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「第二田道保育園における指定管理者制度活用に係る実施策(案)」
に対する意見

「第二田道保育園における指定管理者制度活用に係る実施策(案)」
に対する意見

                          2006年11月6日
                        日本共産党目黒区議団

目黒区の保育は、長年にわたる住民の運動とそれに応える行政の努力によってつくられてきたものです。今日では「日本一」と誇れるまでになりました。区立保育園の保育活動は、単に保育園の中だけの事業展開にとどまらず、保育園を通じて築かれた保護者同士のつながりや保護者と職員のつながりは、学童保育クラブや学校のPTA へと引き継がれ、子どもたちを真ん中に地域のコミュニティの核づくりにも大きな役割を発揮して、地域の教育力を引き揚げてきました。また、入所していない児童と親に対しても子育て支援のセンターの役割を果たしてきました。こうした成果を上げる上で保育園職員の役割が大きかったことは言うまでもありません。
子どもを取り巻くさまざまな事件や問題への取り組みが大きな課題となっている今日、圧倒的な保護者の反対の声を無視して区立保育園を民営化することは、目黒の住民参加の歴史と成果を否定することにもなります。指定管理者制度による保育園の民営化計画を再検討することを求め、下記の意見を述べます。



1.財政問題
今回の区立保育園の民営化は、第1の理由に財政問題を挙げ、経費の2割削減を目的にしています。しかし、財政危機を作り上げた原因が明らかにされていません。目黒区は、国や都が進めてきたハコモノや大型開発、幹線道路建設を最優先にする路線を無批判に追随し、財源不足を前提にした実施計画を推進するなど、財政危機をつくり出す行財政運営を強行してきました。このような国を挙げての無茶な予算執行の結果、今日では、国と自治体の赤字を増やし、それを理由にした国庫補助の削減や三位一体の改革など自治体の財政をさらに圧迫する政治がすすめられています。加えて目黒区は、庁舎移転など、計画にもない事業を強行して財政危機に拍車をかけ、さまざまな施策に活用できる区有地をも失ってきました。こうした背景を区民に明らかにすべきです。
また、今回、直営と民営化の経費の比較がされていますが、直営のままでも、今後、大量の定年退職者が出て経費は大幅に引き下がります。こうした条件を無視したまま現行の経費で比較するというやり方は、情報提供という立場かも問題です。

2.保育の質
 保育の質は、子どもの成長発達を保障する環境にとって重要な要素となります。目黒区の保育は、何よりも「質」を大切に考えて今日の職員配置基準と労働条件をつくり上げてきました。経験をつんだ職員を安定的に確保できているからこそ、子どもも保護者も保育園を信頼することが出来るのです。区は、直営の場合と変わらない条件を整えるので保育の質は保たれると説明してきましたが、「連絡協議会」の第2回の会議で示された第二田道保育園指定管理者募集要項条件は、現行の職員構成が在職10年未満46.7%に対し、79.0%も占めるなど、経験の浅い職員の割合が多くなっています。保育の質に差が生まれることは明白です。しかも、一定の指定期限ごとに新たな事業者へと引き継ぐことになり、保育の継続性は確保できません。
 こどもや保護者とのコミュニケーションを大事にし、子どもの成長・発達を保障する保育の質を支える要素は何か、職員の意見を謙虚に聞くべきです。

3.新たな事業に振り向けていくための財源づくり
 保育園の経費を2割削減して、それを拡大する子育て支援策の財源に充てるとしています。拡大する新しい事業として掲げているのは、子育てひろばなど地域の子育て支援事業ですが、こうした事業は採算性や利潤を上げることとは無縁のものであり、豊かな経験を持った人材によってはじめて成り立つものです。そのためには保育士や保健師など、専門的な経験をつんでいる職員の確保が必要となります。優れた人材を養成し、確保してくことは、新たな事業を展開する上で欠かすことの出来ない条件です。目黒区が育ててきた人材は有効な目黒区の資源と考えるべきです。人材の養成も確保も出来ない指定管理者制度によって、子育て支援事業を展開するという発想は、地域の子育て支援事業そのものの重要性が位置づけられていないものといわざるを得ません。

4.民営化路線
 「小さな政府」「官から民へ」という流れの下で、「安全・安心・安定」という区の方針とも矛盾するさまざまな問題が明らかになってきました。こうした各地の事件や問題から教訓を引き出すことなく、これを無批判に目黒区政に持ち込むことは、区民に対しても無責任な姿勢といわざるを得ません。
とりわけ、民営化した多くの保育園で子どもたちにさまざまな犠牲が押し付けられ、横浜地裁や大阪高裁が児童福祉法にも反するものと厳しい判決を下したにもかかわらず、これを軽視する区の姿勢は許されないことです。
改めて、公的な責任と役割を明らかにし、「民」では補いきれない役割と課題を明確にすべきです。

5.手続き問題
 また、区の「指定管理者制度活用の基本方針」には、「施設のあり方やそのめざす方向を明らかにし…その上で指定管理者制度が適当である施設については・・・制度の活用を図る」こと、「年次別推進プランの中で管理運営方法等を示している施設についても、指定管理者制度と比較しよりよい管理運営方法を選択していく」こと、と手続きが示されています。しかし、区は、第二次行革プランの中で保育園の民営化は決定されたものであることを理由に、「検討しなかった」のです。この助役の答弁が示すように、方針にも基づかないずさんなやり方であったことが明らかになりました。その理由に「保育については民業として成熟している」ことをあげていますが、出来たばかりの指定管理者制度の下で「成熟」している例はありません。指定管理者制度については、目黒区社会福祉事業団の経験からもすでに限界が明らかにされているところであり、これを闇雲に進めることは許されません。

6.住民参加と説明責任
 この間、第二田道保育園の保護者との協議会を16回、その後も連絡協議会を重ねてきたにもかかわらず、いまだに保護者の理解も納得も得られていません。その上、保護者の91%が民営化に反対しているという状況を無視して何が何でも民営化を強行するという姿勢は、「住民参加」とは相容れないものです。
また、保護者から出された「保育の質とは?」「目黒区の保育ビジョンは?」「なぜ民営化なのか?」「第二田道を選んだ理由は?」等々の質問に対して、区はいまだに保護者や住民を納得させる説明をしていません。「先に民営化ありき」というすすめ方では、行政の説明責任が果たせないことは明らかです。

以上、いくつかの問題点を指摘しましたが、これらの問題を解決することなく民営化を強行することは、これまで住民とともにつくりあげた誇るべき「目黒の保育」と、住民との信頼関係をも壊すことになります。
区立保育園の民営化計画を再検討し、直営を守ることを重ねて強く要望いたします。
以上

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