党の政策
2009年度決算に対する討論を石川恭子区議が行いました
反対討論
私は、日本共産党区議団を代表して、議案第49号、平成21年度目黒区一般会計決算の認定に反対する立場から討論を行います。
反対の第一の理由は、厳しい経済悪化の下で区民の生活に寄り添い支える姿勢にたったかどうかの問題です。
「構造改革」路線の下で、格差と貧困が広がり決算年のこの年は、「リーマンショック」の影響などで日本経済はとりわけ悪化し、2009年のGDP(国内総生産)は前年度比マイナス6.1%で、世界の中で、もっともひどい落ち込みとなりました。
こうした状況は、リーマンショックに先立つ10年間の日本経済のゆがみにあり、この10年間、主要7カ国の中で、ただ一カ国だけGDPが伸びていません。大企業の経常利益は、倍以上になる一方で、雇用者報酬は減っている「国民が貧しい国」になってしまいました。これは政府の大企業・大資産家優遇政治を進め国民生活を破壊してきた結果です。
リーマンショックから雇用は悪化の一途をたどり、非正規労働者の雇い止めは、2009年12月には24万人にも上りました。さらにその波は、正社員にも及び、自動車・電機などの大手製造業者20社だけで、半年間で8万7千人を削減するなど、大手大企業は率先して行いました。その後、学生の就職活動にも影響し、内定取り消しがあいつぎ、今春就職できなかった学生は前年を大幅に上回りました。
区民のくらしは厳しさをまし、東京都内中小企業の業況が過去最低を更新し、区内でも製造業、小売業、建設業など回復できずさらに悪化しました。役所の窓口に相談に来るホームレスの方は、一ヶ月の実数は800人台と急増し、この年新たに生活保護を開始した世帯は400にもなり、全体では2000世帯を超しました。目黒区が、構造改革路線を容認し区政運営を進めきたことは重大です。
こうした景気悪化の下で、区民や議会の声に押され作った緊急経済対策「くらしサポート21」は、中小企業融資あっせん制度の拡大など中小企業への支援や、認可外保育園への保育料補助など生活支援を行い一定の前進面はありまた。しかし、近年にない深刻な経済悪化による区民の暮らしぶりの悪化という事態に照らし合わせれば、不徹底なものでした。
共産党区議団は、父母負担軽減のために学校給食費の値下げ・リストラによって就学援助が必要な子どもに対しすぐに援助できる制度の拡充など子育て支援や、また介護の実態が深刻化する中で、不十分な介護保険を補うために区独自のホームヘルプ制度を設けることなど提案しました。しかし、「介護は介護保険内で」と検討する姿勢さえありませんでした。その一方で、前年生活保護世帯につけた5000円の特別支援金は廃止し、また在宅介護の相談支援の場である在宅介護支援センターの補助金を削減し、その結果、民間の3か所の支援センターは廃止に追い込まれました。
さらに今決算では、国民健康保険の資格証明書や短期保険証の留め置きによる保険証の取り上げが2000世帯にも上っていることが明らかになりました。保険証の取り上げは、医療を受けることができない事態を招き、許されるものではありません。
以上述べたように、区は国の社会保障削減に迎合することによって、区民のくらし、介護や健康を守ることについては十分とはいえませんでした。
第二の理由は、行革計画の下で進められている、職員削減、民営化・指定管理の問題についてです。
行革計画は経費削減の下で職員を削減し、民営化を推し進めるものです。
職員削減は、すでに08年4月には5年間で282人となり、さらに、2009年から始まった行革計画では、3年間で140人となっています。現在、非常勤職員は1140人で、正規職員のおよそ半分になっており、区は自ら不安定雇用労働者を作っています。これは、行政内部に専門性が蓄積されず行政の空洞化をもたらすものです。
決算年のこの年、地域の最前線で身近な区民の保健福祉の相談窓口であった、直営の保健福祉サービス事務所を撤退させました。今年の夏、行方不明高齢者が問題となりましたが、サービス事務所の役割がますます地域の中で求められている時に、現場からの撤退は地域福祉を守る立場とは言えません。
さらに、職員削減による学校用務や学童擁護など非常勤化が進められました。保育園や学校職員の非常勤化は、安定的な職務の確保を後退させ、行事など職員集団で支える機能を低下させるものです。
そして、これだけでは足りないと進めているのが委託による民営化や、指定管理の問題です。
すでに学校給食の民間委託が進められてきましたが、この年すべての学校での委託が終了し、さらに保育園給食の委託の検討が始まりました。委託した自治体では、メニューの低下や偽装請負などが指摘されています。
