森美彦議員が、「生活保護引き下げに反対せよ、孤立防止策を強化せよ、JR跡地売却やめよ」で一般質問しました。
私は、日本共産党区議会議員として、区政一般について質問します。
第1は、生活保護基準の引き下げに反対し区民生活を守ることについてです。
新政権は、生活保護基準の引き下げを社会保障改悪の突破口としています。自民、公明、民主の3党合意に基づく社会保障改革推進法は、社会保障の給付を「受益」とみなし、受ける利益に見合う負担をさせることを基本方針とし、これから先の社会保障は「自助」と「自己責任」が原則で、それを助け合い=「共助」によって支援するものに変質させようとしています。こうした考え方は、国民には生存権があり、国家には生活保障の義務があるという憲法25条の精神に真っ向から反するものです。
デフレ不況が長引き深刻化しているのは、非正規雇用と賃金引き下げが原因です。こうした中で、生活保護基準を引き下げれば、さらに悪循環を招くことは明らかです。生活保護基準は国民の命を支える基準であります。安倍政権が、引き下げようとしているのは、食費や水光熱費、被服費という生活に欠かすことができない生活扶助費です。政府は、今年8月から生活保護基準を引き下げ、4人家族で月2万円・平均8%の減額、96%の受給者の生活扶助費を削減しようとしています。
今度の改悪で、最も影響を受けるのは子育て世代です。4歳の子どもと30歳の母の母子家庭では、生活扶助費は13万7950円。「ギリギリの生活をしているので削減は厳しい」との声が上がっています。また、就学児のいる世帯では、「子どものために塾へ通うお金さえ工面できない」「部活のユニホーム代や校外練習の費用が大きいので部活に参加させられない」「進学のための費用も貯えられない」など、今でさえ切実な声が渦巻いているのに、生活保護基準を引き下げて子育て世代への支給を減らせば、教育費などを切り詰めざるを得ません。それは結局、親から子への「貧困の連鎖」を拡大することになります。
生活保護受給世帯の9割近くが、高齢であったり、病気や障がいなどを抱えていたり、母子家庭であったりと、年金や賃金で不足する生活費を保護費で補い暮らしている人が多いのです。目黒区の2300世帯の生活保護費を削ることは、暮らしと命、教育を削ることになります。
さて、生活保護基準の引き下げは、生活保護受給者だけの問題にとどまりません。最低賃金は、生活保護基準より下回らないことを法律に明記されています。いま、春闘要求に時給1000円以上を掲げていますが、東京の最低賃金は時給850円、いまだに生活保護基準を下回っているのが実態です。生活保護基準の引き下げは最低賃金の引き下げに連動します。
また、住民税の非課税限度額とも連動しているため、基準引き下げによって新たに課税される世帯が広がります。そうすれば、医療、介護、公営住宅家賃などへ雪だるま式の負担増になります。保護基準の引き下げは、国民生活の各分野に深刻な打撃をあたえることは明白です。
政府の発表によれば、日本は、国民の16%2000万人を超える人が貧困とされ、ОECD加盟31か国中ワースト4位の貧困大国です。生活保護基準を引き下げれば、さらに貧困が深刻化します。生活保護基準はすべての最低生活保障を下支えするために、安易に水準を引き下げることのできない岩盤であり、大企業による賃金引き下げや低所得者の所得が減っていることを理由として基準を引き下げることは許されません。
以上の立場から3点質問いたします。
その1は、生活保護基準引き下げに対する区長の考え方についてです。
憲法25条の生存権は、すべての国民に「人間らしい尊厳ある生活」「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を保障することを国に求めています。すべての目黒区民に対して憲法25条をしっかり据えた生活保護行政を推進することが重要であると考えますが、区長の考えをおたずねします。また、区民生活に重大な影響を及ぼす生活保護基準の引き下げを中止するよう国に意見を提出すべきと考えますがどうか、お答えください。
その2は、生活保護基準引き下げによる区民生活への影響とその緩和策についてです。保護費の引き下げは、受給者のくらしに打撃となるだけでなく、最低賃金、年金額、課税最低限、保険料の減免制度、医療費、保育料など各種福祉制度、就学援助など国民生活の各分野にも影響して引き下げや負担増となるため、子育て世帯から高齢者世帯まで区民全体の生活にかかわる大問題であります。
