党の政策
2008年度決算の認定への反対討論(9/30森美彦議員)
私は日本共産党目黒区議団を代表して、議案第58号、平成20年度目黒区一般会計決算の認定に反対の立場から討論を行います。
第1は、この年深刻化した区民生活を支える立場に立ち切れたのかどうかという問題です。
決算の年は、サブプライムローンの破たんに続く原油や食料品の高騰、アメリカ発の世界的な金融危機、構造改革路線の破たんもあいまって失業者が急増し、所得の減少や家計への負担増、中小企業の倒産・廃業など暮らしがたいへんな影響を受けた年でした。区民からは、「仕事が全くこなくなった。廃業するしかない」「職を探してもみつからない。生活保護に頼るしかない」といった悲鳴が聞かれました。
どの年にもまして、どう区民の生活を守るのか、地方自治体としての真価が問われた年でした。しかし、不徹底さ不十分さがあったと言わざるをえません。
確かに区長は当初予算では、暮らしのセーフティーネットが必要だといって、わが党が求めてきた私立幼稚園入園料補助の引き上げや、介護保険居宅サービスなどの利用者負担軽減策などを盛り込みました。また、昨年後半期の急激な経済悪化に対し、わが党が求めてきた緊急経済対策本部を立ち上げ、「くらしサポート21」として、中小企業の無利子融資、認証保育園の保育料助成、公共工事の発注拡大、特養ホームの契約職員の正規職員化など、くらしや営業支援策をとってきました。そのことを否定するものではありません。
しかし、23区の中には、学校給食の食材費の補助を行い、子育て世代の負担を抑える区もあるなかで、目黒区だけが給食費を2年連続して値上げしました。また、第2次行革計画のなかで「金銭給付の見直し」などといって、生活保護世帯の見舞金の廃止、高齢者の福祉電話代補助の廃止、福祉タクシー券支給の制限、学童保育クラブの有料化など、くらし支援とは逆行することを推進しながら全く見直しもしませんでした。
雇用対策についても、雇用状況が深刻化し国も自治体も挙げて失業対策が求められているときに、基本的には国や都の対応だといって、ワークサポートめぐろでの就労支援の域を出ませんでした。
また、不備な介護保険制度の下で、軽度者や同居家族がいる被介護者のホームヘルプサービスの取り上げが相次いでいるという問題があるにもかかわらず、区の独自策がたいへん不十分だという実態も残されています。
このように、区民の深刻な生活実態や他区の状況から見ても、区の対策は不十分であることは明らかです。
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第2は、民営化の問題です。
くらしの問題とともに、行政の仕事を民間に丸投げすることも大問題になっています。
サービス低下はまねかないと言いながら、公の施設を民営化した後の質の検証は、事業者が自分で選んだ第3者評価に委ねられているに過ぎません。
この年、はじめて指定管理者制度による公設民営の目黒保育園がスタートしましたが、初年度だけでも栄養士を含め7人が次々に離職し、区は対応に迫られるという問題が起こりました。
また、5地区の保健福祉サービス事務所は、廃止され全面的に民間委託されました。この委託については、大多数の職員から強い反対の声が出され、介護事業者等から不安の声があがったまま強行したものです。
こうした区立保育園民営化や保健福祉サービス事務所廃止などの強行によって、5年間の集中改革期間に削減した職員数は、265人の目標を上回る282人に上りました。
さらに、青木区政は、今後の「行政改革」の中心を職員削減に置き、「中長期の定数管理」と称して、10年間に500人の常勤職員の削減計画を打ち出しています。この計画を推進するために、区立保育園や体育館にとどまらず、これまで直営ですすめてきた児童館や社会教育館などの仕事を大胆に民営化しようとしています。自治体としての公的責任を放棄するものであり許されません。「中長期の定数管理」計画そのものを直ちに凍結し再検討すべきです。
すでに指定管理者として民営化されている公の施設に対する委託料の削減も問題になっています。区立の特養ホームでは、運営委託料の削減によって人件費がカットされ、労働条件の悪化で離職者が相次ぎました。その結果、人手がないために一日中パジャマを着たままにさせ、食事のときに1人の職員が3人を相手に食事介護をするという事態さえ招きました。行過ぎた人件費カットがサービス低下と労働強化を招き、区は、契約職員を正規職員にする対策を打ちださざるを得ませんでした。
また、この年、五本木小プールの委託企業が最低賃金以下で求人していたことが明らかになりました。このような企業で区民の安全が保てるのかはたいへん疑問です。
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第3は、財政運営の問題です。
これまで区は、財政状況が好転しているときには、将来の改築改修経費などに備えなければならないからと言って基金を積み増し、不況になればなったで、区税収入がいっそう落ち込んでいくからたいへんだといいます。これではいつになったら区民のために財源を振り向けるのか、と思うのであります。
