森美彦 日本共産党目黒区議会議員 葉っぱ
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活動と実績

「子ども(の権利)条例」制定を実現



 先日、2006年版「青少年白書」が発表されました。2004年度に全国の児童相談所が対応した児童虐待の相談件数は、前年度比25.7%増の33,408件。はじめて3万件を突破しました。この数は、1990年度の30倍で、児童虐待が年々深刻化しています。
 わたしは、この日本の社会で子どもが本当に大切にされているのだろうか、と肌寒くなります。子どもの権利が守られる条件をこの目黒からつくっていく必要をますます痛感しています。
 このような、思いをこめて、日本共産党区議団を代表して提案したのが、「目黒区子どもの権利条例」でした。国連子どもの権利条約を目黒で生かしていこうと条例制定を呼びかけました。2001年9月のことです。そして、2005年「目黒区子ども条例」が誕生しました。
 2001年の、一般質問と区長答弁は、以下の通りです。
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一般質問

 私は、日本共産党区議団を代表して、区政一般について質問します。
第一は、子どもの命と権利を守るためについてです。
 今日、名古屋での小学2年生女児虐待死、尼崎での小学1年生男児虐待死、中国自動車道での中学1年生女子監禁致死など、残虐な児童虐待を初め、児童売春やいじめ、体罰等、子どもの命まで奪う深刻な事件が連続して起こっています。子どもの権利条約が日本でも批惟されたとはいえ、特に法的な整備は必要なしとする政府のもとで、具体的取り組みは極めて消極的でした。
 子どもの権利擁護は推進されるどころか、命まで奪われる児童虐待などが逆に広がっているのが実態です。こうした状況の中で、各地で独自の取り組みが進められてきました。兵庫県川西市では、いじめ、虐待、体罰などの人権侵害から子供を守るために、子供の権利救済制度として、2年前、子どもの人権オンブズパーソン条例を制定しました。この条例は、子どもの人権の尊重及び確保は、自治体にとっての最重要課題であり、自治体を挙げて取り組むという強い意思を広く宣言しています。
 川崎市では昨年、子どもの権利条例を制定しました。市民参加型の条例づくり、全庁的な体制での条例づくり、子どもや市民が活用できる条例づくりを目指しました。
 条例案をまとめ上げていくため、学識経験者と市民、関係団体代表による子ども権利条例検討連絡会議を設置したのを初め、子どもの代表も構成員となっている子ども権利条例調査研究委員会、全員公募でつくった市民サロンなどの組織もつくりました。 
 また、各地域で自主的に開催される教育を語る集いや子ども会議、全市の子ども集会や市民集会など、約2年間で200回を超える会議や集会が開かれ、市民、子どもたちとの意見交換を行うなど、条例制定過程に多くの住民が参加することを大切にして進められました。
 これらの取り組みを通じて、自治体ぐるみで子どもを大切にしようという合意意形戌が進んでいきました。また、無数の話し合いいや手紙やメールなどでの意見の中から、子どもの実態や行政施策のあり方も含め、現状の課題が浮き彫りになってきました。
 こうしてつくられた川崎の条例は、子どもの権利について、子どもも大人も共通に理解しよう、そして子どもを一人の人間、権利の主体として尊重し、権利侵害から守り、生き生きと育っていくことを支えていこうという思いが条例文の中に結晶となっています。
 子どもの権利を子どもにもわかりやすい言葉ではっきりうたい、推進計画や検証機構、子ども施策の総合化、子どもの参加権の保障、虐待等の防止と権利救済の仕組みなど、実行性のある具体策を明記しています。
 東京都においては、子どもの権利条例は、青島都政時代に子どもの権利保障を一層推進するために、条例制定が一番有効だと考えるとして、2000年度までの制定が表明されていました。その後、都民から条例制定を求める請願が出され、ことし2月に開かれた厚生委員会では、すべての会派が条例制定を推進すべきとの意見を表明しました。
 既に、都の児童福祉審議会は、1998年に子どもの権利条例制定を求める意見具申を行い、続いて青少年問題協議会も同様の答申を行っています。
 目黒区では基本計画に、子どもの人権の確立のために、子どもの権利条約の趣旨を踏まえ、家庭や学校、地域社会、行政等のあらゆる分野において、子どもを権利行使の主体と位置づけ、子どもの最善の利益が実現されるよう、子供の参加や意見、自主性や権利が尊重され、基本的人権が守られる行政運営に努めると明記しました。しかし、実施計画に具体的な取り組みは位置づけられていません。
 同様に、基本計画で位置づけられている、男女が平等に参画する社会づくりの推進については、これを具体化するため、今度の実施計画では男女共同参画基本条例の制定が位置づけられ、来年度制定を目指して取り組まれています。
 子どもの人権の確立についても、今日の深刻な子どもの状況を打開していく具体的な取り組みを進めるべきではないでしようか。
 以下、2点について提案します。
 1、昨今、連続して起きている、子どもが命さえ奪われるような異常な児童虐待などの事件から、子どもの命と権利を守ることは行政としても緊急な課題になっています。こうした子どもの問題を緊急課題として、全庁的に位置づけ、区民とも一体となって対策を検討すべきと思いますが、どうでしょうか。
 2、子どもの命と権利を守るために、目黒区子どもの権利条例制定に向けた検討を開始すべきと思いますがどうか、区長にお聞きいたします。

