は改善すべきだと思うが、いかがか、お尋ねします。

 3点目は、施設の管理運営は区の直営で行うべきだという点です。
母子支援施設の役割は、低所得者対策や住宅対策としての機能から、先にも述べてきたように、心身ともさまざまな事情を抱える母子の保護と自立促進のための、極めて高い専門性と経験が必要な社会養護施設としての性格が強くなっています。対人援助、ソーシャルワークを事業の主体にしている母子生活支援施設に、「効率性、弾力性」を目的にした指定管理者制度では役割を発揮することはできません。高い専門性を持った職員による運営にするためにも施設を直営に戻すべきだと考えるが、いかがでしょうか。おこたえください。

 4点目は、氷川荘の廃止計画はやめるべきです。
4月1日現在、みどりハイムは20世帯中9世帯、氷川荘は20世帯中10世帯と、半分以下の入居者しかいません。氷川荘の廃止に向け、両施設とも退去者の増加と新規入居者が抑えられている結果です。母子世帯をめぐる状況は依然、厳しい状況が続いているもとで、母子生活支援施設のニーズも高まっています。
特に、みどりハイムは入居している13人の子どものうち、10人が3歳から小学生、氷川荘では18人中15人が3歳から小学生の子どもであり、教育的な支援が必要な年齢層が多いのが特徴です。そのようななかで、氷川荘の廃止という計画では母子の要望に沿うことはできません。廃止はやめるべきだと考えるが、いかがか、お伺いしまして、壇上での一般質問を終わります。

○青木区長

 次に第3点目、母子生活支援施設についての第1問、専門性の高い職員の確保についてでございますが、現在、母子生活支援施設につきましては、支援の必要な母子の入居者に対して、地域での自立に向けた支援のため、生活支援や養育支援、または就労に向けた支援などを行っているところでございます。

 このように、支援のためには専門的な知識等が必要なことから、施設職員は各種研修に参加し、能力向上に努めているところでございます。また、指定管理料の算定の際にも、研修費用を考慮しております。

 具体的には、東京都や全国社会福祉協議会、または東京都社会福祉協議会などが開催する各種の専門研修などに参加しているほか、それぞれの指定管理者の法人内研修や施設内研修、またみどりハイムと氷川荘の両施設間で支援方法の研修を行っているところでございます。これらの研修を通して専門性の充実を図っているところでございます。

 両施設においては、母子生活支援施設職員として必要な専門性は備えているものと認識しております。

 次に職員の処遇に関しましては、指定管理者法人の人事給与基準により適切に対応されているものと認識しているところでございます。

 また、職員の異動に関しましては、それぞれの法人内での異動や個人的な退職などもございますので、職員が変更になる場合もありますが、引き継ぎ等を十分に行い、利用者への対応に不満のないよう努めているところでございます。

 今後も区と指定管理者とが密接に連携しながら、入居者から不信感などを抱かれることのないよう、利用者支援を行ってまいります。

 次に第2問、入居者の意向に合わない退去勧告についてでございますが、母子生活支援施設では、十分な面談の上、一人一人の入居者の状況に合わせた自立支援計画を立て、目標を持って支援を行っているところでございます。通院をされている方や障害を持つ子どものいる場合等には、状況に応じて支援を行い、自立を目指しています。

 計画期間が経過したということから、一方的な退所を求めるということは行っておりません。計画に沿って支援を行い、必要に応じて入居者と施設とで話し合いの上、計画変更も行っているところでございます。ケースによっては、この話し合いの場に区の職員も同席をしているところでございます。

 入居者に対しましては、自立支援計画の策定や変更の際の話し合いのほか、日常生活の中でその意思を確認しながら支援を行っているところでございます。

 次に第3問、管理運営の直営化についてでございますが、母子生活支援施設は、平成18年度から指定管理者制度により運営しているところですが、それ以前も、現在の運営法人に業務を委託し運営してまいりました。母子生活支援施設におきましては、地域での自立に向けた支援のため、生活支援や養育支援、または就労に向けた支援など、高い専門性が必要であるため、国の補助基準上も母子支援員、少年指導員、心理療法担当職員などの配置が求められていますが、それぞれ専門資格が規定されております。

 そのため、区が直接運営するよりも、長年にわたり実績があり、専門性を備えた職員のいる社会福祉法人による運営のほうが好ましいと考えております。

 なお、都内の公立母子生活支援施設におきましては、いずれも直営ではなく、各自治体の社会福祉事業団などの社会福祉法人により運営が行われているところでございます。

 また、本区の母子生活支援施設におきましては、指定管理者制度の運営評価においても、両施設とも適切に運営されているとの評価を得ているところでございます。

 次に第4問、氷川荘廃止計画の中止についてでございますが、現在、行革計画において、母子生活支援施設の統合を掲げております。これは母子生活支援施設の必要性を十分に認識した上で、母子家庭への支援機能はより充実させながら、2施設でなく1施設で対応していくことが可能ではないのかとの視点からの統合計画でございます。

 行革計画の期間、平成24年度から26年度において、氷川荘の廃止に向けた課題整理とその対応を行うとしているところでございます。

 母子生活支援施設におきましては、入居の母子世帯に一人一人の自立支援計画に沿った支援を行っておりますので、統合のために単純に他に移転すればよいなどと考えているものではございません。

 統合のためには次のような課題を解決する必要があると認識しております。

 まず、入居者数の推移を見極め、1施設で十分かの判断を行う必要がございます。新規入居は昨年4月と5月に1世帯ずつありましたが、その後は窓口相談等で施設についての問い合わせなどはございましたが、入居して自立支援の必要な母子世帯はおらず、ことし6月1日現在の入居は、氷川荘9世帯、みどりハイム8世帯の計17世帯となっております。

 なお、両施設の定員は20世帯ずつ、合計40世帯でございます。

 次に、廃止した場合にはその時点での入居者のその後の住まいと子どもたちの学校や保育園の入園等の対応を明らかにする必要がございます。そのため、入居者からの十分な理解が不可欠なものでございます。

 3点目には、施設の運営につきましては、平成21年度から10年間を指定期間として指定管理者制度を適用しているところですが、期間途中での終了となれば、指定管理者と十分協議し、その理解を得ていく必要がございます。

 4点目には、施設建設時に国と東京都から補助金を受けておりますので、廃止の場合に補助金返還を求められることのない廃止後の施設の利用方法を明らかにする必要がございます。例えば有償譲渡や有償貸し付けをするのであれば、補助金の返還を求められることになりますので、有効活用を行っていかなければなりません。

 これらの課題への対応を行い、行革計画に沿って対応してまいりますが、現在の入居者への対応につきましては、統合ありきということでなく、入居者一人一人の自立支援計画に基づき、地域での自立に向けた支援を行ってまいります。
 以上、お答えとさせていただきます。


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