とりわけ決算年は、庶民増税による区民税の影響額が27億円にのぼることが明らかになりました。ところが、庶民増税による増収分が、経済危機の中で困窮する区民のためではなく、基金への積立最優先に使われたことは問題です。この年の区民生活の危機的状況を考えれば、暮らしを守ることこそ最優先にした財政運営が求められていたことは明らかです。たとえば、福祉作業所の急騰する材料費等への補助、すくすくのびのび園の利用料無料化、非課税一人暮らし高齢者の福祉電話代補助の復活など、基金への積み立てを否定するのではありませんが、この年積み増した普通会計64億円の基金の一部を活用すれば、緊急課題に対応することはもっとできたと考えます。
次に、起債残高の問題です。目黒区の場合、100%財源の手当てのある大公園を除外すると、起債残高はずっと少なくなります。財源の手当てのない起債残高約290億円のうち、大型ハコモノという批判が区民から上がったパーシモンホールと新庁舎の起債が1位2位を占め、財政を圧迫しています。
また、完成間近のアトラスタワーを含む上目黒1丁目再開発では、事業計画ベースで77億円の巨額な税金が投入されています。区長は、国と財調で100%財源の手当てがあると言いますが、もともとは住民の税金であり起債残高を増やしています。中目黒駅周辺など新たな開発の動きが出ていますが、多額の起債を伴い巨額な税金を投じる開発は行うべきではありません。
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第4は、住民参加の問題です。
目黒区は、基本構想で住民自治を確立することを掲げ、その実現ために住民参加システムを構築することを課題にしています。しかし決算特別委員会の質疑を通じて改めて十分な説明責任さえ果たされていない問題が出されました。
校庭の人工芝問題は、「区長公約だから」と強引に進めたことが根底にあります。校庭を使用する子ども、教師、保護者、学校関係者、地域の住民の意向を十分に反映しようとする姿勢が見られませんでした。
中根小学校区の学童保育増設問題においても、保護者の区への不信感を広げ信頼を損なう結果となりました。この問題でも区が保護者と充分話し合っていないという問題が露呈しました。
区は、区民と行政の協働の推進を掲げていますが、住民自治を確立するという立場とは程遠いことが、これら2つの事例からも浮き彫りになりました。
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第5は、教育の問題です。
その1は、興津学園の廃止問題です。興津学園は、本来の目的である健康改善も、教育水準の高さも、だれもが認めてきました。興津学園を存続させてほしいという声は学園関係者や広い区民から共通して出されていました。こうした声にも背を向けて財政的事情で廃園したことは許されないことでした。
その2は、就学援助の問題です。
目黒区は、この年、学校教育費保護者負担額を前年度より中学生は6000円以上増やしました。さらに、制服代、運動靴、部活代、卒業アルバム代などが加わると保護者負担は増えるばかりです。
こうした中で、就学援助制度は経済的支援として重要な役割を持っています。ところが、対象者の所得限度額が低く、失業や病気などにより緊急に援助が必要な場合は使えないという問題があります。この改善を求めたところ、区は、急に経済的支援が必要になった場合は対象外だと冷たい答弁に終始しました。
その3は、30人学級の問題です。
ゆきとどいた教育のために、わが党は長年30人学級実施を要望してきました。目黒区教委は、「都に対して働きかけるつもりはない」と相変わらずの答弁でした。46道府県がすでに実施し、その評価もたいへん高いのですから、いつまでも「都がやると言えばやる」などと言っていないで、東京都に強く働きかけるべきであります。
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第6は、国際平和協力センターとプルトニウムの問題です。
中目黒2丁目にある中目黒防衛技術研究所は、市ヶ谷駐屯地から統合幕僚学校と自衛隊幹部学校が移駐してきて、自衛隊の基地・駐屯地と位置付けられました。統合幕僚学校の下におかれる国際平和協力センターの新設は、海外派兵の強化のためであり、研究センターと研究棟の改築は、海外派兵の実践と戦闘のための基地機能をさらに強化するものです。国際平和協力センター、研究センター、研究棟は、どれも違憲の施設です。
国際平和協力センターの建設中止を防衛省に求めるよう質問すると、区長は、「直ちに中止を求める状況下にない」と答弁しました。平和憲法を擁護し、核兵器のない平和都市であるという宣言の立場に反するものです。
また、この敷地内にプルトニウムが、住民にも目黒区にも知らせないまま、20年以上も保管されてきたことは問題です。自衛隊基地という平和利用と正反対のところが保管していること自体が問題なのであり、いくら安全に保管していると言われても住民の納得は得られず、不安が広がるのは当然です。
目黒区議会は、23年前に、防衛庁長官あてに「…核物質の取り扱いは、原子力基本法の基本方針通り行い、区民の不安を取り除くよう強く求める」という意見書を提出しています。そもそも、原子力規制法など国内法によっても、核不拡散条約によっても、核物質は平和利用以外は持ってはいけないのです。国に対し区としてプルトニウムの撤去を粘り強く求めるべきであります。
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最後に、日本共産党区議団は、区民とともに暮らしと命を守る要求実現に全力を尽くす決意を表明して、討論を終わります。