区長の答弁

 区長 森議員の3点にわたる御質問に、順次お答えを申し上げます。
 まず、第1点目、子どもの命と権利を守ることについての第1問、児童虐待への対策についてでございますが、児童虐待については全国的に増加傾向にあり、深刻な社会問題となっております。都内の児童相談所が受けた虐待相談件数では、平成11年度の1315件から12年度には1940件へと増加しております。
 また、本区の子ども家庭支援センターが受けた虐待相談件数も、11年度の56件から、12年度には96件と増加しております。
 児童虐待の主な要因としては、核家族化や都市化の進行などにより近隣関係が希薄となり、子育てを行う親が孤立してしまったり、仕事と子育てとの両立の悩みなどから、ストレスで苦しんでいることなどが挙げられております。児童虐待は最悪の場合、死に至ることもあるため、できるだけ早期に発見し、地域や関係機関による、迅速で適切な対応が重要であります。また、何よりも虐待が生じないような環境づくりを進めることが大切と考えております。
 このため本区では、平成12年8月に児童虐待の防止を緊急課題として、地域や関係機関、庁内の関係部局が連携、協力し、児童虐待防止連絡会議を設置するなど、虐待の防止のため努力をしております。
 また、子ども家庭支援センターを設置し、子どもや家庭からの多様な相談などに適切に対応する体制を整備するとともに、保育所や児童館、保健センターなどでも子育て相談などを通じ、子どもや家庭の支援に取り組んでいるところでございます。
 今後、主任児童委員など、地域や関係機関との連携を一層密にしながら、区民への普及啓発、関係職員の研修、防止マニュアルの整備、子ども家庭支援センターの機能強化などにさらに取り組んでまいりたいと考えております。
 次に、第2問、目黒区子どもの権利条例の制定についてでございますが、1989年に国連の総会で採択された子どもの権利に関する条約では、子どもの最善の利益の尊重を基本理念として、子どもに対する差別の禁止、子どもの意見表明や文化的な生活などに参加する権利などを掲げ、自由を尊重し、子どもに対する保護と援助を促進することを目指しております。
 我が国がこの条約を結んでから七年が経過しておりますが、近年、いじめや児童虐待など、子供の権利を侵害する事例が増加しており、深刻な社会問題となっております。
 こうした状況の中で、子どもの権利条約の趣旨を踏まえ、子どもの健全な発達を保障し、児童虐待の防止など、子どもの権利を支える取り組みを進めていくことは重要な課題であると考えております。
 本区におきましては、こうした観点から、先ほど申し上げましたように、子どもの人権を守る取り組みの一環として、児童虐待防止連絡会議を設置し、地域や関係機関との連携のもとに、児童虐待の早期発見と防止に取り組んでおります。
 また、相談体制の整備や子供の権利などの普及啓発、児童館などの運営や事業の企画への参加など、子どもの最善の利益を基本とした行政運営に努めているところでございます。
 一方、条例の制定を含めた子供の権利保障のあり方につきましては、現在、苦情解決制度やサービス評価制度など、関連した課題を検討中であり、また権利に伴う社会的責任感や道徳性の育成、基本的な生活習慣の育成などの課題もございますので、これらとあわせて慎重に検討していく必要があると考えております。
 したがいまして、子どもの権利条例の制定につきましては、関連した課題の検討や、条例を設置している他都市の運営状況などを踏まえながら、今後の研究課題とさせていただきたいと存じます。

