党の政策
3月定例議会 野沢議員の代表質問
私は、日本共産党目黒区議団を代表して、区長の所信表明に対する質問を行います。
まず第1は、平和と憲法に関わる問題です。
今年は「戦後60年」、目黒区では、「平和憲法を擁護し、核兵器のない平和な都市である」と宣言した「目黒区平和都市宣言20周年」を迎えます。戦争の世紀といわれた20世紀から平和の世紀へ!との世界の人々の願いにそむき、アメリカがイラク攻撃を強行してから早2年が過ぎようとしています。小泉内閣は、アメリカのイラク攻撃を支持し、自衛隊の派兵を強行しました。今日、その根拠となった「大量破壊兵器の存在」という理由がまったくのでっち上げであったことが明らかになり、アメリカ国内を含め世界中から批判の声が上がっています。しかし、小泉内閣はこれを正当化し、さらにいつでもアメリカの戦争に協力できるようにと、その障害となっている憲法9条を改悪することを柱とした憲法改定を狙っています。各政党も「改憲」「論憲」「創憲」とさまざまな言い方をしながら、憲法を変えることを競い合うという状況が生まれています。
一方、「平和を求める世界の市民と手をつなぐために、9条を持つ日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、『改憲』の企てを阻むため、あらゆる努力を始めよう」と、井上ひさし、梅原猛、大江健三郎、奥平康弘、小田実、加藤周一、澤地久恵、鶴見俊輔、三木睦子の9人の著名人が呼びかけた「9条の会」の運動が驚くような勢いで全国に広がっています。
今日、マスコミでも連日のように憲法論議を取り上げ、多くの国民が関心を寄せているこの問題は、地方自治体にとって、その根幹にかかわる重要な問題です。戦後初めて憲法の条文を変えることが政治日程に上がっている今日、所信表明に憲法問題がまったく触れられていませんが、なぜなのでしょうか、まず伺います。
先日、広島、長崎市をはじめ平和市長会議や目黒区も加盟している日本非核宣言自治体協議会に参加する自治体の市長らが、5月にニューヨークで開かれるNPT(核不拡散条約)再検討会議で核兵器廃絶に積極的な役割を果たしてほしいと外務省、核保有5ヵ国の大使館に要請しました。今日、核廃絶の約束に逆行する動きがあることに対する危機感からの行動です。日本の政府にも唯一の被爆国の政府として、また、平和憲法を持つ国の立場からの行動が求められることはいうまでもありません。目黒区が「平和都市宣言20周年」を迎えるこの年に、平和の尊重を基本姿勢に掲げる区長のとるべき行動として、イラクからの自衛隊の即時撤退と、原発一基分の核燃料を動力として航行する原子力空母の横須賀港への配置に反対すべきと思いますが、見解を伺います。
第2は、大増税計画についてです。
2月16日に内閣府が発表した2004年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報は前期比−0.1%で、三期連続のマイナスとなる中、小泉内閣は7兆円に及ぶ大増税路線を打ち出しました。ニューヨークタイムズは「日本経済は景気後退に陥った」と報じ、イギリスのフィナンシャル・タイムズは「次の景気回復を窒息させるような」増税を考えることは「原則的に誤っている」と批判しています。また、国内でも経済の専門家は、「2004年度に入ってから、完全に後退という状況が現れている。その一番の原因は民間需要、特に家計消費の弱さにある。政府は、景気がある程度よくなったから増税してもいいだろうと、定率減税縮小・廃止や消費税増税などに言及しているが、景気の状況は来年度から増税路線に変えていく局面ではまったくない。企業部門は儲かっているので、ある程度増税するならわかるが、よくなっていない家計部門に増税するというのは大変な問題を起こす恐れがある」と警告しています。
実際に多くの区民は、小泉内閣が進める大増税路線の下で大きな不安を抱いています。厚労省のまとめでは、昨年10月時点で生活保護世帯が過去最高の100万世帯を超したと報じられました。不況に加え、高齢者の単身世帯が増えていることが背景にあるといいます。すでに、今年1月から実施された所得税の老年者控除の廃止で、65歳以上の年金受給者約2000万人のうち、約500万人が新たに所得税が課税されたり、増税になるなどの影響が出ています。区営住宅に住むある一人暮らしの66歳の方の場合では、年金収入129万円と事業所得89万円で非課税だったのが、公的年金等の控除や老年者控除の廃止、65歳以上で所得125万円以下の住民税非課税措置の廃止、定率減税の廃止などで、所得税・住民税の課税と国保料や介護保険料、家賃への連動値上げなどで、年間約20万円もの負担増になります。とても我慢できる負担増ではありません。さらに消費税の大増税が計画されるなど、とりわけ低所得者に大打撃を与えるものばかりです。区長は、「高齢者や障害者など、誰もが安全で、安心していきいきと暮らし、心豊かに年を重ねていくことができる条件整備が強く求められているものと認識している」と述べていますが、こうした増税計画をやめさせるために、積極的に行動すべききと思いますが、伺います。
第3は、「信頼と改革の区政」の実現についてであります。
