党の政策
第1回定例会で森美彦区議が行った2019年度予算への反対討論は以下の通りです。
私は、日本共産党目黒区議団を代表して、議案第12号、平成31年度目黒区一般会計予算案に、反対する立場から討論を行います。
区民のみなさんから聞いた暮らしの声です。「年金が減らされ、物価値上げでもう生活できない」「給料が上がらない。安いスーパーで買物していたが、そこも3月で閉店」「高い介護保険料を払っているのに施設に入れず探し回っている」「景気の低迷で売上が落ち、閉店の準備を始めた」こうした声が、区内全域に広がっています。
安倍政権は、消費税10%増税を宣言していますが、月例経済報告では、3年ぶりに景気判断を下方修正しました。安倍政治の下で、家計消費は25万円もダウン、実質賃金は14万円もマイナス。消費税10%増税はキッパリ中止すべきです。
地方自治体は、暮らしの声に即して福祉を増進させることが、いま強く求められています。しかしながら、青木区長は、消費税増税や社会保障改悪に反対することができず、区民生活をしっかり支えるという立場から見て、新年度予算案は、幾つもの問題を抱えています。
第1は、国民健康保険制度の改悪からいのちを守る問題です。
新年度、国保料を1人あたり5428円引き上げ、均等割を51000円から52200円に、年収400万円4人家族では42万9000円にもなります。
多くの子育て世代で保険料が年収の1割を超え、高い保険料にもう限界という声が世代を超えて広がっています。「国保に入るより、いざという時窓口で10割払った方がましだ」という声まで聴くようになりました。
加入者の8割を年金者や非正規などが占め、負担能力が低いもとで、自治体が一般財源を繰り入れて国保財政を支えてきました。これに対し、安倍政権は、国保運営の広域化を梃子に、一般財源繰り入れをやめよと圧力をかけています。今後、都の示す標準保険料に合わせて引き上げた場合、給与年収400万円子ども2人・4人家族の保険料は、目黒で約4万円も値上げになります。
高すぎる保険料によって、4人に1人が滞納せざるを得ない状況が続いています。区は271世帯に資格証を発行していますが、お金がなくて医療にかかれず命を落とす全国の事例が後を絶ちません。目黒の事例にしてはなりません。
公費1兆円を投入し、国保料を「協会けんぽ」並みに下げることを、日本共産党は提案しています。これは全国知事会などの要望とも一致する幅広い要求です。
人頭税のような均等割をなくすために、区として子どもの均等割をなくす提案をしています。
区長は、わが党の都議会議員に財政措置へ取り組むよう求めました。日本共産党都議団は、子どもの均等割を全額減免する区市町村に対し、補助率10分の10の条例提案をいたしましたところ、3月20日、都議会厚生委員会において、自民、公明、都民ファーストの反対により否決されたことも、申し添えておきます。
第2は、介護保険制度の改悪から高齢者と家族を守る問題です。
その1は、介護保険料・利用料の負担増の問題です。
介護保険料については、2000年の第1期は3325円でしたが第7期は6240円、2倍近くになりました。介護給付費等準備基金が2019年度末で史上最高の13億円余になりますが、保険料を高く設定したことによるものであり、目黒区でも、千代田、中央、港区のように、引き下げ、ないしは据え置くことができたのであります。
介護利用料については、1割負担が、2割負担へ、さらに3割負担が導入されました。年収に関わりなく全て2割負担にすることも狙われています。
介護保険料や利用料の連続負担増によって、必要な介護サービスを受けられない状況が広がっています。
その2は、介護サービスの保険外しと基盤整備不足の問題です。
在宅介護については、これまで受けられていたサービスが、次つぎに介護給付から外されました。国は、要支援1、2の次は、要介護1、2を介護給付から外し、総合事業に移行させる法案提出を狙っています。
施設介護については、特養ホーム入所対象が原則要介護3以上になる中で、行き場のない高齢者が自宅で暮らしています。2000年以降一つも増設されなかった区内特養ホーム整備計画がやっと動き出しました。3カ所300人分が取り組まれていますが、待機者が890人へと増え続けており、更なる増設計画を打ち出すべきです。
その3は、介護人材確保の問題です。
区内のある特養ホームで「人材確保ができずベッドが空き状況になっている。区は人材確保の支援にもっと取り組んでほしい」という声を聞きました。代表質問で指摘しましたが、介護人材の確保には賃金アップが不可欠です。介護報酬の引き上げでは、保険料・利用料に連動する問題があり、賃上げ特別枠での国の補助制度が求められています。ところが、区長は、介護報酬改定とは別枠の介護労働者の賃金引き上げの仕組みを創設するよう国に要請する考えは現時点ではない、と答弁しました。
国への要請の姿勢も、区独自負担軽減策も不十分であると言わざるを得ません。
第3は、障害者のリフトつき福祉タクシー廃止と代替策の不十分さです。
区は、命をつなぐ制度を廃止しないでという障害者の声を聞かずに、リフトつき福祉タクシーを廃止し、介護タクシー利用補助事業に一本化しました。通院などで利用していた人は大きな経済的負担増になりました。
その後、介護タクシー利用補助事業の改善について、障害者団体から区や区議会に請願や陳情が出されました。通院とリハビリのみでなく、社会参加などにも使えるように対象を拡大してほしい、など切実な要求にもかかわらず、これらに冷たい姿勢をとっていることは、障害のある人への合理的配慮や障害者施策の充実を言いながら矛盾しています。
