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党の政策

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2008年 第一回定例区議会代表質問

私は、日本共産党目黒区議団を代表して、区長の所信表明に対する代表質問をいたします。
まずはじめは、格差社会を拡大する「構造改革」と消費税の増税についてです。
小泉内閣以来推し進めてきた「構造改革」が貧困と格差を急激に拡大させています。全労働者の三人に一人、若者の二人の一人が非正規労働者といわれ、年収200万円以下の労働者が1200万人を超えるなど、働く貧困層といわれるワーキングプアが大きな社会問題になっています。貧困層が増大する一方で、家計の預金利息約5兆円に匹敵する莫大な株式配当がなされるなど、一部の富裕層に富が集中しています。
貧困に対するセーフティネットといわれる生活保護行政は、昨年5月、北九州市で50代の男性が、電気・ガス・水道が止められ餓死し、ミイラ化して発見、7月には、秋田市で、30代の男性が福祉事務所に抗議して自殺するなど、保護申請の書類を渡さない違法な「水際作戦」など、生活困窮者を切り捨てる非情なやり方が横行しています。一方国では、生活保護を受けている世帯に対しても老齢加算の廃止や母子加算の削減など生存権を奪ういっそうの改悪が続いています。
医療でも、国民健康保険料の滞納を理由とした保険証の取り上げは35万世帯を超え、保険証がなく受信を控えて重症化・死亡する事件が続発しています。さらに診療報酬の改定による退院促進は軽度者ばかりか末期がん患者まで、「在宅看取り」の誘導で、病院を出され、医療や介護の手もないまま悲惨な最期を遂げる事例が続発しています。マスコミも、「捨てられる、がん患者」と告発するように、国策によって生み出される「医療難民」「がん難民」などまさに「国民皆保険」が根底から掘り崩されています。
さらに新年度から導入が計画されている「後期高齢者医療制度」は、75歳以上の医療をもっとも必要とする高齢者を一般の医療保険から切り離し、現在扶養の人も含めすべての高齢者から保険料を徴収するとともに、これまで対象除外とされていた滞納者の保険証の取り上げまで行おうというものです。さらに受けられる医療を制限する「別立て診療報酬」など差別医療が強化される計画です。区長の見解は後日の一般質問にゆだねるところですが、高齢者にも「痛みを感じてもらい」医療抑制を強化しようという本制度の中止を政府に働きかけることを求めるものです。
このように、今や日本の社会保障は、国民のくらしを支え、生存権を守るという役割を大きく失い、社会的弱者を排除し、国民の苦難と不安を増幅する制度に変質しつつあります。
小泉内閣は、「痛みに耐えれば明るい明日がある」と「構造改革」を急激にすすめてきました。しかし、どれをとっても「明るい明日」どころか国民生活を脅かすものばかりです。
区長は所信表明で「社会保障制度改革」など「構造改革」を「時代にあった枠組みや仕組みを実現する」ための改革として容認し、その影響を「実施過程での副作用」であるとの認識を示しています。国民の生存権に関わる問題を単なる「副作用」としてとらえているようでは、住民の命とくらしに責任を持つ自治体の長として、その資格が問われる問題だといわざるを得ません。
とりわけ、障害者自立支援法、介護保険の見直しによる影響は深刻です。
 家族介護から社会的介護をうたい文句に始まった介護保険制度も、一昨年からの制度の改定によって、介護サービスの大幅な切捨てが行われ、お年寄りやその家族に深刻な影響を及ぼしています。
ある90歳代の高齢者は歩行が困難でオムツをしてほとんど寝たきりの状況です。介護度は高くても息子と同居で家事援助が受けられません。ヘルパーが訪問したとき、びしょびしょにぬれたオムツをしたまま、動かない体を引きずって洗濯機を動かそうといていたそうです。
