党の政策
区議会第3回定例会はじまる。9月7日本会議での岩崎議員の一般質問
私は日本共産党目黒区議団の一員として一般質問を行います。
まず、区財政について、総務省の基準でも「健全」と判断されているのに、なぜ「財政危機」なのか、区民生活切り下げる180億円の経費削減は撤回すべきだという点です。
今回、区が打ち出した「緊急財政対策事務事業見直し」では、830事業中、「廃止」「休止」「延期」「縮小」合わせて433事業と、全体の約52%と、区民生活にたいへんな影響を及ぼすものです。「改善」とされているもののなかでも、事実上の縮小である場合もあります。区民からは、「ここまで切り捨てるのか」といった声が続出しています。
たとえば、紙おむつ・おむつ代の支給制度に自己負担を導入することが打ち出されました。区民からは「収入は国民年金だけであり、週1回のデイサービス、月に1回のショートステイを利用するのがやっと。おむつを店舗で買うと高くてたいへん。それにもかかわらず、おむつ代がかかるとなると、私たち、老老介護の人間はなすすべも、お金もありません。特養ホームも満員で行き場もない人間から、今度はおむつ費用に手を出すなんてひどすぎる」との怒りが寄せられました。
保養所についても、箱根保養所の廃止をはじめ、区と契約している民間保養所の利用補助の廃止、さらには、区の国民健康保険、および後期高齢者医療保険の加入者にたいする三浦海岸のマホロバマインズや、那須高原のサンバレーなどのクアハウスの利用補助の廃止まで行い、保養所を利用している区民からは、「いつも利用しているのに、こんなところまで削るのか」といった声が上がっています。
区立保育園、学童保育クラブの保護者の負担金を引き上げれば、収入が伸び悩む子育て世帯に新たな負担を押し付けることになります。
こうした区民生活切り捨てと負担増はやめるべきです。
そこで、1問目は180億円削減のもとにある、区の財政判断の問題です。
今年度下期の景気動向は、円高などの不安要素があるものの、下期には7割の企業が利益の改善を見込み、東日本大震災後の状況からは脱しつつあります。区の中小企業の景況分析でも、大震災の影響で今年4〜6月は悪化したものの、今後の業況は上向くことを予想しています。一方、区民生活や区内中小企業、若者を中心とする雇用状況は依然、厳しさが続いています。
今後の経済状況は予断を許しませんが、東京都は9月に今後の税収の見通しを立てる予定で、他区も今後の財政見通しを含め、これから検討していくことにしています。他区は、これまでの行革計画を遂行しつつも、目黒区のように大幅な区民生活の切り捨て計画を進めようとしているところはありません。
このような状況の下で、なぜ、目黒区だけ判断を急ぐのでしょうか。区でも拙速な財政判断を避け、区民生活や経済状況などを見極めながら冷静な判断をすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
2問目は、総務省健全化判断比率こそ、財政判断の客観的基準ではないかということです。
総務省は全国の地方自治体財政をはかる指針として、実質赤字比率、連結実質赤字比率、実質公債費比率、将来負担比率の4つを「健全化判断比率」として設けています。それによると、目黒区は2010年度決算についても「健全」と判断されています。
財政力指数でいっても23区中5位であり、2009年度の指数は0.71、2010年度は0.74とアップしています。財政力が高いのは区税収入が高いことが大きな要因であり、2010年度決算でも、23区全体の納税者一人当たりの収入額は19万7千円にたいし、目黒区の納税者一人当たりの収入額は25万5千円であり、23区全体の約1.3倍と、自主財源は豊かです。
基金の状況を見ても、9月補正予算案では、財政調整基金の繰り入れをやめるとともに積み立てするなど、今年度末の基金残高の見通しは8億円増える見通しです。
起債関係でいっても、今後も公債費比率は下がる見込みで、区債の償還も着々とすすみ、2012年度には適正値まで下がる見込みで問題はありません。
なによりも、目黒区はずっと、一般会計だけでなく、特別会計も含め黒字決算を続けています。「財政危機」は偽りではないのか、伺います。
3問目は、180億円の削減計画の撤回、とりわけ、JR跡地の売却の検討はやめるべきだという点です。