政府は、2月5日の閣僚懇談会で、「生活扶助」が引き下げられることで保育料免除など他の制度に影響が及ばないよう対応する方針を確認しました。生活保護基準引き下げを批判する世論に押されたものです。住民税の非課税限度額については、影響が出始める2014年度以降の税制改正で対応するとし、就学援助など地方自治体が対象世帯を決める制度については、政府の方針に理解を求めたうえで判断するよう自治体に通知を出すと言います。しかし対応は自治体次第であり、目黒区の判断によって左右されることになります。
生活保護基準引き下げによる影響を全庁的に把握するとともに、区民生活への影響緩和策を講じる考えはないか、おたずねします。
その3は、相談員とケースワーカーの増員についてです。区民の生活困難は、生活費だけでなく精神疾患その他の障害、多重債務、住居の喪失、若者の雇用、孤立化など増加し複雑化しているのが実態であり、面接相談員の専門的な知識や対応力が一層求められています。また、ケースワーカーの受け持ち人数も増加し、複雑化する受給者への支援を強化する必要があります。新年度から係長職を1名増員する予定ですが、さらに、窓口の相談員とケースワーカーを増員すべきと考えますがどうか、おたずねいたします。
第2は、孤立防止策の強化についてです。
全国で餓死、孤立死が相次ぎ、高齢者や障碍者の人権にもかかわる大きな社会問題になっています。悲惨な事態が繰り返されるのはなぜでしょうか。これまでの事例から様々な教訓が浮き彫りになっています。
立川市の都営住宅で95歳の母と63歳の娘の死後一か月経った遺体が発見されたケースでは、母の胃袋は空。世話をしていた娘の病死で、衰弱死したとみられます。認知症の母は、要介護2に認定されていたのに、介護サービスは受けていませんでした。ヘルパーさんを頼んでいなかったのも、娘が病気でも医者にかかれなかったのも、経済的に苦しかったため介護や医療を受けられなかったようです。同じ立川市で、無職の45歳の母親と知的障害のある4歳の息子の遺体が死後2カ月後に発見されたケースでは、母親がくも膜下出血で急死。目の前の弁当も食べずに飢えてなくなった息子。自治体の援助もなく孤立死に追い込まれました。
23区も同様です。2010年、餓死者を年間55人、孤独死を6383人も出しています。しかも、報道されている餓死や孤立死はほんの一部にすぎません。
目黒区でも、東山で5年たった白骨遺体、目黒本町でミイラ化した遺体、夏場に異臭を放つ遺体が発見されるなど、孤立死が後を絶ちません。
こうした孤立死の背景には、「自立・自助」を強調し、福祉の「市場化」「措置から契約へ」「有料化」など公的責任の後退、生活保護・医療・介護・保育などの制度改悪によって、公的なサービスに結びつかない状況が進んでいることがあります。介護殺人の事件などを見ても、当事者が地域社会と公的な制度・サービスに結びついておらず、援助があれば、そこまでには至らないですんだはずです。区民の生命と尊厳を守るためにも孤立防止策の強化は待ったなしの課題です。
こうした中で、目黒区の高齢者福祉住宅で孤独死がないのは評価できます。それは365日24時間のLSAなどの人員配置と非常通報システム(生活リズムセンサー)の組み合わせで、孤独死を出さない環境条件を備えているからであります。また、目黒区でも、高齢者見守り施策や孤独死防止対策が進み始めています。今年度は全庁的な検討会が7回開催されていることも前進面ですが、区民の生命と尊厳を守るためには、一層の取り組みが求められています。
以上を踏まえて、5点について区長の考えをおたずねします。
その1は、地域において支援が必要な人の把握の仕方などについて専門家の力も借りながら検討し、区の責任で、65歳以上の独り暮らし及び65歳以上のみ世帯のすべての高齢者の訪問調査を行う考えはないか、おたずねします。
その2は、孤立を発見した時の連絡、連絡を受けた時の確認、地域における日常的な寄り添い支援、支援が必要な人への地域活動や社会参加への情報提供や働きかけ、保健医療・福祉・介護サービスにつなげる支援、生命・身体・財産の保護、など総合的な孤立防止推進計画をつくる考えはないか、おたずねします。
その3は、介護保険制度導入とともに削減されてきた一人暮らし等高齢者の施策の拡充についてです。当面、緊急時の通報システムの対象者を、慢性の心・呼吸等疾患のある人に限定せず対象者を身体的な不安があり希望する人に拡大する考えはないか、おたずねします。
