党の政策
2018年第1回定例会における森美彦議員の一般質問
私は、日本共産党目黒区議団の一員として区政一般について質問します。
第1は、生活保護費削減についてです。
安倍政権は、今年10月から、生活保護費を最大5%引き下げようとしています。生活保護世帯の7割近くの生活扶助基準が引き下げられ、削減総額は年間210億円にもなります。しかも、今回の削減は、2013年の削減に続くものであり、合わせると総額1100億円もの大削減です。
生活扶助基準の見直しの最大の問題点は、政府が、削減の理由として「生活保護を利用していない低所得世帯の生活水準が下がったからそれに合わせて引き下げる」としていることです。
事実、安倍政権の下で、貧困が深刻化しています。所得が最も少ない10%の貧困層の所得は、1999年からの15年間に162万円から134万円に2割も下がりました。同じ時期に、欧米6か国の貧困ラインが2割〜6割改善しているのと正反対であります。
貧困層である「一般低所得世帯」に合わせて生活扶助費を引き下げれば、「これ以上の貧困があってはならない」という最低ラインをさらに引き下げることになります。現在でも、憲法25条が保障する健康で文化的な生活と言える水準にはなっていないのに、さらに引き下げたらどのような事態を招くのか、国も自治体もしっかりした実態調査が不可欠です。
目黒区内の事例を紹介します。事例1は、70代の夫が身体障害者2級で、寒さ暑さが過度になると痙攣を起こすので、温度調節のための電気代は、夏も高いが、冬1月2月は2万円にもなる。1年で計画的に家計を遣り繰りしてギリギリの生活をしているので削れるところはない。事例2は、60代の女性です。入浴券と保護費で何とか毎週1回だけ公衆浴場に行っているが、もっとお風呂に入りたい。保護費が削られたらお風呂にも行けなくなる。
また、今度の削減が子育て世帯を対象にしていることも大きな問題です。母子加算などの削減により4割が減額となり、「ぎちぎちの生活」をしてがんばっている子育て世帯への裏切りであります。
こうした、低所得世帯への支援こそが政治の責任であり、区政の役割であります。そこで、3点について質問します。
その(1)は、削減によって生活実態はどうなったか、についてです。
2013年から行われた生活保護基準の大幅な引き下げにより、当事者の生活にどのような影響があったのか、区として調べたのか、おたずねします。改めて実態調査すべきではありませんか。
また、2018年10月からの引き下げで保護費が減額されることに対する当事者の意見や要求を集約すべきではありませんか、おたずねします。
その(2)は、低所得者むけ施策への波及的な影響についてです。
10月からの生活保護費の削減を実施すれば、広範な区民の暮らしに影響を与えます。住民税、保育料、介護保険料、就学援助、最低賃金などで、低所得世帯の生活悪化に連動します。低所得者むけの多くの施策で影響が出ますが、国・都・区を合わせて何施策に影響するか、おたずねします。
その(3)は、生活保護費の削減に反対すべきではないか、についてです。
政府は、生活保護費削減の理由として、「生活保護を利用していない低所得世帯の生活水準が下がったからそれに合わせて引き下げる」としています。こうした理由による5年ごとの削減を繰り返せば、際限のない「貧困の悪循環」をもたらすことになります。
区長として、貧困と格差を是正し区民生活を守る立場から、10月からの生活保護費の削減に反対すべきではありませんか、答弁を求めます。
その(4)は、生活保護の利用率向上への努力についてです。
生活保護の捕捉率(利用の要件がある人のうち実際に利用できている人の割合)は、厚労省の推計によれば2〜3割とされます。生活保護の利用率が低すぎるのです。生活保護を利用することは、憲法25条で保障する「健康で文化的な最低限度の生活」への「正当な権利」であることや制度を周知して、自分が生活保護を利用できることをもっと多くの区民のみなさんに知らせることが大切です。生活保護を受給することへの偏見をなくし、保護を必要とする区民が確実に保護を利用できるようにする取り組みが求められています。
目黒区として、どのように捕捉率(利用率)を上げる努力をしているか、おたずねします。
第2は、子ども総合計画改定に向けた取り組みについてです。
新年度から、「子ども総合計画」改定に向けた検討が行われます。「子ども総合計画」の策定は、「子ども条例」に規定されています。「目黒区子ども条例」は、2004年、全国に先駆け4番目で、当目黒区議会において全会派一致で採択されました。国連「子どもの権利条約」を我が国が批准してから10年後のことでした。