この土地は公的住宅を整備する目的で、東京都、目黒区共同で32億円ずつ出して購入した区民全体の財産です。当初の購入目的は、区は高齢者福祉住宅など83戸、都は都営住宅101戸の整備を進めるということでしたが、都も区も従来の計画を転換してしまい、50年以上の定期借地を設定して大企業に跡地を貸し、民間マンション中心という大企業の利益優先の計画となっています。
区民にとって、特別養護老人ホームが足りない、保育園が足りない、公共住宅が足りない、防災公園を増やしてほしい、なんとかしてほしいという切実な要求があるにもかかわらず、定期借地で大企業に貸し出すという計画にしてしまった区のやり方は容認できませんが、それに輪をかけて、今回、180億円の経費削減の枠組みの中で、区民の財産を売り飛ばす検討を行うことは、最も区民の要求に背を向けるものです。
JR跡地は売却でも定期借地でもなく、購入当初の目的である住宅整備や、不足している福祉・子育て施設の建設など区民のために活用し、切実な区民要求にこたえるべきではありませんか、売却の検討はやめるべきだと思うが、おこたえください。
2点目は、西小山周辺の街づくりについてです。
西小山周辺の街づくりについては、西小山街づくり協議会で、そのあり方などについて議論されています。
対象区域は原町1丁目の約7.4ヘクタールで、昨年度に示された「構想たたき台」は、大型再開発による街づくり案になっていました。商店街周辺を商・住複合ゾーン、補助46号周辺を沿道ゾーン、立会川緑道に近い地域を低・中層の居住ゾーンと分け、4棟の超高層ビルの建設を含む市街地再開発事業を推進する構想です。
しかし、今年2月に協議会がおこなった街づくりアンケートや3月に開かれた協議会の中では、大型再開発の街づくりのあり方にたいし、疑問や反対の意見が続出しました。アンケートの回答の中では、「高層共同住宅化は生活権、財産権の侵害に当たり断固反対」「この地域は低層住宅中心の居住地域でいい」「ソフト面の検討がないように思われる」といった記述があります。私が直接、住民の方から聞いた意見でも、「当初は、協議会は再開発ありきで、異論について排除するような雰囲気がある」と、住民全体の合意を軽んじる傾向もあるようです。
今年度に入ってからは、こうした大型再開発に反対する住民の意見も考慮し、街づくりコンサルタントもかわり、方向性1として「再開発を前提にした街づくり」案のほかに、方向性2として「街区の特性に合わせた街づくり」、方向性3として「修復型の街づくり」の3つの方向が示されています。
西小山周辺は木造賃貸住宅をはじめ集合住宅が多く、商店街は貸店舗が増えていて、大型再開発で賃借人が追い出される可能性が大きい地域です。また、この地域は土地の権利関係が複雑で、多くの地権者が存在する区域もあれば、大地主が土地を持っていて借地権が設定されている区域もあります。
こうしたこの地域の特性を見ても、住民合意の街づくりを進めていくためにも、現在の街並みを維持した修復型の街づくりこそめざすべきであるが、おこたえください。
2問目は、超高層ビルは大地震に弱く、大型再開発は避けるべきではないかという点です。
西小山周辺は木造住宅密集地域であり、とりわけ震災に強い街づくりが住民の大きな願いです。しかし、東日本大震災の被害状況からいっても、大型再開発は震災に強い街づくりにはつながらないことが数多く指摘されています。
このほど、東京消防庁が、東日本大震災で都内の住宅や事業所の中でどの程度の被害があったか調査した結果、20%で家具が倒れたりずれ動いたりする被害があり、そのなかでも1階と2階では約17%であったのにたいし、11階以上では約47%にのぼっていることがわかりました。高い階ほど被害が出やすくなっています。実際、屋内にある家具や什器の移動や転倒が起き、建物のひび割れやエレベーターが止まり、閉じ込められたり長期にわたって動かなくなる、また、水道水がストップするなど被害が起きています。
日本建築学会は大地震発生前の3月4日に取り組みをまとめたなかで、東海、東南海、南海地震の3連動を想定した場合の超高層建物の揺れは、当初設計時に想定した地震動よりも相当長い時間大きく揺れる可能性が高いと指摘しています。超高層建物群が崩壊することはほとんどないとしているものの、長周期地震動は地域によってその特性が違い、また超高層建物がもつ構造特性にも差があるので、建物の揺れの度合いや損傷度は個々の建物ごとに異なった様相を呈し、長周期地震動は特定の固有周期をもつ超高層建物に対して大きな揺れを長時間もたらすとしています。