第4は、生活保護基準の引き下げに反対しない区長の姿勢です。
上目黒のある一人暮らしの女性は「生活がたいへんで、どこか切り詰められないか、いつも気を付けて生活している」と言いました。95歳まで生きてきた方に、こんな切ない思いをさせることは、政治の責任で解決しなくてはなりません。
政府はこの10年間で基準を1万3000円も引き下げた上、昨年10月から、65歳以上の単身世帯の76%、子どもがいる世帯の43%で、保護費が引き下げられました。生活保護世帯の消費動向を偽って引き下げたという政府の統計疑惑まで浮上しています。低所得世帯の暮らしを底上げすることこそ政治の役割ではないかとただしたのに対し、区長は5年に一度の見直しは否定されることではないと、引き下げを事実上容認しました。生活保護削減の影響を調査し、猛暑対策の電気代補助などを講じる姿勢も全くありません。
第5は、住宅困窮者対策が不十分であることです。
高齢者の住宅確保の困難さは年々深刻さをましています。高齢者福祉住宅や区営住宅を増設する施策が不十分です。民間アパート一括借り上げ方式は、区の住宅行政に第1線で協力している宅建協会の提案であり、真剣に取り組むべきであります。
目黒1丁目24番地の都営住宅の問題については、区内の希少な都営住宅を減少させるものであり、東京都に建替え要望しないのは大問題です。
また、目黒区は公的住宅が少ないため、重要な役割を果たしてきたのが家賃助成制度です。高齢者等居住継続家賃助成については、6年間では当選できないほど福祉住宅の倍率は高く、高齢者等が区内に住み続けられるよう、6年限度をなくすべきです。
第6は、保育の質と区立園廃止の問題です。
その1は、保育の質をどう改善するかという問題です。
待機児解消問題は、2020年4月ゼロを展望できるところまで来ましたが、民間株式会社頼みです。そうした私立認可保育園、小規模保育園、企業型保育園に共通している問題が低賃金と職員不足です。「先生が定着しない」「思うような保育ができない」日々の保育内容が問われる事態が広がっています。
私立認可園の保育の質を確保する取り組みは、東京都に責任があります。目黒区は、都の検査に立ち会っているから責任を果たしていると主張します。しかし、職員配置や財務会計、保育内容についての法定指導検査は、年4園。40園では10年に1回と極めて不十分です。法改正により23区でも法定検査ができるようになり、全園実施する区もあります。目黒区でも毎年全園を検査すべきです。
小規模保育園については、目黒区が責任を負い、検査もしていますが、劣悪な労働条件によって、保育士が次々と止めていく問題が起きています。未然防止を含め、実態を把握し是正すべきです。
企業型保育園については、保育士の一斉退職や突然の休園が相次ぐ背景に、インターネットで1億円もの助成金が申請でき、行政と事業者の面談が不要で、保育士の配置基準が認可園の半分、企業が簡単にもうけられる仕組みがあります。内閣府は、設置後のチェックを、児童育成協会に丸投げ。さらに人材派遣大手パソナに業務委託。保育規制緩和の旗振りがパソナ会長で、監査を一手に引き受けており、まともな保育行政とは言えません。区内に15園が開設していますが、青木区長は、企業型保育園に対し、保育の質も運営実態も不明なまま、待機児対策の受け皿として認める無責任な発言をしました。姿勢が問われます。
その2は、区立保育園廃止の問題です。
新年度は上目黒保育園を廃止し、鷹番、東山保育園の廃止計画を推進します。
東京都の保育ニーズ実態調査によれば、希望する保育サービスは52%が公立園と答え、私立認可園39%を大きく上回りました。
区立保育園は、産休明け保育、障害児保育、延長保育、アレルギー対応を先駆的に取り組み、医療的ケア児や発達障害児の保育、状況により困難ケース児童の受け入れもしています。まさに、区立園は区内全体の保育の質を押し上げる役割を果たしてきたのであります。これ以上区立保育園を廃止してはなりません。
第7は、住民自治の確立という基本構想の理念を堅持すべきという問題です。
自由が丘の白日荘に関わり、5000筆の署名運動を進めてきた地域住民と向き合わない区長の姿勢は、行政への不信感を広げています。1000坪の遺贈問題について、事前に全く説明せず、区民不在で進められました。その上、事後の説明も全くありません。これでは、住民自治の確立をめざしている区とは言えません。
また、区民センター見直し検討について、区は、見直しの方向付けを民間コンサルに丸投げしています。周辺施設と一緒に複合化や集約化して、「13施設の多くを民設民営化しようとしているのではないか」と区民・関係者に危惧の声が広がっています。徹底した区民参加による方向性の検討こそ先決です。
第8は、基本的人権の問題です。
区は、男女平等と性の多様性を尊重する条例改正に着手すると明言しました。性的マイノリティに関する差別解消を目指すと言いながら、当事者が切実に待ち望んでいるパートナーシップ認証制度に区長が背を向けるのは許されないことです。
最後に、憲法を生かす区政についてです。
青木区長は、安倍首相の9条改憲発言について、平和都市宣言に基づき、きっぱり反対すべきであります。あわせて、戦争の記憶を風化させないために平和マップをつくることを求めます。
日本共産党は、憲法を暮らしに生かし、地方自治・住民自治の確立に向けた目黒区政の実現のために引き続き全力を尽くすことを表明し、討論を終わります。