党の政策
2009年度一般会計予算に対する反対討論
09.3反対討論
私は、日本共産党目黒区議団を代表して、議案第18号、平成21年度目黒区一般会計予算に反対の立場から討論を行います。
深刻な経済危機、雇用危機が区民の生活に重大な影響を及ぼしている中で、新年度予算は従来の「セーフティネット」の枠を超え区民の生活・営業支援に全力を挙げることこそ求められています。第一回定例議会が始まってからも、帝国データーバンクの調査では、2月の倒産件数が1131件で9ヶ月連続の前年同月比増加となり、景気動向指数は、4ヶ月連続で過去最低を更新し、国内景気は一段と後退していることが発表されました。派遣業界団体の調査では年度末には40万人を超す失業者が予想されています。新卒者の就職内定取り消しが広がり、今春闘では、賃上げゼロ、定期昇給の凍結など大企業などの賃金抑制も強まっています。1月生活保護世帯は116万世帯となり過去最高となりました。このような深刻な事態が進んでいるにもかかわらず新年度予算は区民の生活・雇用再建の願いに答えるものとはなっていないのが特徴です。
第一は緊急経済対策の問題です。
昨年12月目黒区は、区長を本部長とする緊急経済対策本部を設置し、厳しい経済状況の下で、中小企業の資金繰りの悪化、雇用情勢の悪化、低所得者の家計圧迫など厳しい状況に対応するとして、10億円の緊急経済対策を打ち出しました。しかしその内容は、前年度からの継続事業や既に決められていた特別養護老人ホーム職員の正規化、学童保育クラブ定数増による非常勤職員の増員やこれまで削減してきた預託金の一部復活など、新たな対策とは言えないものが5割近くも占められており、大変消極的な対策だと言わざるを得ません。
その後の緊急対策追加分を見ても、区民のくらしを支えるための積極性は見られません。緊急経済対策本部が区民の実態を充分つかむことや、国や東京都の緊急対策予算の積極的な活用においてもその検討が全く不十分であったと言わざるを得ません。
中小企業融資については無利子融資の創設という前進面はあるものの、景気の影響を深刻に受けている零細業者が切実に求めている区の直接融資に対してサラ金業者になるようなものだと拒否する姿勢は、資金繰りに苦しむ業者の実態をまったく見ようとしないものです。
雇用対策についても、他区と遜色ないと言っていますが、切実な課題となっている介護施設の職員確保を結び付け、資格取得受講料や人件費補助を行っている他区の努力とは大変な違いがあります。
とりわけ、国や都が打ち出した緊急雇用対策を活用した独自の工夫もありません。くらしを支えるための支援策については、まずこれ以上の負担増を押し付けない立場が必要でした。ところが、住民税のフラット化の経過措置の廃止に伴い、低所得者の負担増が予測されながら軽減対策をまったく行わず、所得の低い世帯で国保料が値上げされました。学童保育クラブの有料化に伴う経過措置の終了によって保育料の引き上げを行いました。さらに軽減策をとるどころか、学校給食費を2年連続引き上げて当然という姿勢は、値上げ回避のために努力している他区と比べても重大な問題です。
第二は、保育所待機児童の問題です。
経済悪化が深刻な中で、収入の不安定な子育て世代を経済的な困難が襲い、保育所入所が切実な要求となっています。目黒区では4月からの認可保育園528名の入所可能数に対し、1003名の入園希望者が殺到しました。このまま放置すれば、昨年以上の待機児が生まれる事態となります。待機児の解消についてはわが党は、以前から公立保育園の増設を訴え、さらに緊急対策として、公有地や空いている建物を利用した仮設保育園を提案しました。区は今年度誘致した2つの認証保育園と認証保育園の定員増で解消するとしていますが、今議会中には緊急の対策は示しませんでした。これでは、子育てに対する区の責任を果たしているとはいえません。
第三は、高齢者の介護の問題です。
度重なる介護保険の改定で、区民からは「家事ヘルパーが使えない」「介護保険が使えない分の自己負担でたいへん」「老老介護で助けてほしい」などの声が上がり、介護の充実は重要な課題になっています。わが党は、この現状を繰り返し取上げ、区独自のホームヘルプサービスの抜本的な充実を提案してきました。今回、区は、独自ヘルパー制度の対象を75歳以上から65歳以上に拡大するなど部分的改善をおこなったものの、「介護は介護保険内で」との姿勢を変えず、区民が求めている介護への支援に、応えるものになっていません。今回、新たな介護保険改定で、介護職員処遇改善のための報酬引き上げが行われましたが、まともな給与アップにはつながらないと問題になっています。区は、区立特養ホームでの正規職員化は予算に盛り込みましたが、民間の特養ホームなどの介護施設職員への労働条件改善のための補助も行うべきでした。
