党の政策
新年度予算案の討論を岩崎議員がおこないました
目黒区議会は3月30日、本会議を開き、新年度予算案の討論・採決を終え閉会しました。日本共産党の岩崎ふみひろ議員がおこなった反対討論の内容は以下のとおりです。
私は日本共産党目黒区議団を代表して、議案第16号、平成22年度目黒区一般会計予算案に反対の立場から討論を行います。
一昨年秋の「リーマン・ショック」以降の日本の経済危機は、世界のなかでもとくに深刻なものです。日本の2009年のGDP=国内総生産は前年比マイナス6.1%で、もっともひどい落ち込みであり、国民の暮らしにとって失業、賃下げ、倒産など、どの指標をとっても史上最悪の数字が更新されています。経済危機から国民の暮らしを守るために、国も地方自治体も最大限の力をつくすべきです。
確かに、目黒区の当初予算案のなかには、特別養護老人ホームの整備や応急福祉資金貸付金の拡充、住宅リフォーム助成の増額、高齢者見守りネットワークの拡充、路上生活者などの緊急用宿泊施設の確保、認証保育所等保育料助成など、わが党がかねてから議会で取り上げ要求してきたものも含まれています。また、緊急経済対策である、くらしサポートの継続、中小企業向けの無利子融資なども継続されます。
こういった、暮らし支援のための施策自体は前進面であり評価できるものです。しかし、当初予算案は一つ一つの個別の施策に対する可否というだけにとどまらず、予算案を編成する区長の考え方など予算案を貫く全体を評価しなければなりません。そういう点から見ると、わが党として賛成することはできない数々の問題点があることは否めず、以下、反対の理由を述べます。
まず第1は、緊急経済対策についてです。先に述べたように、くらしサポートの継続自体を否定するものではありません。しかし、現在の区民のくらしのたいへんさ、切実な要求を見れば、くらしや営業を支える経済的な援助こそ必要です。認可保育所に子どもを預けることのできない世帯に対する緊急生活支援は打ち切るべきではなく、継続が求められています。さらに、中小企業、とりわけ製造業の営業を支えるためにも、緊急の対策として、仕事がなく倒産や廃業に追い込まれている町工場への家賃補助、機械のリース代補助など、固定費補助にとりくむことがどうしても必要です。賃貸住宅で暮らす高齢者への家賃補助の拡充、低所得で十分な介護を受けられない高齢者への補助の拡充なども必要です。
経済危機と構造改革路線の影響で貧富と格差が広がり、仕事も住まいも失う人が続出している状況の下で、区の姿勢と施策で不十分なのは、憲法25条で定められている生存権の保障という観点をくらし対策に位置づけ、とりわけぎりぎりの生活を強いられている低所得者層への支援をどう強化していくかという点です。
また、緊急経済対策本部を立ち上げたことは、わが党が要求し続けてきたことであり前進面だと思っていますが、この対策本部で現在の経済悪化に対する区民の生活実態をどう評価しているのか、くらしサポート21の効果はどうであったのか、区民にも議会にも明らかにされず、区が自ら区民生活の実態をつかむ努力も伝わってきません。史上空前の経済悪化だといわれているのですから、少なくても区民生活の抜本的な調査は必要です。
第二は、行政の仕事の民営化と正規職員削減の問題です。「効率化」「コスト削減」が優先される民営化では、サービスの質の低下をもたらすことになり、福祉を増進させるという自治体本来の目的を果たすことはできません。そもそも、安易な民営化は行政の責任の放棄です。
とくに現在、深刻になっているのは、公の仕事を担う指定管理者や民間事業者の中で、低賃金や劣悪な労働条件のもとで働かされる「官製ワーキングプア」ともいわれる事態が進んでいることです。わが党はこれまで、この問題を何度も議会で取り上げてきました。
