党の政策
後期高齢者医療特別会計に反対する討論
私は日本共産党目黒区議団を代表し、議案第20号目黒区後期高齢者医療特別会計予算に反対の立場から討論を行います。
後期高齢者医療制度は、75歳以上の人を他の世代から切り離し、際限のない負担増と差別医療を押し付けるものです。制度の内容が知られるにつれ、全国で反対の声が上がってきました。反対署名は500万を超え、中止・撤回などを求めた意見書・決議を挙げた自治体は530を超え、自治体総数の3割に近づいています。医師会、老人会、市民団体、労働組合など、政治的立場の違いを超えて、これまでにない広い層が反対の声を上げています。制度の廃止こそ国民の世論です。
改めて制度の問題点を指摘します。
第一は、高い保険料とその仕組みです。
「後期高齢者医療制度」は、これまで扶養家族として保険料をとられなかった人も含め、75歳以上の高齢者すべてから保険料を徴収するというものです。保険料は介護保険と同じく、患者の増加、重症化、医療技術の進歩などによって給付費が増えれば、自動的に保険料にはねかえり、さらに、後期高齢者の人口が増えれば保険料の財源割合が引きあがる仕組みとなっています。新年度は後期高齢者が払う保険料は10%、他の医療保険からの支援金40%、公費50%となっていますが、政府の試算では、団塊の世代が後期高齢者となる2025年には保険料が12.9%、21,500円の負担増、2035年には14.6%、34,000円の負担増となることが予測されています。東京都広域連合では、各自治体による拠出金によって低所得者対策が行われましたが、高齢者が医療を受け、高齢化がすすむかぎり、保険料は際限なく値上げされることは確実です。福田内閣と自民、公明は、「後期高齢者医療制度」による保険料徴収の一部凍結を言っていますが、その対象となるのは、サラリーマンの扶養家族として健保に加入している人だけで、凍結期間も半年間というものです。1300万の高齢者の大半を占める、国保加入者の保険料は予定通り4月から徴収されます。そしてこの保険料は、介護保険料と合わせて「年金天引き」で徴収されます。年金がつき1万5千円未満の人などは「窓口納付」となりますが、保険料を滞納したら保険証を取り上げられます。現在の老人保険制度では、75歳以上の高齢者は、被爆者や障害者と同じく、保険証の取り上げが禁止されています。医療を奪われたらただちに命にかかわるからです。「後期高齢者医療制度」の下では、低年金者や無年金者から滞納を理由とした保険証の取り上げが行われるのです。
保険料徴収事務を行う目黒区においても、滞納者については、きめ細かな相談に応じると言うだけで、取り上げないとは言わなかったことは、命を預かる自治体の責任として重大な問題です。
第二は、保険医療の抑制と差別医療がいっそうすすむ問題です。
政府は、高齢者には三つの特性があると強調しています。一、老化に伴う治療の長期化、複数の慢性疾患が見られる。第二、多くの高齢者に、認知症の問題が見られる。第三、新制度の被保険者である後期高齢者は、この制度の中で、いずれ避けることのできない死を迎える。と決め付け、75歳以上の人は、どうせ直らないし、いずれ死ぬのだから医療費は削減しようというのです。そのひとつが「包括払い」という定額制度で、保険のきく医療に上限をつけ、治療や検査の回数が制限されます。手厚い医療を行う病院は赤字となり、粗悪診療や病院からの追い出しにもつながるというものです。とりわけ、終末期医療は75歳以上の患者に特別の診療報酬体系を持ち込み、「過剰な延命治療を行わない」という誓約書をとったり、「終末期」の患者に在宅死を選択させて退院させた場合には、病院への診療報酬を加算し、いっそうの「病院追い出し」を進めようとしています。現在、全体の二割にとどまっている「在宅死」を四割に増やせば、医療給付費を5千億円削減できるという試算までしています。こうしたことが行われれば、今でも問題になっている「医療難民」「介護難民」がさらに増えることは明らかです。また、後期高齢者に「かかりつけ医」を決めさせ、「かかりつけ医」の指示や紹介なしでは、他の診療かにかかりにくくすることも、医療を受ける権利を年齢によって差別するものです。
政府は、「後期高齢者医療制度」創設の理由に、医療費の増加を挙げていますが、日本の医療費の水準は、OECDの30か国中22番目で、高齢者率がトップであるにもかかわらず、国際的に見ると低い水準です。しかも、日本では、医療費のうち国と事業主の負担を減らし、家計と自治体に負担増を押し付けています。公的医療制度における自己負担の割合はイギリスの8倍、ドイツの2,8倍です。一方社会保障財源に占める事業主の負担割合は、ドイツの二分の一、フランスの3分の一程度です。さらに、国民皆保険制度が施行されている国で年齢による差別医療を行おうとしている国はありません。
あの悲惨な戦争を生き抜き、社会と家庭のために必死で働いてきた高齢者に対し、75歳という年齢を重ねてきたというだけで線を引き、人間としての尊厳や存在そのものを否定するということは、人権を守る立場から見ても許されることではありません。
現在国会には、日本共産党も含めた野党四党による「後期高齢者医療制度」廃止法案が提出されているところです。国民とともに、廃止に向けた運動をさらに進めることを申し述べ、私の反対討論を終わります。