また、80歳を超えた老老介護の世帯では、認知症の妻を脊髄損傷のある夫が介護しています。なれない食事や洗濯に加えトイレ、風呂などの介助に過大な負担がのしかかっていました。あるとき妻を思わずたたいてしまったといいます。こうしたストレスを抱えた家族があちこちに生まれているのではないでしょうか。ケアマネージャーやホームヘルパーから、今の介護保険制度では、人間らしい生活ができないばかりか家庭が崩壊すると深刻な訴えが続いています。まさに「介護難民」が目黒区でも増大しているのです。
また、かつてない反対運動の中で自民、公明政権によって強行された障害者自立支援法は、社会保障の「構造改革」のもと、障害者福祉にも“自己責任”と“競争原理”を徹底し、利用料を能力に応じて負担する「応能負担」の原則から、利用したサービス料に応じて負担する「応益負担」へと転換させました。
制度導入直後から「抜本見直し」を求める運動が大きく展開され、政府は二度にわたる「緊急措置」を行うましたが、最大の問題となっている「応益負担」を変える考えは示されていません。
一ヶ月1万円足らずの工賃をはるかに超える利用料を負担しなければならない障害者は、給食を断り、安いコンビニの弁当ですませたり、1割の自己負担を少なくするため、ホームヘルパーやガイドヘルパーを減らすなど、自立支援に逆行する事態が各地で起きています。福祉作業所では、運営費補助の日割り計算により通所日数を確保するため、「利用者の夏季・年末年始休暇の削減」「土曜・祝日の開所」を余儀なくされています。そのうえ、人件費を削減するため、職員の賃金切り下げやパート化など労働者へのしわ寄せが強められています。施設でくらす難病と知的障害のある方の場合は、五年間の移行期間内に施設から地域のグループホームなどへ移ってほしいといわれました。しかし、障害者年金4万円程度では20万前後もかかるグループホームにはとても入れません。年金暮らしの親は負担できず、将来のためと積み立ててきた子ども名義の貯金が生活保護の障害になっています。本当にひどい制度だと怒りを隠せない状況でした。
人間の尊厳にかかわるこうした福祉の削減を「副作用の痛み」として、区長は、区民に受忍させようというのでしょうか。「応益」負担を導入した障害者自立支援法や実態を無視した改訂介護保険法の抜本的見直しを区民とともに政府に強く求めるべきと思いますがどうか、お尋ねします。
次に、格差を拡大させる消費税の引き上げについてです。
福田首相は、「財政危機からの脱出」「社会保障の財源」のためと称して消費税を10%に引き上げることを打ち出しました。
すでに、老年者控除、定率減税などの廃止、公的年金控除の引き下げなど、所得税、住民税の増税がくらしを圧迫しています。サラリーマン増税によって、年収500万円の4人家族で年間50万円以上、一か月分以上の増税になり、くらしに大きな負担を与えています。この上、消費税が増税されれば、耐え難い負担増になることは明らかです。さらに消費税は、非課税の低所得者にも容赦なく課税する弱いものいじめの税金で、いま問題になっている「格差」をさらに広げるものとなります。
また、免税店を3000万円方1000万円に引き下げられ、営業の存続さえ危ぶまれる小規模事業者に決定的打撃を与えることは明らかです。さらに景気についても、現在、個人消費が減少している上、物価高が始まっている中で、消費税を増税すれば、個人消費をさらに冷えこませ、深刻な不況を招くことは明らかです。
「社会保障の財源」は消費税以外にないという宣伝が行われていますが、本当に消費税以外ないのでしょうか。そもそも「消費税」は福祉のためといって導入されましたが、福祉は充実どころか削減が相次いでいます。19年間で払った188兆円消費税は、法人3税減税などによる減収159兆円の穴埋めに使われてしまったのです。そもそも税金は負担能力に応じて負担することが原則です。しかし、負担能力のある大企業や大資産家にはあいついで減税が行われてきました。減税分を元に戻すだけで7兆円の財源が生まれます。さらにいま問題になっている、米軍への思いやり予算や、不正の温床となっている軍事費を減らせば、増税なしでも社会保障の財源を生み出すことは十分可能です。こうした問題にメスをいれず、あくまで財界が求める法人税減税や社会保障の企業負担削減に応え、国民にその犠牲を押し付けることは許せません。