区立の特養ホームなど福祉施設の指定管理者である社会福祉事業団では、「賃金が低く長時間労働のため、契約職員がやめてしまう。慢性的な人手不足だ」との声が上がっています。区民センターを管理する指定管理者で働く人からも、「3年働いても時給はたった10円しかあがらない」との声が寄せられました。
効率化やコスト削減が追求されれば、当然、人件費が抑制されることになり、民間事業者で働く人たちに低賃金などのしわ寄せが押し付けられることになります。公共サービスの場で働く人たちの待遇が劣悪なまま放置されれば、健康や生活さえ破壊され、ひいては、公共サービスの質そのものが低下してしまうことになります。
さらに、区立保育園の給食調理の民間委託が、厚生労働省の通達によって、偽装請負になりかねない問題があることも明らかになりました。偽装請負を避けようとすれば、区の職員である栄養士や保育士が、請負業者である調理師にたいし、直接、指揮・指導することはできません。これでは、乳児や幼児にたいし質の高い給食を保障することはできません。給食調理の民営化は、かえって非合理的な運営を現場に押し付けることになるのではないでしょうか。
今後、区は社会教育館や学童保育クラブ、区立保育園などの指定管理者制度の導入や民間委託をすすめようとしていますが、今、計画している民営化は凍結し、住民の声を聞くべきです。そして、現在の指定管理者や民間委託業者にたいしては、そこで働いている人たちの実態調査をきちんと行い、労働者の賃金や待遇改善のための仕組みをつくることを要望します。
また、正規職員を減らして非正規職員を増やしていく計画についても、区の直接雇用において不安定雇用者を大量に生み出すことになり、こうした計画も見直すべきです。
第3は、区の施設使用料の引き上げ計画など、相変わらずの「受益者負担増」を進めようとしていることです。
区の施設使用料の引き上げ計画にたいし、区民から「なぜ今、くらしもたいへんなのに引き上げなのか」といった声が出されています。とくに、高齢者団体や子育て団体など、区の施設を午前、午後に使うことの多い区民から、疑問の声が集中しています。
さらに、基本計画でも打ち出している「地域コミュニティーづくり」の観点からの検討がなされていません。地域活動や区政を支える団体が施設を使用することが、単に「受益者負担」とはいえないはずです。地域のコミュニティーを発展させる上で、施設使用料を引き上げることが障害になるおそれもあります。
区は「区民にたいして十分な説明をおこなう」としていますが、パブリックコメント制度の適用除外にあたるとして、区民の意見を聴取するつもりはないとしています。しかし、実施機関が必要と認めるときは、この限りではありません。区民への影響を考えれば、パブリックコメント手続きに基づいて意見を聴取すべき問題ではないでしょうか。区民や関係団体の意見を聞き、施設使用料の引き上げ計画は撤回すべきです。
第4は、「地方分権」といいながら、保育所や福祉施設などの国の最低基準を撤廃する計画に賛成している点です。
いま、民主党政権から示されている地域主権一括法案を見ても、保育、福祉施設にとどまらず、公共住宅の整備基準の見直し、道路整備の技術的な基準の見直しなど、原則として自治体任せにしてしまおうという内容です。ただでさえ低い保育所の最低基準を緩和してしまえば、詰め込み保育がいっそう進んでしまいます。とくに、都市部では待機児解消を優先するために、保育所の設置基準の緩和をすすめていく方向ですが、待機児解消を口実になりふりかまわず条件の悪い保育所の設置まで認めてしまえば、子どもの成長・発達に大きな影響が出かねません。また、群馬県の高齢者施設「たまゆら」の事件は、施設基準の緩和がどれほど利用者の命を危険にさらすことになるのかを示しています。
公共サービスが地域によって格差が生まれてしまうことについて、あたかも自治体の首長を選んだ住民が悪いかのような総務大臣の発言は論外です。
