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党の政策

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2020年度目黒区決算の認定に反対。岩崎ふみひろ議員が討論を行いました

 私は、日本共産党目黒区議団を代表し、議案第47号、令和2年度目黒区一般会計歳入歳出決算の認定に反対の立場から討論します。

 昨年度から今日に至るまで、新型コロナウイルスが猛威を振るい、国内では東京などを中心に感染の再拡大を繰り返すという事態になっており、コロナ危機は、日本社会のさまざまな問題を浮き彫りにしています。非正規雇用で働く人たちが真っ先に仕事を奪われました。まともな補償もせずに自粛を押しつける政治が、中小企業、個人事業主、文化・芸術、イベント関係者を追い詰めました。公的部門が縮小され、医療や保健所が弱体化し、医療崩壊が現実になりました。

 日本共産党目黒区議団が昨年度に行ったアンケート調査では、85%の方がコロナの感染拡大が生活に大きな影響を及ぼしていると答えました。感染拡大への不安や医療体制への心配の声も多数、寄せられ、医療・検査体制の抜本的な強化を求める声が最も多い結果でした。仕事や日常生活で不便なこと、不安なことを問うた質問では、「収入が減った」「経営の先行きが見えない」が上位でした。

 現政権が長年とってきた弱肉強食と自己責任おしつけの新自由主義の政治のあり方を根本的に変えなければなりませんが、福祉の増進を第一に掲げる地方自治体が、いかに住民の命と生活・営業を守るために力を尽くすのかが問われています。こうした観点からみると、区の昨年度の決算はその点で不十分だと言わざるをえません。
 以下、具体的な反対の理由です。

 まず1点目は、コロナから区民の命を守る取り組みが弱いことです。

 私たちは一貫して、区民や高齢者や障がい者、介護事業者、保育関係者などにPCR検査などを幅広く定期的に区独自で行うよう求め続けてきましたが、区長はそれを拒否し続けました。結果的に、国や都が高齢者施設などの職員に対して定期的に検査を行う措置をとったこともありますが、国や都の方針の域を出ませんでした。

 目黒区と同じ人口規模の墨田区では、昨年度から積極的なコロナ対策を進めています。墨田区では多くの保健所が検査室を廃止した中で検査室を残し、昨年6月には100件の検査結果を70分以内に出せる装置を導入しました。また、昨年6月に民間の検査会社を区内に誘致し、それを活用して高齢者や障がい者向けの230施設で働く約5千人を対象に、定期的にPCR検査を実施できるようにしました。

 このような墨田区の取り組みは先日の第5波の時にも保健所機能を発揮し、他区と比べて感染者を抑制することにつながりました。

 昨年6月の段階で目黒区がどうだったかというと、その当時の区長答弁は、ようやく医師会に委託したPCR検査センターに加え、区内の5病院に委託して1日100件の検査をめざすという段階でした。「大規模に、だれでも」というのは難しいという判断です。

 この9月の定例会でのわが党の一般質問の中で、保育園で感染者が出ても保健所は濃厚接触者を追わず、保育園に濃厚接触者の判定をさせ検査しなかったことに対し、党区議団が大規模な検査を行うべきではないかと求めたのに対し、区長は「医療のひっ迫を望んでいるような質疑だ」と驚くべき答弁をしました。今や、ワクチン接種一本やりでは新型コロナ感染症の抑え込みはできないことは、国内外の事実が示しています。ワクチンと一体に大規模検査を実施し、感染の鎖を断つことが必要であることは、多くの人が指摘をしています。区長の認識はあまりにも遅れています。陽性者の周辺への迅速な行政検査を幅広く行うとともに、無症状者への大規模検査を行うよう舵を切り替えることを求めます。

 2点目は、コロナ禍から区民の生活・営業を支える立場が弱いことです。

 緊急事態宣言の発令と解除が繰り返される中で、飲食店を中心に中小業者、個人事業者など「先行きがまったく見えない」「売り上げは4割減った」などという声が相次ぎました。国の持続化給付金をはじめとした支援金制度や都の支援金制度は要件が厳しく、なかなか支給されないなど問題も多く、持続化給付金や家賃支援給付金は昨年度末を待たずに終了になりました。区は緊急融資制度が有効な支援だといいましたが、融資を受けても返す見込みがない中小業者や個人事業者も多く、区独自の支援が必要でしたが、プレミアム商品券事業などはあったものの、実効ある支援はありませんでした。

 3点目は高齢者対策、介護対策、障がい者対策などケアを支える区政運営という点で不徹底が残されている点です。

 区は福祉総合課をつくり、毎月第4日曜日に福祉の相談窓口を開設・定例化したり、介護・福祉の人材確保、定着・育成事業を行うなど支援充実のための努力をしていることは評価しています。

 一方、認知症グループホームなど地域密着型施設の整備は遅れ、年度末の補正予算では毎年のように減額補正を行っています。障がい者のグループホームも公有地頼みが続き、必要量に応じた整備が遅れ、8050問題と言われる親亡き後に残された障がい者をどうフォローしていくのかという問題も山積しています。準備されてきたはずの基幹相談支援センターも軌道に乗らず、障がい者入所施設も十分に機能せず、利用者にしわ寄せがきています。