国においては、昨年4月、児童福祉法が改正され、国連「子どもの権利条約」の理念がはっきり取り入れられました。改正前は、子どもは保護されるべきものという視点がつよかったのですが、改正後は、子どもを大人同様に「権利の主体」として位置づけ、その最善の利益が優先されるよう努めることとされました。
いまこそ、子どもの意見が尊重され、子どもの生きる力をはぐくみ、子どもと大人が共に豊かな地域社会を形成していくことが求められています。そこで3点質問します。
その(1)は、子どもたちの意見を十分に聴くべきではないか、についてです。
新年度は、改定に向けた取り組みの一環として、業者へ基礎調査を業務委託しますが、この基礎調査とともに、保育、学童保育など分野別に当事者を加え、当事者を主体にした分野ごとの検討会を設置すべきではありませんか。
また、子ども条例の意見表明権をふまえ、子どもたちの意見を十分に聴くべきではありませんか。
その(2)は、子どもと貧困対策についてです。
子どもの貧困対策法が施行されて4年になりますが、いまだに6人に1人の子どもが貧困とされる水準で生活しています。ひとり親家庭の貧困は2人に1人という深刻さです。非正規労働が増え、親が昼も夜も働いてなお貧困という課題を抱えながら「貧困の連鎖」を断ち切っていかなければなりません。
今度の子ども総合計画の改定において、ひとり親家庭をはじめとする子どもの貧困対策については、しっかりと位置づける必要があります。
足立区、新宿区、墨田区、豊島区では、東京都から委託された「首都大学東京、子ども・若者貧困研究センター」が徹底した実態調査を行いました。こどもの虐待や非行は、低所得の家庭ほどその割合が多くなっています。また、子どもの健康悪化については、生活困窮世帯の子どもが、ぜんそくを発症するリスクは、それ以外の世帯の子どもの1・3倍です。「5本以上の虫歯」となる割合も、生活困窮世帯の子どもと、そうでない世帯の子どもでは2倍の格差があります。
こうした貧困の実態に基づいて足立区では、子どもの貧困対策に向けた実施計画の中で、24の指標を設定しました。その数値変化を確認するとともに、施策の実施状況や効果を検証しています。新宿区でも、実態調査を生かし、子どもの貧困対策に資する事業を一覧にして、総合的に対策を推進しつつあります。
目黒区でも、子どもと貧困の実態把握は不可欠であり、新年度に業者に委託して行う基礎調査を5年前と同様のやり方で実施するだけでは不十分です。実態調査を徹底して行うとともに、子どもの貧困対策に向けた計画を策定し、子育て費用などの家計支援、子どもの学習支援、虫歯対策など健康支援など、総合的で具体的な目標値を示した計画とすべきではありませんか。
その(3)は、世界人権宣言70周年にふさわしい取り組みについてです。
2018年は、世界人権宣言70周年です。改めて、目黒区子ども条例に基づき、子どもの権利とは何か、本当に子どもの権利が守られている政治・経済・社会・文化であるのかを、子どもも大人もともに考える年にしたいものです。
折しも、子ども総合計画改定の取り組みを行います。子どもの最善の利益にかなった目黒区政が行われているか、総合的に分析し検証するよい機会となっています。
そこで、世界人権宣言70周年にふさわしく、旺盛な取り組みを展開してはどうかということを提案したいと思うのです。5年前の調査でも、「10代の意見や要望をもっと聞いてほしい」という声が出されましたが、子どもにも、願い、要望する権利があります。
子どもの権利に関わる普及啓発事業や子どもたちによる懇談会を開催するとともに、給食や学校設備の充実、図書館や児童館、公園やスポーツの要求など2019年度に向けた目黒区への「子ども予算要望書」作りなどを旺盛に展開する考えはないか、答弁を求めます。
第3は、就学援助費の入学支度金の額を国基準に引き上げることについてです。
子どもの貧困と格差が大きな社会問題となる中で、就学援助制度が果たす役割はますます重要になっており、その拡充が求められているところです。
国連国際人権A規約13条には、高等教育までの「無償教育の漸進的導入」が規定され、批准した日本政府には、国際社会の約束としてこれを着実に実行することが義務付けられています。2013年5月、国連社会権委員会は、日本政府に対し、5年後の今年2018年5月までに、無償教育の迅速・効果的な実行計画の作成、授業料や入学金、学校納付金の無料化などの事項に回答するよう要求・勧告しています。
こうした中で、就学援助の拡充については、目黒区としても真剣に、取り組みのペースを早めなければなりません。
入学支度金の入学前支給が2019年4月の小中学新入生から実施されることになりましたが、金額については据え置かれたままです。国は、要保護児童生徒に関わる入学支度金の基準額について、2016年度からすでに、小中学生とも2万円台から4万円台に引き上げています。