在宅を支える小規模多機能型居宅介護や認知症グループホームは、この間何度も予算を付けながら整備されていません。民間任せにするのではなく、区有地なども積極的に活用し整備すべきです。
第四は、行革計画と民営化についての問題です。
これまで「官から民へ」という国の方針にならい区は、業務の委託や指定管理者による民営化を十分な検討もなく、住民の声を十分に聞くこともなく拙速に推し進めてきました。わが党は、民営化による経費削減の押し付けはサービスの質の低下や、公の仕事を担う民間事業者の中で、低賃金や劣悪な労働条件の下で働かされる官製ワーキングプアが生まれることを指摘してきました。実際区が業務委託した、中央地区プールの管理を請け負っている民間業者が、プールの監視員を最低賃金以下で募集していた問題をわが党は、予算特別委員会で取り上げましたが、この問題は従来からのわが党の指摘が的を射ていたことを示しました。新年度から、介護や医療関係者などの批判がある中で、地区保健福祉サービス事務所を撤退させ、民営化による新包括支援センターが設置されます。これでは、保健福祉に関わる子どもからお年寄りまでの総合相談が大きく後退することは明らかです。行革計画は、さらに指定管理者を使った民営化や、業務委託を進めようと児童館、学童保育、保育園給食の業務委託を進め、さらに社会教育委員の会議での検討もなしに社会教育館に指定管理者制度を導入しようとしています。さらなる民営化をすることは容認できません。
その他二点述べます。
ひとつは、32億円で購入した大切な区有財産であるJR跡地の問題です。現在の経済状況の下で、不動産業者の倒産が増え、開発計画の見直し、とん挫など破綻がいたるところで見られます。このような状況下でJR跡地を、50年間の定期借地権を設定して民間業者にゆだねるやり方はあまりにも先の見えない無責任なやり方です。JR跡地は定期借地権方式をやめ、高齢者福祉住宅などの拡充をはじめ、区民の要望が強い福祉施設建設などを中心とした計画に抜本的に切り替えるよう強く求めます。
もうひとつは、子ども総合計画策定についてです。
子ども総合計画は、目黒子ども条例に基づき、子どもの権利を尊重し、子どもたちが元気に過ごすことのできるまちづくりのための計画です。計画の策定については、こどもの参加を含め子どもに関わる関係者や専門家、住民が参加した下で十分な論議を重ねつくりあげていくものです。策定にあたり民間事業者に委託するとしていますが、これは行政の責任を放棄しまる投げするものです。業者への委託は止め、子ども条例策定の時のように住民参加の検討組織をつくるべきです。
最後に、区長の姿勢についての問題です。
アメリカ発の金融危機による、100年に1度の危機といわれる日本の今日の事態は、「構造改革」路線の下でつくられてきたものです。
労働法制の規制緩和によって、非正規労働者を急増させ、「派遣切り」「期間工切り」を可能にする社会を作り、雇用悪化と景気悪化の悪循環をつくりだしています。また極端な「外需頼み」アメリカに依存する脆弱な経済をつくり、輸出大企業を優遇し、労働者の賃金を引き下げ、庶民増税と社会保障の引き下げを行ってきました。さらに、証券市場を「外資頼み」の投機的市場にしてしまいました。こうした事態によって、アメリカ発の金融危機という「津波」から、国民のくらしと経済を守る「防波堤」を崩してしまったのです。
ところが区長は、構造改革が格差の拡大という負の部分があるといいながらも、社会の持続的発展に必要であると賛成していることは重大です。構造改革を進める立場に立つ限り、経済、雇用危機の中で苦境に立つ区民によりそうことはできません。また区民の生活・営業を支えて欲しいという切実な願いを実現させることもできません。
今議会でわが党は、高齢者の医療費半額助成の条例案を提案しました。残念ながら反対多数で否決されましたが、日本共産党区議団は、引き続き、経済悪化の下で苦しめられている区民の暮らし・営業を守り支えるために奮闘することを申し上げ、反対討論を終わります。