 全体的に福祉部門も参入事業者任せで、人材を確保して各施設の事業を軌道に乗せていくなど区内の福祉の向上のために、区が十分にイニシアチブを発揮できていない現状があります。区内の福祉法人や事業者などの運営に弱点があれば、もっと区が指導援助する体制をとるべきだと考えます。
そして、生活保護についてです。生活保護を申請しようとしている人に対して区は8割にたいし扶養紹介をしているという答弁でした。生活保護を必要としている本人にとっては、申請すると扶養照会が行われることは大きな障壁になります。厚生労働省は本人がイヤなら、扶養照会をやめることができるとの事務連絡と課長通知を発行しています。区としても、この通知通り運用することを求めます。

 4点目は、区立保育園の廃園・民設民営化、区立学童保育クラブの民間委託を進めていく点です。

 区立保育園が緊急一時保育の実施や障がい児、医療的ケア児の受け入れなど、時々の保護者の保育ニーズを柔軟に取り入れて体制をつくっていること、ベテランから若手までバランスよく保育士を配置していること、区内全体の子育てをリードし保育の質の向上をめざしていること、災害時は福祉避難所となるなど、区自身が区立保育園の存在意義を認め評価しています。そうであるにもかかわらず区立保育園を縮小していくことは、公立だからこそ安心して子どもを預けられると期待を寄せている保護者の期待を裏切るとともに、行政自らが子育てへの公的責任を放棄していくことにつながります。区立保育園の廃園計画は撤回してくれという陳情を提出した保護者の思いは、ここにあるのです。これ以上の区立保育園の廃止はやめるべきです。

 また、現存する直営の区立学童保育クラブは今後も直営で運営すべきです。

 この間、民間委託された区立学童では職員が定着しないことや子どもたちから「ほっとしない」との声が上がるなど、保護者の間に不安が広がっています。区立学童は全国に先駆けて専任の職員を配置し、「昔ながらの濃密な学童保育を行っているのは目黒区くらいだ。他区ではこうした手厚い学童はほとんど無くなってしまった」と評価も高い。区立学童の民間委託は撤回すべきです。

 5点目は、必要な区の常勤職員の配置が不十分だという点です。

 昨年度以来、日本共産党区議団として保健所の体制強化を求め続けてきました。昨年度は基本的に保健所職員だけでは対処できない場合には、区は全庁的な応援体制を組むことを基本にしてきました。今年度に入ってからは、常勤職員や会計年度任用職員の増員や人材派遣で対処しましたが、コロナから区民の命を守っていくという観点から言うと、まだ職員不足は否めません。

 そして、全体的な職員体制として、区は昨年度に会計年度任用職員制度がスタートし一般職の職員数が従来の1.5倍に増加し、今後は常勤職員のみならず、会計年度任用職員を含めた全体のキャリアアップと組織マネジメントのあり方を考えていくとしています。
しかし、区の任用職員からは、「1年ごとの契約が更新されるかわからず先行きが不確実で、有給休暇は正規職員の半分以下、賞与も1か月分ほど。退職金、年金、扶養手当なしで病気になれば無休となり、出勤率に加算され更新するかしないかの評価にまでなるといった会計年度任用職員の問題は、単なる労働問題ではなく、地方行政の質の低下、女性の貧困や女性の地位向上の問題でもある」と、的を射た指摘もあります。都政新報6月4日付の「非正規公務員で支えられる東京の公共サービス」と題された記事は、「地方自治体が提供する公共サービスは、非正規という受け入れがたき現状を受け入れながら生きている人たちで提供されている。こんな状態はいつか崩壊する」と結んでいます。常勤職員を中心にした体制をつくっていくべきです。

 6点目は、羽田空港の都心低空飛行ルートです。

 新ルートは昨年度から本格運用されました。コロナ禍のもと、国際便が大きく減便しているにもかかわらず、国内線にも運用するなど、国は新ルートを撤回しようとしません。住民からは「騒音がうるさい」「落下物の危険などに恐怖を感じる」などの声も上がっています。目黒区の上空を飛行しているわけですから、区民の安全を守るために、国に対して羽田新ルートの撤回を求めるべきです。

 以上、反対の理由を述べました。

 最後に財政運営です。

 昨年度決算は、特別区税は目黒区史上1位と好調であり、実質収支は88億円を超え、これも最高レベルとなりました。昨年度決算を反映させた今年度の3号補正予算では、財政調整基金の今年度末現在の残高は273億9500万円余と昨年度末現在高の260億円余を超えています。当初予算編成で財調基金を取り崩したとしても、前年度決算で大きな実質収支を出し、補正予算でそれを取り込み、いくら基金があっても足りないと、天井知らずに基金を積み上げています。

 行財政運営基本方針では、財政調整基金の取り崩しや特別区債の発行による対応が見込まれるなど厳しい財政状況が想定されるとしていますが、その見通しが明らかになっているわけではありません。これからの10年間は施設の更新に加えて市街地再開発が動き出すとしています。施設の更新ならともかく、不要不急の市街地再開発に多額の税金投入や財調基金の投入につなげようとしているのなら本末転倒です。
地方自治体は住民にとっていちばん身近な行政です。目黒区は23区の中でも自主財政力の豊かな区です。区民のために働く常勤職員をあらゆる部局できちんと配置し、区の持っている財政力を新型コロナウイルス感染症から区民の命を守り、くらしを応援するために活用することを求め、討論を終わります。

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