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党の政策

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2023年度目黒区一般会計決算の認定にたいし、岩崎議員が反対討論しました

私は日本共産党目黒区議団を代表し、議案第56号、令和5年度目黒区一般会計歳入歳出決算の認定に反対する立場から討論を行います。

当該決算年度は、当初予算編成時から、物価の上昇が賃金の上昇を上回る状況で、区民は長期にわたる物価高騰と実質賃金、年金の減少などの影響を受け、暮らし向きは厳しい状況が続いていました。それを反映し、区も数回にわたり補正予算を組み、住民税非課税世帯や低所得の子育て世帯を対象にした物価高騰対策支援金について、区独自に住民税均等割のみの課税世帯や家計急変世帯も対象にしたことや、私たちが区民の要求運動と結んで強く実現を求めてきた学校給食の無償化、補聴器の購入費補助が、ようやく実施されたことは評価でき、補正予算には賛成をしてきました。

しかし、決算が確定し改めて全体を見ると、区民の声にこたえ、区民の要求に基き、区民生活を支える自治体としての役割が果たせているか、そこが非常に不十分です。

その大きな1点目は、行政の支援を最も求めている区民に対し支援が弱いことです。

1つ目は、区民はじめ中小零細業者への支援です。
物価高騰やコロナ禍、消費税、インボイス制度などの影響で区内の中小零細業者や個人事業主、フリーランスの経営も生活も非常にたいへんになっています。「営業不振で給料や収益が減った」「支援が不十分」という声が渦巻いている下で、家賃補助や燃料費補助などの必要な手立てはありませんでした。コロナ禍で利用者が減り、苦境に陥っている介護事業者への支援も、国の施策以上の区の積極的な支援はありませんでした。また、営業や生活に深い影を投げかけている消費税やインボイス制度についても、区は国に対し減税や制度の中止を求める姿勢もありませんでした。

また、物価高騰対策といって行った商品券事業は、デジタル一本化によって支援が必要な区民に、その効果が行き渡っていません。高齢者や障がい者にとって使いづらい、個人の中小商店の参加が困難である、アプリをダウンロードできるスマートフォンのバージョンが限られているなどの問題点が区民からも寄せられました。紙の商品券との併存や商品券事業の効果の検証などが必要です。

2つ目は、低所得者への支援です。
生活保護費の減額、物価や光熱費の高騰で生活できないと悲鳴を上げている生活保護利用者は健康で文化的な最低限の生活とは程遠い状況であるにもかかわらず、区独自の夏季加算や冬季加算やエアコンの設置や修理にかかわる補助など、積極的な支援策はありませんでした。

3つ目は、国民健康保険制度や介護保険制度など、保険料を引き下げるための一般会計からの繰り入れを抑制していることです。

国保は自営業者やフリーランスの方々、高齢者などが多数加入している健康保険制度ですが、保険料は毎年のように引き上がり、営業や生活が苦しくなると払いたくても払えない状況に陥ってしまいます。目黒区は特別区の統一保険料方式に参加していますが、国が一般会計からの繰り入れをなくしていく方針の下で、特別区も目黒区もそれに追随する姿勢を示しています。国保料が高すぎることは国や東京都の支出金があまりにも少ないことに大きな原因がありますが、区として被保険者の医療を受ける権利と生活を守っていくためにも、保険料を抜本的に抑制していく一般会計からの繰り入れを続け、増額していくことが必要です。

介護保険料についても、第9期の介護保険料の基準額は8期と同額に据え置かれましたが、介護保険制度発足当時と比べ、基準額は1.86倍にも上っています。区は介護保険料の抑制についての基金の活用は行いますが、保険料抑制のための一般会計の繰り入れはすべきではないとの立場です。

生活保護制度など、他の制度についても同様の立場です。
国の制度を含め、区民の生活に大きな負担をもたらしているものがあれば、区民にいちばん身近な行政である目黒区が、独自に支援をしていくことが地方自治体としての役割であり、そうした立場に立つべきです。

大きな2点目は、区有施設の再編と受益者負担が大きく進んでいることです。

1つ目は区民センターの建て替え、整備です。
決算年度は新たな目黒区民センターの基本計画が策定され、PFI事業で推進することが決められ、それに基づき、実施方針や要求水準書、民間収益事業の実施条件などが示され、今年度からPFI事業者の募集が始まっています。

PFI事業については、全国的にも様々な問題点が指摘されてきました。民間事業者の経営が破たんし、その後、自治体が施設を買い取って直営にした事例や、コスト増などにより官民の契約見直しが不調に終わり契約解除となった事態もあります。建物の天井が崩落した事例に関しては、PFI事業導入前の工法なら事故は起こらなかったとされています。

2021年5月の会計検査院の報告では、国のPFI事業について、「事業選定時にVFMを大きく算定し、国などが事業を自ら実施する従来方式よりもPFI方式の経済的な優位性を過大に評価していた可能性がある」、また、「SPC等の財務状況が悪化しているものや、PFI事業に係る公共施設を十分に利用できない状態が継続していたものが見受けられた」と指摘をしています。これまでPFI事業の利点とされてきた効果が崩れてきているのが実態です。