保育園の給食は、離乳食、アレルギー食、子どもの体調に合わせた食事など多様なメニューで、全国的にも質の高い給食は委託では担保できないことは明らかで、保護者からは委託をしないで欲しいと陳情書が議会に提出されました。未来を担う子どもの分野で、経費削減の民営化が進められていることは厳しく指摘しなければなりません。すでに委託された図書館のカウンター業務や社会教育館の窓口では、度重なる職員の交代と区民からの苦情が数多く寄せられています。
次に、今決算議会でも指摘された、勤労福祉会館でアーチェリーによる死亡事故が起きた問題です。現在、遺族は指定管理者であるアクティオを含む3者を相手に訴訟を行っています。区は、当事者たちの責任であり、管理上の問題はなかったという立場です。しかし、資格や研修を受けた者であっても、ましてや未成年の場合、危険を伴うスポーツの場に監視する職員がいなかったことは、施設管理上の重大な問題です。指定管理者であるアクティオと区の責任は逃れられません。
区立施設で起こったことは、当然公的責任が問われるものです。経費削減の下での民営化は公的責任をあいまいにし、安全やサービスの内容を低下させるものです。安易な民営化はやめ、障害者施設や、学童・児童館、保育園や社会教育会館などこれ以上の指定管理の拡大を行わず、総点検をすることです。
第三の理由は、JR跡地の問題です。
8500㎡あるJR跡地は、公的住宅を整備する目的で都と区がそれぞれ32億円出し購入した土地であり、区民の財産です。ところが区は、政策転換し「民間活力の活用」の名の下で、50年から70年の定期借地権を設定し、大企業に貸し出し民間主導による整備を行うというものです。当初区の目標であった83戸の公的住宅は、30戸に大きく後退し、公的住宅よりも豪華なマンション等大企業のもうけを優先する計画が推し進められてきました。目黒区は、23区の中で最も公的住宅が少なく、「家賃が高い。公的住宅作ってほしい」など切実な声が上がっています。区民の願いにこたえることこそ優先課題で、自治体の仕事は、貴重な財産である公共用地を民間企業に提供することではありません。
第四の理由は、財政問題です。
この年、08年度と比較して100億円減収しました。しかし、減収の中身をみると40億円は一人の大金持ちの分離譲渡分の減収で、そもそも臨時的なものでした。50億円余りの特別区交付金の減収についても、ミニバブルを通過した2009年特別交付金は、2004年度規模に戻ったというものです。
また、経常収支比率95.3%を問題としていますが、比率を引き上げた容器包装プラスチックの資源回収や子どもの医療費助成は区民要求によって支えられた施策であり重要なものです。
経常経費の中には、23区の中で最も高い公債費が入っていますが、これは、区自身大規模公園などの償還が進むので下がるとしています。これをもって財政を危機だというものではありません。
あくまでも自治体の役割は「住民の福祉の向上」であり、経常経費を下げることを理由に、サービスを削り区民の要求を抑えるべきではありません。
区は、財源確保のために、区内業者の育成や、仕事の確保など区税収入を引き上げる努力を行い、さらに国に対しては、きちんと社会保障制度の確立を、都に対しては、特別交付金の配分率の引き上げを、区長会で強く働きかけることです。
さらに、区民の暮らしを守るためにも不要不急の都市整備事業など、実施計画の優先順位の見直しを行うことです。かつて、計画にもなかった庁舎移転や、大型箱モノが区財政を圧迫してきましたが、JR跡地や、中目黒周辺・目黒駅周辺整備については大型開発を行わないことです。
最後、一点申し上げます。
区は、この年、子ども条例に基づき子ども総合計画を策定し、この下で、再開発ビルの3階に区立保育園を開園しました。都内でも初めての庭もない・ベランダもない・窓も開かない保育園は、子どもの最善の利益を保障する保育園とは言えません。さらに、区自らが設けた保育所建設標準仕様書にも反するもので、今まで築き上げてきた保育を大きく後退させるものです。
現在、民主党政権の下で、幼保一体の子育て新システムが検討されていますが、この一番の狙いは、現行公的保育制度を解体することにあります。目黒区は、全国でも誇れる質の高い保育を行ってきました。これを堅持し発展させることを強く要望するものです。
以上、決算の認定に対する反対の理由を述べましたが、日本共産党区議団は、区民とともに、暮らしと命を守るために全力を尽くすことを表明し討論を終ります。 以上