再質問

 森美彦議員 再質問をさせていただきます。
 まず、1点目の子どもの命と権利を守るためにについてですけれども、今非常に児童虐待による痛ましい事件が激増しているわけで、品川の児童相談所につきましても、11年、12年で2倍以上に増加している。このことは児童虐待防止法ができた後に、学校や保育園、児童館、関係者、区民の間で早期発見への一定の努力が始まっているということの反映だったと思いますけれども、ただ、これらの表面化した数字というのは氷山の一角、本当に、改めて事の緊急性を受けとめているところです。
 子どもの命と権利を擁護していくということが非常に切実な課題になっているわけですけれども、このためにはやはり子どもの権利について正しく理解してもらうという取り組みから始めなければいけないと思うんです。非常にわかりやすく進めていかなければいけないと思うんですが、子どもたちには自分たちが持っている権利についてどんなものがあるのかということを知ること、そしてその権利には自分自身を大切にすること、自分のことを大切にしてほしいと人に求めてよいこと、そして、さらに自分も人を大切にすること、こういう責任も伴うんだということも伝えていかなければならないと思うんです。
 と同時に、やはり正しく理解してもらうということについては、児童虐待防止を初めとして、児童憲章や子どもの権利条約、児童福祉法等の理念や、具体的な内容を区民や子供たち自身に広く知らせる活動が、児童虐待を未然に防ぐ大きな力になるんだと思います。
 子どもの命と権利を守っていくという課題、現象的に児童虐待だけではありませんで、いじめその他、さまざまな形で出てきているわけですけれども、子どもの人権を
積極的に擁護していく、そのために子どもたちが権利の主体者として着実に育っていく、こういう子どもたちを権利の主体者として育てていく、これが一番、非常に大事だと思うんです。この呼びかけを広く進めていく必要があると思うんです。
 その点で、区長の考えをお聞きしたいと思います。
 中でも、子どもの権利を総合的にうたい上げているものが子どもの権利条約だと思うんです。子どもの権利条約を、その意味では本当に活用していく。これは国際的に見ても、今日的な子どもの権利をきちっとうたっている到達点になっているということですから、しっかりとこれを広めていくことが大事だと思うんです。
 その子どもの権利条約の三本柱は、生命・生存・尊厳性が侵害されない権利、それから個性的な発達が保障される権利、年齢発達に応じての意見表明、社会参加権。
 この3本柱を考えただけでも、やはり身の回りの家庭、地域、そして学校などで子どもの権利が保障されているかどうか。これはやはり非常に遅れているというふうに思います。
 だからこそ、1998年に子どもの権利委員会が日本政府に対して、児童の虐待及び不当な扱いへの対処など、子どもへの暴力の防止と救済、人権侵害状況の即時救済を求める勧告を出したわけです。全部で22項目の勧告を出したわけですけれども、本当にもう諸外国の子どもたちと比べて、日本の子どもたちが命と権利が危機的な状況にあるということは、これを見てもやはり明らかだと思うんです。そういう状況の中だからこそ、子どもの権利条約を積極的に普及していこうという各地の事例がどんどん広がっているんだと思うんです。
 そこで目黒区としては、先ほど答弁にもありましたけれども、基本計画の中にきちっと位置づけているわけです。そして、その基本計画改定素案の中で、意見、要望、検討結果をまとめていますけれども、それを見ますと、子どもの権利条例制定については「今後の検討課題とさせていただきます」とびしっと出しているわけですよ。
 でしたら、やはりそれを具体化するために検討作業に入る必要があるのではないかというふうに思うんです。川崎の事例を本当に教訓にしながら、区民ぐるみで子どもの権利を本当に守っていこうと、そういう全体的な合意を広げていく。そういう取り組みに、この条例制定の取り組みをしていかなければならないというふうに思うんですけれども、具体的な検討をぜひ進めていただきたいと思います。
いかがでしょうか。

再質問への区長答弁


〇藥師寺克一区長 自席からお答えをさせていただきたいと存じますが、子どもの権利条約の制定につきましては、先ほどお答えを申し上げましたように、今後の研究課題にしていただきたいということでございますが、私どもは今子どもの周辺に起きているさまざまな問題を解決する、その実践、実行がとりもなおさず必要であろうと。
 そういうようなことから、先ほども申し上げましたように、私どもの庁内におきましても連絡会議を設け、あるいは教育委員会におきましても、地域教育懇談会などでそういう議論もいたしてございますし、また青少年問題協議会の場でも、最近は特にそういった問題が出ておりまして、それらを庁内としてはそれぞれの所管で受けとめて、実施、実態に即した対応をするようにいたしてございます。
 私どもは、条例も十分検討して必要性はわかりますし、基本計画にもそういう観点からのせてございますが、先ほど申し上げましたように、子どもの権利、人権を尊重しながら、議員がおっしゃいましたようなさまざまな権利を尊重していくということは、これは十分理解をしておりますし、先ほど申し上げましたように、これらが十分機能していくためには、やはり家庭・学校・地域、こういった3者が十分な対応をしていくことが必要だと。
 これらについては、私どももこれから十分啓発、普及をしながら、それぞれが完全に守られて安全な生活ができるように、子どもの権利は守っていくように取り組みを強めていかなければならないというふうに考えております。

 



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