目黒区にとって信頼を回復するために必要なことは、信頼を失った最大の原因である前区長の自殺と契約課長の収賄事件、区政を取り巻く疑惑の真相をまず究明し、二度とこのような事件を繰り返さない行政組織と行政運営の改革をすすめることであります。それを抜きに、「信頼と改革の区政」実現はありえません。ところが区長は、くり返しの指摘にもかかわらず、自ら選挙で訴えてきたことに反し、さまざまな疑惑を契約課長の収賄事件だけに矮小化しています。そして、その裁判が決着したとして、あらためて調査は行わないと明言してきました。しかし、裁判が決着しても、契約事務の改善策の取り組みが進められても、なぜ区長が自殺したのか、収賄事件にまつわる不可解な幹部の言動は何だったのか、いまだに誰も説明出来ません。事件の背景にあったワンマン区政と利権政治を温存してきた組織の中枢は、助役が入れ替わっただけ、行政運営も「改革」にふさわしい変化は見えません。庁内には、不満と新たな閉塞感が生まれ、区民からも区長が変わっても事件のことは何にもしていないじゃないのと指摘する声があがっています。
今後、指定管理者制度の導入などこれまで以上に利権が入り込みやすい状況が予想されます。区民と職員の期待に応え、信頼を回復するためにも、前区長の自殺と収賄事件の背景などについて調査し、疑惑の真相を究明すべきと思いますが、見解を伺います。
「信頼と改革の区政」に関する2点目は、住民参加についてであります。
現在、指定管理者制度の活用に向けた検討が進められ、今月末には実施方針を決定する予定となっています。区民が利用する公の施設のあり方にかかわるこの問題について、基本方針案についても、実施方針案についても、区民への説明会は開かれないままです。目黒区基本構想は三つの基本理念のひとつに「住民自治の確立」を掲げ、「区政の主人公である区民の行政参加を促進する」とし、’98年につくられた「行革大綱」も、課題の第1に「区政と区民の間に新しいパートナーシップを構築すること」を掲げ、その具体化として、「政策策定過程情報の積極提供」と「住民参加を推進するためのシステムの充実強化」を挙げ、「原則として、細部まで内容が確定していない問題であっても、計画等の骨子を公表し、区民の意見を計画等に反映させる」こと、「住民がいっそう参加しやすくなるように説明会の開催方法を工夫し、…さまざまな立場から率直な意見交換ができるよう運営上の工夫や方式を検討する」こと「公聴会方式の活用」などをあげています。この視点から見ても、今回の対応の不十分さは明らかです。これまでも決して十分とはいえませんでしたが、「住民参加」は、さらに後退しているといわざるを得ません。
区長は所信表明では区政運営の基本的視点の第一に「区民が主役の区政」を挙げながら、「住民参加」についてまったく触れず、「私は、できる限り地域に出向いて、区民の意見や要望を直接お伺いする」と区長自身の行動を述べ、行政としての取り組みは、「協働の仕組みづくり」を挙げているだけです。区長は、住民参加をどのように具体化していこうと考えているのでしょうか、伺います。
第4は、少子化対策についてであります。
少子化の克服は、日本の未来にかかわる重要な問題であり、子育てしやすい環境作りは、政治が最も重視しなければならない課題の一つとなっています。「次世代育成支援」「子育て支援」の課題は、健康、保育、教育、労働、安全、住宅など多岐わたっており、これらを総合的に充実させることにより、全国最低レベルにある出生率を上げることが必要です。少子化問題は一人行政だけで解決できるものではなく、地域や職場を含めさまざまな立場から子育てしやすい環境づくりの努力が必要となります。
この間、目黒区では「目黒区子どもの条例」(仮称)の制定と「次世代育成支援行動計画」の策定作業がすすめられ、説明会が開催されてきました。しかし、残念ながらどの会場も参加者が極めて少なく、子育てにかかわっている住民の参加もわずかでした。子育て環境の整備にとって、行政と住民がともに子育て支援のあり方を考える関係をつくることこそ必要なのに、なぜこのような事態になったのか、真剣に考える必要があるのではないでしょうか。
子育てにお金がかかりすぎることが子どもを生まない大きな原因として挙げられ、区の調査でも経済的支援を求める声が多く示されているにもかかわらず、4月から学童保育クラブの有料化が強行されます。これは、再開発を優先課題とした「基本計画」の具体化である「実施計画」の財源確保策として「行革」プランに位置づけたことによるものです。基本計画を上位計画に、「次世代育成支援行動計画」はその補助計画と位置づけるのでは、真に子育てを支援する計画になりえないことは明らかです。しかも、有料化を盛り込んだ「行革」プランについて、関係住民への十分な説明もなく、反対する父母などの多数の声を無視して一方的に決定するというやり方がとられたのです。こうした姿勢は、父母の声を無視して、「行革」の立場から中学校の統廃合計画や希望入学選択制導入が進められるなど教育行政にも表れています。さらに、次世代育成支援行動計画(案)には、新たに「受益者負担」の文言が書き加えられました。これでは、子育て中の区民が目黒区に子育て支援を期待することは出来ません。「子ども条例」の取り組みについても、くり返し指摘されたにも関わらず、より多くの区民の参加で子どもを守る連帯の意識を広げる絶好のチャンスを活かそうとしませんでした。
所信表明では、「実施計画改定前の取り組みに着手する」としていますが、改めて、少子化を克服し、誰もが安心して子どもを生み育てられる目黒の実現を、計画見直しの柱にすえるべきと考えますが、区長の見解をうかがいます。
また、新年度は小学生の入院費助成を進めるという前進面がある一方で、学童保育クラブの有料化を進めていますが、子育て世帯への総合的・経済的な支援策としてどのように考えているのか、最後にお聞きし、私の代表質問といたします。