区民のくらしと営業ばかりでなく日本の経済に重大な影響を及ぼす消費税の増税に区長として反対すべきと思います。区長の見解をお聞きします。
第二は区民のくらしの認識とその対策についてです。
すでに述べましたように、政府の進める社会保障の「構造改革」によって、医療、介護、障害者などの分野で「難民」と言われるような深刻な事態がうまれ、制度改悪後に自殺や無理心中といった痛ましい事件が増えています。
区内でも、ぼうこうガンで入院した高齢者は食事代の自己負担ができないと自ら退院してしまいました。また、80歳を過ぎても生活保護を受けられず働かざるを得ない高齢者、夫が帰るまでは暖房はもったいないと、寒い部屋で我慢する業者主婦、水光熱費を節約するため、日中は家にいないようにしているという一人暮らしの高齢者など、低所得者が当たり前の暮らしができない深刻な事態が進んでいます。
さらに、原油などの物価高がくらしと営業を直撃しています。
原油や小麦などの高騰の影響を直接受けるクリーニング店や輸送関係企業、パン・うどんなどの業者だけでなく、ほとんどの業種に深刻な値上げの影響が現われています。売り上げも減り、燃料や原材料がこれ以上上がったら仕事が続けられないという声が聞かれるなど、物価の高騰が営業を圧迫しています。目黒区としてどのように住民のくらしと営業を守っていくか、自治体の本旨が問われています。区民のくらしについて以下3点お聞きします。
第一は、区長は所信表明で「区民生活のセーフティネットとして、高齢者福祉、障害者福祉などのとりくみをいっそう充実」するといっています。介護保険についても「養護者に対する支援を行って介護負担の軽減を図る」としていますが、低所得者の支援を含め新たな施策がまったく見られません。それどころか、生活保護世帯への見舞金や高齢者電話代補助の廃止など生活に苦しむ低所得者に目黒区が「行政改革」と称して追い討ちをかけています。区長は、区民のくらしをどのように認識し、具体的対策を講じようとしているのかお聞きします。
第二として、「くらし支援対策本部」の設置についてです。
低所得者をはじめ区民のくらを支えるために、生活福祉課はもとより国保や納税、介護保険、子育て支援、教育など区民とかかわる職員が住民税や国保料、保育料や給食費など各種納付の滞納状況、多重債務者の相談などから区民のくらしの実態を総合的に把握し、支援と対策を講ずる必要があります。区長を先頭にした「くらし支援対策本部(仮称)」をつくるなど全庁的な取り組みを行う考えはないか。お聞きします。
第三として、原油などの高騰に対する対策です。
 物価の高騰がくらしや営業だけでなく、パンやケーキなどを作っている障害者福祉作業所にも深刻な影響を与えています。どのような影響を及ぼしているのか緊急な実態調査が必要です。北海道をはじめ、宮城、秋田、大阪などで生活保護世帯や低所得世帯に「福祉灯油」を実施する自治体が生まれています。また、各種融資でも、中小企業庁が影響を受けている中小企業が政府系中小企業金融機関のセーフティネット貸付や信用保証協会のセーフティネット保証ができるように、貸付要件や債務の返済要件の緩和などをおこないました。これを受けて自治体として、大阪府などでは仕入れ単価や原材料の高騰などを融資条件に加え独自の「原油・原材料高等対策特別融資」などを行うところも生まれています。実態を調査し、燃料補助や高物価特別融資など緊急な対策を講じるべきと考えますが、区長の見解をお聞きします。
次は大きな2として住民の福祉の後退などにつながる「民営化」の見直しについてです。
民間企業の最大の目的は利益の追求です。一方、公共的仕事は福祉の増進、すなわち、国民の生存と尊厳ある生活を行政の責任の下で保障することを本質的な目的にしています。しかし、「構造改革」によって、本来効率化などでは図れない福祉や教育部門を民営化することにより、さまざまな問題を引き起こしてきました。
目黒区においても指定管理者制度の導入と対象の拡大、委託化の推進など公共部門で次々と「民営化」を進めてきました。
昨年、保護者の反対を押し切って保育園の民営化計画を強行しましたが、民営化された各地の保育園では保育士の確保に困難を極めるとともに慢性的な保育士不足に陥っています。人数だけはパートやアルバイトで確保しても、子どもと接する保育経験の浅さや定着率の悪化が、保育の質そのものを引き下げる結果となっています。