このように、現在、政府がめざす「地方分権」は、「地方への裁量が拡大される、財源も手厚く地方に措置される。だからいいではないか」という一般論ではすまない危険な内容です。わが党は、国基準の最低基準を拡充させながら、地方への財源措置についても拡充させていく方向が真の地方分権だと考えます。区長の認識では「福祉を増進させる」という地方自治体本来の役目は果たせません。
第5は、枠配分方式の予算編成の中で、一律3%カットという方針を打ち出したことです。区は、経済悪化の影響を受けて歳入が減り、厳しい財政運営を強いられるのだから、それに見合って歳出の枠をカットするのは当然だという立場です。しかし、行政から何らかの形で支援を受けざるをえない生活困窮者への施策を含め、削減の見直しとすることには賛成できません。当初予算案でも、1人親家庭ホームヘルプサービスが31%カット、高齢者生活支援ヘルパー47%、高齢者世帯等住み替え家賃助成19%カットなど、支援を必要とする区民への施策もばっさりと削られました。福祉や子育てなど区民生活と直結している予算の一律カットは、いくら財政が厳しいとはいえ行うべきではありません。
そのほか、予算審議で明らかになった問題点など指摘します。
まず、公益通報者保護制度の運用の件です。今回、条例に基づいて通報した区有施設で働いている人に対し、人事異動をさせようとしたり、オブザーバーで参加してきた会議に出席しないようにと指示を出すなど、通報者が不利益な取り扱いを受けている実態について、わが党の議員が質疑しました。
この制度は、職員倫理制度、要望記録制度とともに、前区政のもとで起きた収賄事件の反省にたって、区長自身が「区政の透明性向上のための3制度」といって鳴り物入りで導入した制度です。それにもかかわらず、条例の趣旨に反して、通報者に対して報復とも受け取れるような行為を行政自らがおこなうとは、条例に対する無知、無理解どころか、反省など口先だけだといわざるをえません。
さらに、住民の声に耳を傾ける区政とは、程遠い現状も明らかになりました。目黒本町ふれあい工房の跡地利用の問題は、いくら区が福祉施設の設置計画という区民の福祉向上につながる利用の仕方を住民に示したとしても、木造住宅がひしめき、道路も狭く空き地が少ない、防災上特に対策が求められる地域の住民の声をないがしろにする態度は、住民に行政への不信感を膨らませるだけです。改定された基本計画でも住民自治の精神が引き続いて据えられています。区が本当に住民自治を大切にし、区民との協働を発展させようと思っているのであれば、住民の要望に耳を傾けるべきです。
認可外保育園の調査の質疑に対する答弁も納得できるものではありません。認可外保育園での死亡事故が増えているもとで、世田谷区では保育状況をチェックするために、認証保育園を対象に5回も調査を実施しているのに比べて、区が「人手がない。大丈夫だ」との姿勢を示していることは、子どものいのちと安全をないがしろにするものです。
今回、教育委員会は改めて区立中学校の統廃合をすすめることを言明しました。しかし、新たな統廃合の前に、2中、5中、6中の統廃合がどうだったのか、統廃合された中央中の教育現場は現状のままでいいのか、通学区域が広くなったことによる生徒への影響はないのか、子ども、保護者、地域のかかわりはどうなのか、検証をすることこそ優先すべきです。また、国や東京都の少人数学級への取り組みも進むことが予想されます。そのための教室の確保など、単純に統廃合をすすめていい状況とはいえなくなっています。統廃合計画は凍結すべきです。
最後に、中目黒駅前や目黒駅前の整備が計画に上っています。多額の税金を投入することになる大型再開発型の整備計画はやめ、生活道路の整備など、生活密着型の整備にすべきです。あるいは、財政的な状況も考え、整備計画そのものを凍結し、区民の生活を支える福祉施策などを優先して進めるべきです。
日本共産党目黒区議団は引き続き経済悪化のもとで苦しめられている区民の暮らし、営業を守り、支えるために奮闘することを申し上げ、討論を終わります。