震源地から離れた大阪でも、3月11日の大地震では震度3の揺れであったにもかかわらず、大阪府の第2庁舎が入っている超高層ビルでは、長い揺れが10分近く続き、エレベーター全26基が緊急停止し、うち4基に男性5人が閉じこめられ、全員救助まで5時間近くもかかりました。
このような長周期地震動の影響が、高層ビルにはついてまわります。震災に強いまちづくりのためにも、超高層ビル建設型の再開発はふさわしくないと思いますが、いかがでしょうか。
3問目は、木造住宅密集地の西小山周辺こそ耐震化促進を中心に据えるべきだという点です。
西小山周辺でも戸建住宅や木造アパートなどの不燃化や耐震性向上のための建て替え、また、建て替えによる道路の拡幅などが一定、進んでいますが、不燃化をさらに広げ、2015年までに耐震化率90%を達成するとした区の耐震改修促進計画の目標達成に向けて、まだまだ不十分な到達点です。
原町1丁目の住民のなかには、家屋の建て替えや改修をしたいと思っても、経済的な理由で足が踏み出せないといった方が多く、再開発よりも耐震助成など行政の援助の拡充を求めている人も増えています。
住民の要望に基づき、西小山周辺の街づくりを大型再開発ではなく、耐震化の向上中心の震災対策中心にすすめていくためにも、現在の木造住宅の無料の耐震診断制度を維持しながら、耐震化や建て替え助成を拡充すべきではないか。お尋ねします。
3点目は、区財政の基盤強化のためには、地域循環型の経済への転換こそ求められている点についてです。
1問目は、区有施設の改築・改修計画についてです。
この間、目黒区は「財政危機」を口実に、実施計画に定めた、碑文谷体育館や区立東山小学校の改築、中目黒特養ホームの大規模改修、中央体育館の改修調査などの延期を打ち出しました。さらに、小中学校校舎や区民施設、福祉施設、体育施設の計画修繕や施設保守などについて、今年度予算と比べて10%縮小する計画まで打ち出しています。延期や縮小で震災から区民のいのちを守ることができるのかといった声も広がっています。
区有施設の改築・改修は、震災対策のみならず、区の中小業者にとっての仕事確保にもつながり、中小業者からも、「施設の改修を予定どおりおこない、区内業者の生活を支えてほしい」といった期待が高まっています。
実施計画などで定めた改築・改修および計画修繕などを延期すれば、建物の寿命が短くなるなど、かえって後年度の負担を増やすことになり、本格的に改築・改修計画を位置づけるべきです。区内中小業者の意見を聞き、知恵と経験を生かし、仕事確保をすすめるためにも、改めて長期的な改築・改修計画が必要だと思うが、いかがでしょうか。
2問目は、区内業者などの知恵を借り、福祉・防災型のまちづくりをすすめる点についてです。
東京都と23区は財政力が豊富で他区では基金残高が多いが、こういった東京の財政力が、2020年の再度の東京にオリンピック誘致を名目に、さらに大規模開発につぎ込まれようとしています。一方、都民の都財政に占める老人福祉費や教育費の割合は全国最下位にまで低下してしまい、都市部では財政は豊かだが住民一人あたりの社会保障は貧しい状況になっています。その結果、目黒でも特別養護老人ホームの待機者は今でも千人前後で推移しているような状況です。
東京でも目黒でも、これまで大型再開発中心の政治がおこなわれ、都民、区民の納めた多くの税収がつぎ込まれ、目黒では基金を大きく減らした要因にもなりました。大型再開発事業は大手ゼネコンやデベロッパーが喜ぶだけで、目黒区内にお金はまわらず、区内の中小業者もうるおわず、区内の雇用確保にもつながっていきません。
区内の中小業者、中小建設業の振興こそ大事ではないでしょうか。規模は小さいけれども、中小業者や建設業者はきちんと労働者を雇用しているところが多い。企業規模が大きくなるほど下請け業者に依存し、区内の労働者を直接雇用していないところが多い。零細業者では受注した工事を直接施工するのできちんと労働者を雇用しています。
したがって、特養ホーム建設などをはじめ、福祉型・防災型の公共事業を予定通り進め、区内業者へきちんと発注し、区内の雇用確保を促進していくことこそ、財政基盤をつくる基礎になります。区と区内業者、福祉事業者などが一堂に会した街づくりプロジェクトチームをつくり、こうした区政へと転換すべきだとおもうが、お聞きしまして、1回目の質問を終わります。