指定管理者制度導入の目的となっていたのが、経費削減とサービスの向上という相反する2つの項目です。その結果、運営費のほとんどが人件費となる介護などの福祉施設では、サービスの向上は後景に追いやられ、経費削減のための労働賃金の抑制が最大課題となって、職員への過酷な労働が押し付けるとともに、利用者のサービスがじわじわと引き下げられてきたのです。
目黒区内の特別養護老人ホームの家族会は、区内特養ホームの職員に対し、労働の実態や待遇に関するアンケートを行ました。その内容は、第三者評価の「おおむね良好」という結果とは程遠いものなっています。職員が不足し、おむつ交換や、食事の介助、着替えなどが十分できていない。いつ事故が起こるか心配。入所者とコミュ二ケーションの時間が取れない。夜勤が月5日にもなる。いつまで体がもつか不安。給料が低く結婚もできない。また、入居家族からも、職員が忙しすぎて話しかけることができない。食事介助者がくるくる代わる。などアンケートへの回答はどれも深刻な内容ばかりです。目黒区は、社会福祉事業団を指定管理者に指定するに当たって、民間との競争を前提に、3年間で5億円の経営改善計画を押し付けました。運営経費の削減が今日の深刻な事態を生んでいることは明らかです。職員からも、家族からもこのままでは施設が崩壊すると危機感を強めています。世田谷のある民間施設では、過酷な労働と低賃金によってフロアーのほとんどの職員がいっきに退職願いを出しました。そのため、ワンフロアーを閉鎖せざるを得ない状況になっています。
民営化によるさまざまな問題が広がっている中、現場で起きているこうした問題に目を背け、目黒区は来年以降も「中長期の定数管理について」と称して、10年間に500人の正規職員を削減し、民営化を推し進めようとしています。あらためて、民営化された施設で今何が起こっているのか、サービス向上の目的は果たせているのかなど、原点に立ち戻った検証がどうしても必要です。こうした検証なしに、経費削減を目的に進められる指定管理者などの「民営化」は自治体の公的責任を放棄するものであり、見直すべきと考えますが、区長の見解をお聞きします。
最後に住宅対策についてです
公共住宅が23区最低レベルの目黒区にとって、住宅対策強化は重要な課題です。
目黒区は、近隣区に比べ、住宅家賃が高く住み続けたくてもできない状況になっています。区の世論調査では、優先して行ってほしいこととして、民間木賃アパート居住者は高齢者福祉についで住宅が第二位になっています。鉄筋アパートや賃貸マンション居住者では、住宅が第一位です。
とりわけ、高齢者が多く住む木賃住宅は老朽化が激しいうえ、建て替えなどによる立ち退きを迫られるケースや、ファミリー世帯に低賃金世帯が多く、家賃の負担が家計を圧迫する事態となっています。住宅は、誰もが人間らしく暮らしていく上で保障されるべき福祉であり、不足する人にとって、住宅の確保は権利であり、その供給は自治体の責任です。
しかし政府や東京都は、公営住宅の建設を長年抑制し、「ワーキングプア」の増大など国民生活が悪化する中でますます増える住宅に困窮する人々の住宅要求に応えないばかりか、これまで、単身者の年齢制限や名義人の継承を原則配偶者以外できないとするなどの改悪を進めてきました。さらに昨年12月、入居収入基準の引き下げ、明け渡し基準の引き下げを行い、入居対象を狭めるとともに、公営住宅からの追い出しを強化しようとしています。
収入の3分の一以上が住宅費にかかるファミリー世帯や、ガスも水道もない3畳一間にくらす高齢者、親亡き後の障害者住宅の問題など、低所得者や高齢者、障害者、が目黒区に住み続けられるために公営住宅の確保は重要な課題です。しかし、目黒区は、自ら決めた住宅マスタープランの目標すら達成していません。住宅対策を重要課題として位置づけ、都営住宅誘致、区による障害者、高齢者福祉住宅の建設など公営住宅の確保を住宅対策の柱に据えるべきと思うがどうお尋ねし私の代表質問を終わります。

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