国の基準額以上に引き上げる自治体は、全国1400を超え8割に達します。入学準備には10万円必要と言われています。物価が高くて入学準備はたいへんです。財政力のある23区だからこそ、入学支度金の金額を率先して引き上げるべきと思うのです。すでに新宿区をはじめ支給額を増額する自治体が出ています。
目黒区では、準要保護を生活保護基準の1.2倍に設定しています。家計のやりくりが本当に厳しい状況におかれている子育て世帯への支援は待ったなしであります。目黒区でも、速やかに国基準額に引き上げるべきと思いますがどうか、おたずねします。
第4は、孤独死ゼロのとりくみについてです。
全国の大学・国立研究所の研究者による「日本老年学的評価研究プロジェクト」が2万人の高齢者を対象に行った調査で、「低所得の高齢者と、高所得の高齢者では、死亡率が3倍違う」という結果が出されました。
年収150万円未満の高齢者のなかで、「具合が悪くても、医療機関への受診を控えたことがある」という人の割合は、年収300万円以上の人の1・4倍です。
所得などの社会的要因によって、食生活やストレスなどに差異が生じ、低所得者の人ほど疾病・死亡のリスクが高まる「健康格差」については、広範な研究者の見解が一致しています。
こうした中で、孤独死の割合においても経済格差がある現実を是正していくことが強く求められています。そこで、孤独死ゼロのとりくみについて、2点質問します。
その(1)は、生活保護世帯への独自の取り組みについてです。
生活保護世帯のひとり暮らし高齢者が増加していますが、孤独死の実態はどうか、おたずねします。また、世間並みの交際費さえ乏しく、孤立しがちな状況におかれている当事者だからこそ、孤独死防止策の取り組みを生活保護世帯への独自の取り組みとして、さらに強化すべきではないでしょうか。
非常通報システム及び生活リズムセンサーについては、体に異常を来した時に、自らSOSを発信できる・できないにかかわらず、助かる命を救えた実績があります。また、夏場など発見が遅れて悲惨な孤独死を防ぐ役割も重要です。生活保護世帯においては、すでに2〜3倍の利用率になってはいるものの、利用意向34%を目標値に、さらに設置促進を図るべきではないか、答弁を求めます。
その(2)は、区営住宅での孤独死ゼロに向けた取り組みについてです。
区営住宅自治会の正副自治会長さんは孤独死に立ち会う場合が多く、その心中いかばかりかと思います。毎年、後を絶たない区営住宅での孤立死ゼロに向けて、区営住宅に住むひとり暮らし高齢者に対して、案内と申請書を個別に郵送するとともに、区営住宅自治会に出向き説明のうえ協力を依頼するなどして、非常通報システム及び生活リズムセンサーの普及促進を図るべきと思いますがどうか、お答えください。
第5は、目黒1丁目都営住宅の一部廃止の動きについてです。
先月1月31日、札幌市の生活困窮世帯の自立支援施設で11人が死亡する痛ましい火災が起きました。全国各地で相次ぐこうした大規模な死亡火災は、あらためて、高齢者、障害者、低所得者などの住宅困窮世帯が安心して暮らせる公営住宅整備の必要性を突き付けています。
目黒区内の都営住宅は少なく、空き室募集の倍率は、直近で実質倍率187倍、昨年初めて一般応募倍率が1000倍を超え、8月のポイント方式の募集は目黒ゼロでした。「80代の夫婦ともベッドが必要になったが、6畳一間に1台しか入らない」「都営は、何度応募しても当たらない」「今度の募集はいつあるのか」と切実な声が渦巻いています。
ところが、最近になって、目黒1丁目27番地の都営住宅一棟30戸の廃止の動きが明らかになりました。数少ない都営住宅をさらに減らすという動きは、とんでもないことであり、目黒区の一大事と捉えて対応する必要があります。
そこで、2点質問します。
その(1)は、都営住宅の供給戸数を確保し増設する要望についてです。
全都で最も都営住宅の少ない目黒区において、これ以上供給戸数を減少させることに対し、区として東京都に、供給戸数を確保し増設するよう要望すべきではないか、おたずねします。
その(2)は、目黒区への移管と建替えについてです。
目黒区への建替時移管事業が適用できないのでしょうか。これまでの都営住宅に関わる都区の役割分担は、100戸以上の団地は都が管理し、100戸未満の団地は、順次、区移管を進める方針となっています。
しかも、今回廃止の動きがある目黒1丁目27番地の1棟だけは、本体の団地から離れたところにあり、名称も、本体は1号棟から5号棟まで連番であるのに対し、この棟だけは27号棟となっています。
こうした状況を考えれば、別団地扱いをして本体と切り離し、100戸未満の都営住宅として建替時区移管事業の対象とできるのではないか、おたずねします。
その場合、敷地の有効利用の視点から保育園との複合化なども視野に入れることができるのではないでしょうか。
以上、答弁を求め、壇上からの質問を終わります。