その4は、生活リズムセンサー設置拡大についてです。
非常通報システム事業の付加サービスとして生活リズムセンサー(安否確認センサー)を設置することを評価します。これをさらに障がい者や一人暮らし等高齢者登録し設置を希望する世帯に拡大する考えはないか、伺います。
その5は、防災・救急医療情報キット(仮称)についてです。記載された情報を定期的に更新する体制を確保するなど孤立防止策として機能するよう位置づけてはいかがでしょうか。
第3は、JR跡地の売却をやめ区民のために活用することについてです。
JR跡地は、歴史的な価値や緑を生かし、防災スペース、区民施設として活用することこそ区民の立場であり、地域住民や区内団体が中心になってJR跡地を売却しないで区民のために活用することを求める住民運動が広がっています。署名も粘り強く取り組まれ、区長や区議会とともに、都知事や都議会にも陳情が出されています。
そもそもこの土地は、東京都は、都営住宅101戸を建設するために、目黒区は、福祉住宅を80数戸建設するために、旧国鉄清算事業団から安い価格で買い取りました。公営住宅の供給率が全都でワースト1という目黒区での公的住宅の建設は、800倍の応募倍率に示されるほど今でも切望される課題です。ところが、区は、庁舎移転や大型開発にお金を回し、公的住宅の建設計画を白紙に戻してしまいました。
その後、南青山の大型再開発でも使われた定期借地方式での活用計画を打ち出しました。大企業に土地を貸し付け地代をとって儲けようとする区の姿勢に厳しい批判が広がる中、今度は、一方的に、売却方針を打ち出したのです。
区長は、JR跡地売却にかかわる私の質問に、「保有目的を十分に発揮できない区有地である場合には、売却によって得る財源を、他の施策の財源に充当することは、理にかなう手法だ」と答弁しました。
区長は「保有目的を十分に発揮できない区有地」と言いますが、避難所の収容力が全く不足しているもとで防災用地も不足しています。1000人もの待機者のいる特養ホームの建設用地として、さらに、今年は800人以上も第1次募集で認可保育園に入れないお子さんが出ましたが、待機児解消のための認可保育所の増設用地としても切実です。「保有目的を発揮できない」どころか、いくらでも区民の求めている使い道があるではありませんか。
以上を踏まえて、今回の質問は、次の3点です。
その1は、区長は区民の声をどう受け止めているのか、についてです。
毎月、中目黒東急ストア前であるいはJR跡地周辺住宅への戸別訪問などで「JR跡地を売却しないで区民のための活用を求める会」が署名活動を進めています。こうした運動に参加している方たちには「私たちがやらなければならない署名活動をしてくれてありがとう」「売却は絶対やめてほしい」という声が若い人から高齢者まで年代をこえて寄せられ、この声は高まっていると言います。区長は、緊急財政対策として突然「売却」をトップダウンで打ち出し、都に対して「売却」に同調するよう働きかけていますが、やっていることがあまりに区民不在だと思わないのですか。地元の有力者からは、「JR跡地は区民の財産であり、区長のものではない、勝手に売らないでくれ」「地域のことを地域住民抜きで決めるな」という声が出されています。区長は、こうした区民の声をどう受け止めているのか、おたずねします。
その2は、緊急財政対策という口実も、区長トップダウンで売却していいという根拠にはなりません。区民不在のまま東京都さえ売却に合意したら公売にかけ即刻売却してしまうやり方は許されません。JR跡地問題に限定した住民説明会を開催してから5年が経過しました。この間、区の立場は、定期借地方式から売却へと大きく方針転換しました。東日本大震災を経験するなど社会経済状況も大きく変化しました。こうした状況の変化を踏まえてJR跡地問題に限定した住民説明会を開催すべきではありませんか。お答えください。
その3は、JR跡地は、大震災の時に防災に活用してほしいという要望が極めて強い土地であります。首都直下型地震で23区のうち11区の避難所の収容力が不足し、目黒区は、収容不足の人数が23区で5番目に多いことも区民の不安を広げています。また、いま一層受け入れ不足が深刻化している保育園や特養ホームを増設することは、地域の防災拠点としての役割を担うことにもなります。JR跡地は、防災と福祉の拠点として整備すべきではないか、区長の答弁を求め、私の壇上からの一般質問を終わります。