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2018年第4回定例会「遺贈の放棄」松嶋議員の反対討論

私は、日本共産党目黒区議団を代表し、「議案第87号、遺贈の放棄」に反対する立場から討論を行います。
この度の遺贈の放棄は、故平岩由伎子氏が、自由が丘3丁目の1000坪の土地、建物、資料館などを寄贈したいという申し出に対して、目黒区が遺贈を放棄するというものです。目黒区が受けないとした理由は、「有料公園にすることや、資料館は5年間非公開すること」など条件が厳しく、維持管理に多額の費用がかかるためとしています。しかし、わたしたちは、この判断には問題があり、時間をかけて検討する余地があると考えます。その理由を5点述べます。
1点目は、議会で審議するために必要な情報がきちんと示されていなかったことです。今年7月の段階で、遺言執行者から遺贈の条件緩和についての提案がなされていることが、11月に日本共産党区議団が情報公開請求を行い入手した文書によって判明しました。そこには、「無料公園」の提案や、保育所の設置など、区民の切実な願いに応える素晴らしい提案も含まれていました。さらに、どのような負担軽減がされたら目黒区が遺贈を受けるのか逆に提案してほしいとまで述べられていました。こうした事実は、議会にも、区民にも明らかにされていません。そのため、そのような提案が妥当なものかどうかも判断できず、議論が尽くされたとはいえません。
2点目の理由は、目黒区は遺言の条件が厳しいといって、遺贈を放棄するといいます。その根拠としているのは、遺言が家庭裁判所の検認を受けて「法的に確定している」内容だからといいます。しかし、最高裁の判例では「検認は遺言書の存在を確定し現状を保護するために行われる手続であるが、遺言書の有効・無効という実体上の効果を左右するものではない」として、遺言の内容の有効性そのものが確定しているものではありません。にもかかわらず、目黒区が検認をもって、条件緩和が不可能であるかのように答弁したことは事実ではありません。
3点目は、遺言執行者からの条件緩和の提案に対して、区長は「遺言解釈の範疇ではなくもはや変更だ」と述べ、条件緩和が不可能だという見解を示しました。しかし、最高裁判所昭和58年3月18日判決にあるように、「遺言の解釈にあたっては、遺言書の文言を形式的に判断するだけではなく、遺言者の真意を探究すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたっても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探究し当該条項の趣旨を確定すべきものであると解するのが相当である。」とされています。最高裁判所の判例を考慮に入れて、遺言を補完する弟あての手紙と本件遺言を合理的に解釈し、遺言者の真意を探究すれば、「目黒区に遺贈を受けてもらいたい」ということは明らかであります。今回の遺言執行者からの提案は、法的根拠もあり、そしてなによりもそれが、遺言者の真意と区民の利益につながることであります。もし、それでも目黒区が何らかの法的なリスクを懸念するのであれば、例えば手紙の有効性について検認調書から筆跡鑑定をするなり、遺言執行者や相続人との間で詰めて協議をするなり、不安の種をつぶすことはいくらでもできるはずです。遺贈の受け入れは地域住民の願いですが、目黒区は受け入れに向けて、そうした努力や模索をした形跡もありません。
反対する理由の4点目は、「遺贈の受け入れ」は住民の切実な要望だということです。今回の遺贈の土地は、地域では白日荘と呼ばれ、動物学者で、別名オオカミ博士、愛犬王と呼ばれた故平岩米吉氏の邸宅です。この土地は、戦前からの「貴重な緑地」であり、建物は「自由が丘の創世記を遺す貴重な文化資源」であります。Jスピリット、自由が丘住区住民会議、町会、商店街など、地域を代表する4団体が出した要望書にも、平岩氏の研究が「今日のペット文化の先駆け」と強調し、自由が丘周辺が今、イヌやネコと共に住みやすい街となっていることは「平岩氏の志を街が受け継いできた結果」だとも述べられています。わたしは、この問題で、平岩邸の近隣の住民と30軒以上対話を重ねてきましたが、ほとんどの住民が、平岩邸、あの白日荘を維持してほしいと話していました。平岩米吉先生の思い出を話される方、四季折々の平岩邸の自然の美しさを語る方、よく近所の人が集まってお庭でお茶会をしたという話。長い間、この地域にお住いの住民一人一人が、それぞれの白日荘の思い出を語っておられました。遺言者である平岩米吉氏の長女、故平岩由伎子さんが、ご近所の皆さんの憩いの場所としてこの土地を残したいという尊い思い。そこに感銘を受け、なんとかならないんだろうかと地域の皆さんは心を痛めているのです。ある近隣住民の方は、受け入れ条件が厳しいのであれば、目黒区の財政的な負担を軽減するために、例えば資料館の管理、清掃、鍵の管理などやってもよいともおっしゃっていました。日本オオカミ協会からも遺贈を受けてほしいと要望が出されていますが、そうした団体に研究資料の整理や管理など協力を求めることもできたはずです。目黒区はお金がかかるという前に、それこそお得意の地域活力、民間活力の活用でできることはいっぱいあったのではないでしょうか。また、この地域に公園がほしいという思いは切実です。目黒区の一人当たり公園面積は、1.76平米ですが、自由が丘住区は、0.62平米しかありません。22住区エリアの下から7番目と低い地域です。公園は防災の拠点にもなります。さらに、子どもの遊び場の確保という点でも重要です。西部地域に保育園が増えるなかで、園庭がなく遊び場の確保が大変です。緑が丘にある保育園からは、「平岩邸は絶好の子どもたちの遊び場になります。遺贈を受けることは、目黒区の子どもたちの未来に対する先行投資です。」と目黒区に要望が出されていました。遺贈の受け入れが、区民の願いにこたえる絶好のチャンスだったことはあきらかです。
5点目の理由は、文化財の保護の観点からです。平岩米吉氏が創刊した「動物文学」の執筆陣には、南方熊楠、柳田国男、室生犀星、北原白秋など、錚々たる顔ぶれが揃っており、その文化的水準の高さをうかがわせるものです。今回、こうした貴重な研究資料も邸宅に残され、合わせて遺贈されるとしています。今年の6月、文化財保護法の改正が成立しましたが、自治体が独自に文化財を掘り起こし、そこに光を当て、地域振興につなげていくことを促すものです。地域の貴重な文化財である平岩邸の文化財を放棄することは、国の文化財行政の流れからも外れたものと言わざるを得ません。
以上、5点にわたって反対の理由を述べました。
最後に、委員会で目黒区も答弁しているように、今後相続人から再度寄付の申し出があった場合には、目黒区は話し合いのテーブルにつき、遺言者の思いと地域住民の切実な願いである公園などに整備できるよう、真摯に検討を行うことを要望して、反対討論とします。

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