党の政策
目黒区情報化推進計画(仮称)素案への意見
目黒区情報化推進計画(仮称)素案への意見
2009年1月21日
日本共産党目黒区議団
ITの活用など情報技術の発展は国民生活を豊かにし、政治や行政と国民との関係を発展させていくためにも重要である。「電子政府・電子自治体」づくりは住民の利便性に寄与し、行政処理の迅速化、効率化につながる側面もある。しかし、2001年のIT基本法の施行に伴う「e−Japan戦略」=電子自治体構想は、総務省所管の「地方自治情報センター」と全国自治体のコンピューターをすべて連結し、「国民総背番号制」を見通して中央集権的な個人情報管理をねらった「住民基本台帳ネットワークシステム」の稼働など、国民合意がなく不安を与えるシステムづくりが中心である。
東京都では「東京電子自治体共同運営協議会」をつくり、民間事業者である「共同運営センター」が管理する電子申請を広げている。
このようなシステム構築の中で、区民の中にも自分の個人情報の取り扱いや個人情報の漏えいへの不安が依然大きい状況である。
今回、区が提案している情報推進化計画は、総務省の新電子自治体推進指針の目黒区での具体化という側面が多々見受けられる。利便性や効率性の追求が、大企業のための、民間による情報処理の拡大のための、そして、個人情報の集中を視野に入れた国の「e‐Japan戦略」に追随するための計画にしてはならない。区民の所得や障害の有無、年齢、性別など一切の差別なく、すべての人が高度な情報通信ネットワークを利用できるよう、区民の権利の保障を位置づけた計画にすることが必要である。計画を拙速に実施するのではなく、慎重にかつ十分な区民合意を得ながら計画を練り直すことを求める。
個別の問題についての意見は以下の通り。
1.「ICTを活用した区民サービスの向上」に関して
(ア)ICTを利用していない(できない、しない)区民が不利益を被らないよう、従来の方式を併用すること。住民説明会等では、点字の資料を点字作成用パソコンで作成して必ず用意するなど、不利益を受けないよう徹底すること。各種計画案などの紙情報については、持ち帰れる分も区内施設に従来どおり用意すること。(施策1-1)
(イ)障害者にICTが新たな情報獲得意思伝達手段となるよう電子機器購入への助成を行うなど積極的な施策を講じること。(施策1-1)
(ウ)公的年金からの住民税の特別徴収の導入準備を、エルタックスの導入・活用などの根拠にせず、区民の暮らしや営業の目線から慎重に判断すること。(施策1-2)
(エ)「国民総背番号制」に連なる「納税者番号」や「社会保障カード」導入の動きがある中、普及促進のための住民基本台帳カードの多目的利用の検討はやめること。
(オ)各種説明会等で使用したパワーポイントの説明資料については、説明会に行けなかった人が自宅などでも見れるように音声付で公表すること。
(カ)単純な申し込みや予約については、電子申し込み・予約もできるよう対象を拡大し、窓口での申し込み・予約と併用すること。
(キ)区政におけるすべての公文書が誰でも簡単に検索できるシステムをつくること。(施策3-2)
(ク)各種統計、財務情報、事業実績については、詳細にわかるよう公表すること。例えば、予算・決算の公表については、わかりやすさとともに、議案レベル以上の詳しさでかつ経年変化もわかるよう工夫すること。(施策3-2)
(ケ)PDF形式だけでなくワード形式やエクセルのようにグラフなどに利用できる形式でも提供すること。(施策3-2)
2.「ICTを活用した業務の効率化」に関して
(ア)アウトソーシングの拡大に伴い、区民の膨大な個人情報を一か所に集めそれを民間事業者に活用させることは、個人情報保護の観点からすべきではない。
(イ)経費増大や技術スタッフ不足などを理由に、ホストシステムをオープンシステムに移行し、パッケージシステムを活用する見直しが進められようとしているが、一方で、セキュリティの弱さ、システムの寿命、障害への対応の複雑化、責任の所在のあいまいさなどが指摘されている。問題点に対する区の説明は不十分であり、区民が是非を含め判断できる材料は不足している。そのため、移行の是非について判断することは控えるが、指摘されている問題点については、説明責任を果たすことができない限り、移行を急ぐべきではない。
(ウ)オープン化やパッケージ化によって、結果的にメーカーへの「丸投げ」となれば、安全安心は損なわれることになる。メーカーにシステム評価の点でもモノが言える人材を育成し確保することは、いずれにしても不可欠である。
(エ)定年前に早期退職する職員が多数出ていることについては、ゆとりのない無理な体制での情報化推進が、仕事の負担感増大の一因になっている。研修時間さえ不十分では、事務作業に支障をきたすだけでなく、住民の立場からのシステムの改善はとてもできない。自らの研修や業務内容の改善、人材育成を可能とする職員体制を保障すること。
3.「情報セキュリティ対策の強化」に関して
(ア)民間への業務委託がすすみ、カウンター業務や滞納処理業務などを区職員に混じり遂行することが増えている。民間がICTを活用する場合のあり方を整理し、情報セキュリティ対策を強化すること。
以上