3月定例会始まる 森美彦議員の代表質問
2007.3代表質問 2007.3.1森美彦
私は日本共産党目黒区議団を代表し、区長の所信表明に対して質問します。
貧困をつくりだした「構造改革」路線
第1は、貧困をつくりだした「構造改革」路線に対する区長の認識についてです。
貧困と格差の拡大は、いまや重大な社会問題になっています。
構造改革の名の下に進められてきた規制緩和による労働条件の改悪と非正規雇用の増大で、まじめに働いても生活保護基準以下の生活しかできないワーキングプアと呼ばれる貧困層が激増し、10世帯に1世帯、400万世帯を超えて広がっています。貧困は、一部の国民の問題ではなく、病気や介護、老いなど身近な問題がきっかけで、国民の誰にも起こりうる問題となっています。
OECD(経済開発協力機構)が昨年発表した対日経済審査報告書によると、OECD加盟国のうち調査した17ヵ国の比較で、日本の貧困率は、アメリカについで2位になっています。特に深刻な問題として、日本の税と社会保障による貧困の削減率は、17ヵ国中最下位で、税や社会保障の所得再分配機能がまともに働いていないことが指摘されています。これは医療・年金・介護など社会保障制度の改悪、大企業には減税、庶民には増税という逆立ちした税制改革などによるものです。
国保料の滞納は、480万世帯に達し、国民健康保険証を取り上げられた世帯は35万世帯に上りました。過去1年以内に、体の具合が悪いところがあるのに医療機関に行かなかった人の割合は、低所得層で4割にものぼるという調査報告も出されるなど、憲法25条で保障された生存権さえ保障されない深刻な状況が広がっています。
目黒区でも、この4年間に、生活保護世帯は289件も増加し2000世帯に達しました。高い国保料が払えない世帯は15%を超え、医療証さえもらえない区民が増加しています。年金が削られる中、年金課税の強化で非課税から課税になった高齢者は、目黒で5700人に上り、雪だるま的な負担増によって生活保護水準の生活さえ脅かされています。
今必要なことは、こうした実態に目を向け、その打開のために総力を挙げることです。ところが政府は、貧困の拡大が進む一方で、いざなぎ超えの景気で、バブル期を上回る空前の利益を挙げている大企業には新たな大減税を施し、ひと握りの大資産家への特別減税を温存する、その財源を消費税増税につながる逆立ち税制で庶民に押し付け、貧困と格差に追い討ちをかけようとしています。さらに高齢者に対しては、医療制度の改悪で、後期高齢者医療保険制度によって高い保険料と2割から3割の医療費負担を押し付けようとしています。今でさえ深刻な国民の生活実態をまったく無視したものといえます。
区長はこのような事態を生み出した構造改革路線を、持続可能な制度とするために必要なことと、これを容認してきました。しかし、今日の事態を見れば、構造改革が、財界の要請に応えるものであり、国民にとっては犠牲だけが押し付けられるものであることは明らかではないでしょうか。区長は、これから進められようとしている医療制度や税制改革をどのように考えているのか伺います。
貧困の広がりが重大な社会問題になっている今日、「住民の福祉の増進」という役割を担っている行政として、貧困の拡大の実態をリアルにつかみ、くらしを支援する施策に反映させることは緊急で重要な課題です。区民の中にひろがっている貧困の拡大の実態を、区長はどのようにつかんでいるのか、おたずねします。
区民本位の区政運営に反する「行革プラン」
第2は、区民本位の区政運営に反する「行革プラン」を根本から見直すことについてです。
地方自治体の第1の仕事は、「住民の福祉の増進」です。しかし、第2次行財政改革大綱は、住民サービスの向上を掲げながら、この5年間だけでも毎年平均10億円にのぼる区民サービスの予算の切捨てを行ってきました。学童保育クラブの有料化、老人福祉手当の廃止、心身障害者福祉手当の縮小、区民センターなど区立施設の駐車場の有料化、生業資金貸付の廃止、高齢者の電話代補助2000円の廃止など、どれ一つとっても区民の暮らしを犠牲にするものばかりです。受益者負担や公平性の確保を名目に、経済的な支援を必要としている区民の「命綱」さえ断ち切ってきたのです。
すでに経済給付的な事業でカットするものは底を突き、削減の対象を人件費に向け、政府の「新地方行革指針」の2倍にもなる、5年間で10%の職員削減計画をかかげています。
そのために、施設の民営化が一気に進められています。導入された指定管理者制度は、サービスの向上と効率化をその目的に掲げていますが、昨年指定管理者に移行した目黒区社会福祉事業団では、民間企業との競争を前提に、3年間に5億円以上の経費の削減計画を策定しました。削減の多くは人件費で、区立の特別養護老人ホーム設立当初、個人の尊厳や人権を守る公的施設として区が掲げた誇りや基準は後景に追いやられました。サービスのレベルも国基準並みに低下せざるを得ないという状況をつくりだすなど、指定管理者制度導入の目的に掲げたサービス向上とは程遠い実態です。
区立保育園の民営化も、安上がり保育のために人件費を削ることが最大の目的とされ、目黒区が誇ってきた保育の質を犠牲にして、経費削減を優先させるものとなっています。
民営化の最大の目的は、憲法25条に基づき国民の健康で文化的な生活を保障する国の責任や、福祉の増進に努めなければならないとされた地方自治体の責務を大本から崩し、福祉分野をはじめとする公的な事業を市場化し、民間企業が利益を上げる場に変えようというところにあります。