また、PFI事業の導入に伴い、区民センターの主要な土地を、70年もの定期借地権を民間事業者と結び、高さ50メートルもの商業施設やマンションを建設させ、大規模事業者に多大な利益を保障します。行政のあり方を大きくゆがめてしまうものです。
さらに、教育施設である下目黒小学校の整備、維持管理もPFI事業で行うことや、目黒区美術館を現行のまま存続してほしいという区民の願いも聞き入れられないなど、PFI事業では、そもそも区民の意向も行政の意向も制限されます。区民センター整備のあり方については、区民の声を聞き再考すべきです。

2つ目は南部、西部地区の4つの区立中学校の統廃合が決まったことです。
現在、不登校やいじめなどが増え、子どもの置かれている教育環境は厳しいものがあります。一人ひとりに寄り添った丁寧な環境づくりが求められている中で、11学級300人を超える学校づくりでいいのか問われます。統廃合をすれば、生徒の通学にかかる負担が増え、現在の建築資材の高騰や調達がままならず工期の延期といった事態になると、いっそう生徒や保護者に負担がかかります。そもそも、統廃合は区有施設の総量を削減するとする区有施設見直し方針・計画の位置づけでも推進されました。統廃合そのものの是非について子どもの意見も十分に聴けておらず、統廃合が強行されたことは問題です。

3つ目は会議室、研修室などを区民活動交流室に転換し、それに伴って「受益者負担の強化」を打ち出した施設使用料の見直しを準備した年度であったことです。
会議室などの転換は行政と区民団体との関係を弱めかねず、施設や付帯駐車場、学校施設が大幅に引き上がるところも出ていることは、区民の誰もが施設を安価に使用できる条件を大きく制限するものであり賛同できません。

大きな3点目は、区財政に大きな影響を及ぼす、自由が丘駅前、中目黒駅前の大型再開発事業を推進することとともに、それをてこに絶対高さ制限の見直しを進めようとしていることです。

区の中期経営指針を見ると、基本計画期間内の財政収支見通しのなかで、「今後の歳出見込みについては、学校施設の更新や市街地再開発事業等の経費が多額となるため、今まで以上に基金の取り崩し、特別区債の活用をしながら事業を行っていくことになる」としています。現在、建築資材の高騰や調達で事業スケジュールが延伸するなど影響が出てきている下で、零細の地権者が大手ディベロッパーに振り回され、今後の生活設計に多大な弊害が出ているという話も聞きます。老朽化した学校施設の更新や長寿命化については必要ですが、市街地再開発事業で2028年度に向けて財政調整基金の残高が大きく減少すると見込んでいるのであれば、事業を見直して基金を区民生活を支える財源に使うべきです。

また、絶対高さ制限の見直しの検討は、中目黒駅前や自由が丘駅前の市街地再開発事業や都市計画道路・幹線道路の拡幅・整備、渋谷駅周辺の大規模開発などを挙げて、「広域生活拠点としての機能を拡充している」とし、市街地再開発による超高層ビル建設をてこに、これまでの低層で良好な住環境を守っていくというコンセプトよりも、「都市間競争」や「ビジネスしやすい環境」など経済活動を優先させる考え方です。街づくりのあり方を大きくかえていくものであり容認できません。

大きな4点目は、引き続き区立学童保育クラブの民営化を進めていることです。
決算年度は菅刈、目黒本町、碑文谷の3つの学童保育クラブが民間委託されました。これまでも、区立の学童クラブは区立のまま運営してほしいという保護者からの要望も寄せられています。現在、いくつかの学童クラブで待機児童や過密化が問題になっています。区は「放課後児童対策」として、ランランひろばを各区立小学校に整備し、学童保育との「一体型」をめざしてきました。そして今回、区から示されたのが、新たな学童保育はつくらず、ランランひろばの実施時間や期間の拡充を進めることで、学童保育の待機児童を解消しようという方針です。こうした方針と一体となっているのが区立学童の民営化です。現存する区立学童は区立として存続させるとともに、待機児童や過密化解消を放課後児童対策としてのランランひろばに求めるのではなく、学童保育クラブの整備こそ進めるべきです。

大きな5点目は、職員が十分に配置されず、区民生活を支える区政の執行体制がとれていないことです。
保育士を例にとると、決算年度には、我が党は産休・育休、病休職員などの代替において常勤職員の採用を行うことを求めました。それにたいし、区は年度当初には欠員は生じている状況はなく、保育園の運営に支障が出ていないとしつつ、保育士不足という社会状況を踏まえ、様々な手段を検討し適正な職員体制の確保に努めていくとの答弁でした。
ところが、来年4月の採用に向け、区はこのほど保育職の常勤職員を30人募集していますが、実際に応募して試験を受けた人は13人しかいませんでした。一方、隣の世田谷区は150人募集し、180人の応募があったそうです。自治体間で職員を取り合うことは望ましいことではありませんが、なぜそこまで差が出ているのか、職員の福利厚生はどうなのか、採用条件はどうなのか問われるところです。職員を確保し職員が生き生きと働ける環境を整備していくことなしには、区民のための区政の発展は実現できません。

以上、反対する理由を述べました。現在、医療や介護、子育て、地域振興や災害対策など、住民にとって最も身近な行政である地方自治体が、「住民福祉の機関」として果たす役割はますます重要になっています。目黒区民のくらしを支えうる行政への転換をめざす立場から、決算認定への反対討論とします。

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