区立幼稚園廃園条例に対する反対討論
11月30日の本会議において行った森美彦区議が行った反対討論は以下の通りです。
日本共産党目黒区議団を代表して、区立幼稚園条例の一部を改正する条例に反対の立場から討論を行います。
役割も存在意義もある
反対理由の第1は、区立幼稚園の役割と存在意義です。
区立幼稚園は、質の高い保育内容が高く評価され、区内の幼児教育をさらに発展させる一翼を担っています。公的な教育施設条件のもと、子ども主体の遊びの中で、ひとり一人の成長発達が保障されています。保護者が日常的に幼稚園での活動に参加することで、親自身も学ぶ機会になっています。また、特別支援の必要な幼児の受け入れなど大切な役割も担っています。保護者から区議会に提出された陳情でも「歴史もあり、すばらしい幼稚園教育を行っているこれらの幼稚園を廃園にすることは、少子化政策に対してまったく逆行するものではないでしょうか」と訴えています。こうした保護者の思いを区は、どう受け止めているのでしょうか。
また、経済悪化の中で暮らしがますます大変になり、保育料などが低い区立幼稚園は、ますます必要とされています。いま、廃園を決めてしまったら「私立は入園料や保育料以外にもお金がかかり、経済的に私立に通うことは無理だ。もし区立に入れなければ、幼稚園はあきらめなければならない。」という切羽詰った保護者の声を切り捨てることになります。
区立幼稚園は、入園前の乳幼児を対象とした未就園児のクラス活動などを旺盛にやっていますが、この中で、相談など地域の子育て支援センターの役割も担っています。
こうした様々な役割は、私立幼稚園の補完という一言で済ますことはできません。区は、3つの園を残すとしていますが、2つが廃園されれば通園距離が広がり、通いきれなくなるなど地理的な格差も生じます。
区立幼稚園の存在意義を認めるのなら、幼児教育の機会均等を損なうような、からすもりとふどう幼稚園の廃園は撤回すべきです。
目黒区子ども条例に反する
第2の反対理由は、「目黒区子ども条例」に反することです。
目黒区は、全国に先駆け4番目に「子ども条例」を制定した自治体ですが、内容は、日本が批准した「国連子どもの権利条約」をしっかり踏まえていることが特徴です。基本の考え方には「こどもの幸せを第1に考えること」が掲げられています。「子どもの最善の利益」を保障することを何より大切にしなければなりません。子どもの権利保障と育ち学ぶ施設の整備及び運営を含めた施策の推進は一体のものです。子どもの成長・発達を保障する幼児教育施設に、区が責務を負っていることは当然です。
区立幼稚園が廃園にされることに対して、保護者から「区は、財政が厳しいことをことさら強調しているが、子どもの視点に立っていない」という実感のこもった意見が出されました。職員や経費の削減という行政の都合で、「行革」を理由に、区立幼稚園を廃園することは、「目黒区子ども条例」の立場から断じて許されるものではありません。
声聴かず一方的に押し付け
第3の反対理由は、区民の声を聴かず、パブリックコメント手続きも無視していることです。
区は、からすもり・ふどう2園を廃止する方針を、今年4月突然提案しました。行革行動計画には項目さえなかったものです。
その後、区がやると言っていた「説明会」を、該当する2園で行いましたが、保護者会の場を借りて行ったもので、意見も質問もする時間はほとんどありませんでした。
2園廃止に対する反対の運動と世論が急速に広がるなかで、区はあわてて7月から8月にかけ5つの区立幼稚園をはじめとする6回の説明会を開きました。しかし、区民の意見を真面目に聞く姿勢は最後まで見られませんでした。とりわけ、象徴的なのが8月に行った総合庁舎での説明会でした。まず、司会者が、「これまで質問したことのある人は質問を控えてください」と始まり、自由に質問できる雰囲気はなくなりました。区が設定した1時間半のうち45分も教育長が発言し、15分間の課長の説明を加えると、保護者が意見を言う時間は30分もなかったという、まさに区民の口封じとも言える対応をとりました。区立幼稚園の廃園がいかに道理のないものかは明白です。
区民の声を聴こうとしない姿勢は陳情にもあらわれました。6月議会に廃園反対の陳情が多数出されましたが、委員会審査が行われる前に、区の最高意思決定機関である政策決定会議で廃園方針を正式に決めてしまったことは、区民不在、保護者不在と言わざるをえません。また、議会軽視でもあり重大な問題です。
また、説明会では、区民の意見は行革計画改定の中で聞くと言いながら、意見募集の締め切りさえ待たずに、今議会に廃止条例を提案したことは、住民参加を進める立場にありながら、区として許されざる行為です。
納得が得られていない
最後に、保護者の納得が全く得られていない問題です。
区立幼稚園の在園児の減少いわゆる定員充足率を2園の廃園理由に挙げていますが、区民の出した陳情内容等では区への意見が相次いでいます。「定員充足率の資料の基礎数字に意図的な誤りがある」「目黒区でも3年保育を実施すれば、必ず充足率は上がる」「今後の幼児人口を微増というが急増と言えるのではないか」など区民の指摘に対する区の説明にも説得力がなく、区民の納得は得られないままです。
また、区立幼稚園の廃園をあたかも保育園の開設をするためと言っていますが、待機児解消と幼稚園の廃園とは全く別の問題です。保育園待機児童をゼロにすることは緊急課題であり、区立幼稚園を廃園にして転用するのではなく、認可保育園の増設は独自課題として推進すべきです。
以上、からすもり・ふどう幼稚園の廃園に重ねて反対し討論を終わります。