区長は、所信表明で述べているとおり「区民本位の区政運営を貫く決意を新たにした」というのなら、区の「行革プラン」を根本から改め、区民サービスや福祉の切り捨てをやめ、区民が主役・区民本位を貫くべきではないでしょうか。見解を伺います。
住民参加の取り組みの具体化
第3は、住民参加を推進するための取り組みの具体化についてです。
目黒区は、基本構想で「住民自治を確立する」ことを基本理念に掲げ、「実効性ある住民参加システムの構築を図る」ことを基本方針で位置づけています。また、行革大綱にも柱として「政策策定過程の住民参加」を掲げています。
「区民が主役」を公約に掲げた区長にとっても、住民参加の実現は大きな課題であるはずです。ところが、所信表明の中で住民参加について一言もふれていません。そればかりか、これまでの状況を見ると、住民参加はむしろ形骸化されているといわざるを得ません。
区民による街づくりといいながら、説明会は深刻なほど参加者が少ない状況を改善できないまま制定しようとする「街づくり条例」、保育園の民営化問題では、91%の保護者の反対も無視することなど、住民参加を重視しているとはとうてい思えない状況です。
区長は、「意見の数の多さは問題ではない」「総合的な判断によって最後は自分が決める」と言い出す有様です。また、他の幹部は「区の方針はいろいろ意見があっても貫くものだ」と発言しました。これらの言葉は「区民が主役」どころか、上からの方針の押し付けにほかなりません。
基本計画には、住民参加システムづくりについて次のように明記されています。「政策策定過程の各段階(課題設定、政策立案、政策決定、執行、評価)で、住民意思を的確に反映するため、区と区民で情報の共有化を図るとともに、各段階で区と区民または区民同士の話し合いが十分に行えるよう住民参加システムを整備する」「住民参加の結果によっては変更可能なものとして位置づけるシステムを確立する」と具体化の道を示しています。基本構想の立場に立った住民参加の実現をどのように進めていくか明確に示すべきではないでしょうか。区長の見解をおたずねします。
公正性の確保
第4は、区政における公正性の確保についてです。
青木区政は、3年前に起こった前区長の自殺によって行われた区長選挙において発足しました。青木区長に求められていたのは、自殺と一連の疑惑の真相を究明し、区民の前に明らかにすることだったはずです。
ところが、区長は、真相究明をする考えのないことを表明する有様でした。
また、昨年から大きな問題になっている政務調査費の不正支出問題でも、予算執行の最終責任者でありながら、独自の調査もせず、きわめて無責任な姿勢に終始しました。
さらに、出直し監査委員の任命の問題では、事務所費問題で不正が指摘され、返還はしたものの、なんら反省する姿勢を示していないにもかかわらず、与党の推薦だからというだけで任命しました。ところが、新たに選任された監査委員に対し、国会議員の政治資金パーティの参加費を政務調査費として支出するのは不当とし、返還勧告がだされたのです。区民の信頼をいっそう損ねた区長の任命責任は重大といわざるを得ません。
与党の意見を無批判に取り入れるというのでは、区政における公正性を確保することができないことは明らかではないでしょうか。区長の任期も残すところ1年余りとなりました。区政運営の大きな柱に掲げている「信頼と改革の区政」とは程遠い今日の事態を、区長はどのように考えているのかおたずねします。
改憲の動きに「憲法擁護」の積極的行動を
最後に、改憲の動きに対し「憲法擁護」の立場に立った積極的な行動を行うことについてです。
安倍首相は、憲法改定を参院選の争点にするといい、施政方針演説でも「憲法を頂点とした…戦後レジームを大胆に見直す」と宣言しました。「自分の任期中」と期限を区切って改憲を公言したのは、戦後の歴代内閣でも初めてであり、憲法問題は重大な局面にきています。こうした危険な動きに対して国民は危機感を募らせています。憲法9条を守るために行動に立ち上がろうという呼びかけに、今日では全国に6000を超える「9条の会」が組織されています。このような平和の運動の広がりの中、安倍内閣は、改憲手続き法案を改憲への第1ハードルと位置づけ、憲法施行60年の記念日5月3日までに早期成立させようとしています。
改憲手続き法案は、日本を「海外で戦争する国」にするための九条改憲と一体のものです。九条改憲をいかに通しやすくするか――改憲手続き法案には、そのための不公正・非民主的なしくみがたくさん盛り込まれていることは重大です。
自民党案も民主党案も、国民投票の最低投票率の定めがないため、国民の2割という少数の賛成でも、憲法改定ができること。全ての国民に自由な運動が保障されるべきなのに、公務員、教員への規制を設けていること。有料のテレビ、ラジオ、新聞などの広告が、資金力のある財界や改憲勢力に独占される危険性があること。改憲案の国民への周知、広報を、改憲推進の勢力政党主導で行う仕組みが盛り込まれていることなど、一国の憲法を改定する法案としてはまったく不適格なものです。
今、改憲手続法の成立を阻止することが、憲法擁護にとってきわめて大事な課題になっています。区長は、平和都市宣言をした自治体の長として、「戦争には協力しない」「平和憲法を擁護する」と繰り返し表明してきましたが、このような改憲の緊迫した状況のなかで、所信表明には、この改憲の動きにはまったく言及していません。
目黒区平和都市宣言の中で、憲法擁護の立場を宣言している自治体の長として、区民とともに憲法擁護の立場から積極的に行動すべきではないでしょうか、区長の見解をお尋ねして質問を終わります。